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第二次戦国時代 ―令和動乱記―  作者: 足利
第一章 影の久貞(前半)
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第37話 夜の城を包む報復

城内の血戦から数刻後、夜は静寂を取り戻したかに見えた。

だが、それは次なる報復の序章でしかなかった。

夜風が湿った土の匂いを運び、城郭の回廊を冷たく撫でた。

だが、静寂の裏では火種が息づいていた。

従順派の屋敷――城の南区画で、灯りがひとつ、またひとつと消えていく。


「……始めろ」

低く抑えた声で命を下したのは、同情派の若侍・松田だった。

彼の背後には、顔を布で覆った十数名の民兵が控えている。

「今夜は“裁き”の夜だ。血を流すのは、我らを踏みつけた者どもだ」


暗闇に紛れて忍び込む者たち。

屋敷の障子を静かに開けると、寝間着姿の従順派家臣が振り返る間もなく倒れた。

刀が閃き、灯火が倒れ、火が畳に移る。

数刻のうちに、屋敷は紅蓮の炎に包まれた。


遠くから見た久貞は、手を強く握りしめた。

「……報復の連鎖を止めねば、すべてが灰になる」

彼の言葉に、佐久間がうなずく。

「ですが、殿。もはや彼らの怒りは理では鎮まりませぬ」


炎が夜空を赤く染め、警鐘が鳴り響く。

他の屋敷でも同様の襲撃が起きていた。

城の衛兵たちは混乱し、誰が敵で誰が味方かも判別できぬ。


やがて、久貞のもとに報が届く。

「従順派の小林殿が討たれました!」

久貞は目を閉じた。

「……これで終わると思うな。次は必ず、報復が返ってくる」


夜空に舞い上がる火の粉。

その中に、民衆と武士たちの怨念が混じっていた。

城下では子どもたちが泣き叫び、老人たちは震える手で祈りを捧げる。


「この火は……信義の灯か、それとも滅びの炎か」

久貞は呟き、燃え盛る城を見上げた。

炎の反射が瞳に揺れ、彼の胸に焦げるような痛みを残した。

夜の城を包んだ炎は、もはや人の怒りではなく、歴史そのものの報復だった。

久貞の理想は崩れ、幕府は一夜にして血と火に呑まれていく。

次回――第38話「崩れゆく誓約」では、

この報復の余波が幕府全体を揺るがし、将軍家そのものに亀裂が走る。

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