第3話 炎上する玉座
戦火の夜が明け、兄弟の理想が決裂する。皇都に新たな運命が芽吹く。
皇居を包囲する戦いは、すでに三昼夜に及んでいた。
皇軍は兵站の限界を迎え、弾薬も食糧も底をつき始めていた。
それでも兵たちは退かない。
「我らは令和の武士なり」
その信念だけを頼りに、彼らは前進を続けた。
だが、政府軍は圧倒的だった。
自衛隊は最新の装備と制空権を握り、皇軍の陣形を各個撃破していく。
上空を飛ぶ戦闘機が爆音を轟かせ、皇居二重橋付近が爆発に包まれた。
「家昌将軍、これ以上の進軍は危険です!」
副官の叫びに、家昌は血まみれの顔を向ける。
「退くわけにはいかぬ! ここで退けば、すべてが無になる!」
その時、通信機にノイズ混じりの声が響いた。
――「家昌、聞こえるか」
兄・家太郎の声だった。
「兄上……!」
「もう十分だ。兵を退け。無理をすれば、全滅する」
「我らは兄上のために戦っているのだ! 退けるものか!」
家昌の眼には怒りと悲しみが交錯していた。
太郎は沈黙し、わずかに言葉を選ぶように答えた。
「……戦は、想いだけでは勝てぬ」
その瞬間、通信が切れた。
直後、桜田門の防衛線が崩壊。
皇軍は一気に後退を余儀なくされた。
それでも、家昌は戦場を離れようとしない。
砲弾が再び降り注ぎ、視界が白く染まる。
「――家昌様!」
部下が駆け寄るが、そこに家昌の姿はなかった。
爆煙の向こうで、瓦礫に崩れ落ちる影。
戦場に、一瞬の静寂が訪れた。
その報せを受けた家太郎は、唇を噛みしめる。
「……弟よ、なぜだ」
彼の胸中には、勝利の実感など微塵もなかった。
残されたのは、血に染まった首都と、崩れ落ちた理想だけだった。
やがて、皇軍の一部部隊が皇居内へ突入する。
皇宮警察は徹底抗戦したが、夜明けとともに本丸は制圧された。
「天皇陛下のご所在を確認!」
富士川弘が叫ぶ。
家太郎は黙って頷き、深く頭を下げた。
「――陛下。どうか、この乱世の裁きを我らに」
皇軍はついに皇居を掌握。
日本の歴史が、静かに転換する音がした。
血に染まる皇居に、新たな時代の胎動が響く。令和は終焉を迎えた。




