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第二次戦国時代 ―令和動乱記―  作者: 足利
第二部第5章「血の夜明け ― 富士川の最期」
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第5章「血の夜明け ― 富士川の最期」

長き静寂の裏で、血の波は満ちていた。

夜明けと共に、それは国を覆い尽くす。

そして、歴史は再び動き出す――。

和律七年。

 京の都は赤く染まっていた。

 それは夕焼けの色ではない。

 民の血と、権力の血が混じり合った――

 「血の夜明け」の兆しであった。


 幕府執権・富士川重俊は、七条家を傀儡化したまま、

 全国に「征討令」を発した。

 標的は中央政府、そして八条家。

 「関白太政大臣八条真葛、逆心の臣なり」

 この詔が偽詔であることは、幕府中枢の者しか知らなかった。


 富士川は立花家の管領・立花景頼を通じ、

 皇都警衛軍を完全に掌握。

 さらに日本神軍の一部を吸収して、

 「幕府統一軍」として再編成した。

 その数――五十万。


 一方の八条家は、かつての威勢を失い、

 忠臣たちの多くを地方戦で喪っていた。

 残る兵はわずか十万。

 しかも各地の戦国大名が独立を宣言し、

 中央の命令はほとんど届かぬ状態にあった。


 「関白様、このままでは――」

 「分かっている。だが、戦うしかない。」


 真葛の目は燃えていた。

 彼の傍らには、甥の八条景政、弟の八条定信、

 そして密かに帰京していた九条信時の子・九条兼文の姿があった。


 「父の策――“三たびの和”を、今こそ果たす時です。」

 兼文の言葉に、真葛は頷いた。

 「そうだ。あの巻物に記された“血の和”……。

  それが、避けられぬ運命ならば、せめてこの手で終わらせよう。」

【京・富士川邸 夜】


 その夜、幕府中枢は緊迫に包まれていた。

 富士川重俊は諸将を集め、最後の命を下す。


 「今宵、関白府を落とす。帝の御前にて逆臣の首を挙げよ。」

 「ははっ!」


 だが、誰も知らなかった。

 すでに立花景頼が八条側と密かに通じ、

 富士川の動きをすべて筒抜けにしていたことを。

【京・八条邸 黎明】


 夜が明けきる前、京の街に号砲が鳴り響く。

 富士川軍、進軍開始。

 八条軍は全軍を挙げて迎撃。

 「これが、血の夜明けか……」

 真葛は静かに呟くと、軍装を整えた。

 胸に輝くは、かつて祖父が佩いた八条家伝来の剣・紫電丸。


 戦いは熾烈を極めた。

 富士川の騎兵は圧倒的な物量で突撃を繰り返し、

 京の通りは屍で埋め尽くされた。

 しかし、立花勢が突如反旗を翻し、幕府軍の背後を突いた。


 「裏切り……!?」

 富士川の叫びは虚空に消えた。


 その隙を突き、真葛は自らの騎を率いて本陣へ突撃。

 八条の旗が翻り、幕府の旗を切り裂く。


 「富士川重俊――覚悟!」

 「……関白の剣か。だが、遅かったな。」


 二人の剣が交錯した瞬間、

 静寂が訪れたかのように、周囲の戦が止まった。


 富士川の剣が折れ、胸を貫かれた。

 その血が地を濡らし、朝日が昇る。


 ――血の夜明け。


 富士川は息絶える直前、笑って言った。

 「勝ったのは……どちらでもない。

  国は……もう戻らぬ。」


 その言葉に、真葛は剣を下ろすことができなかった。



【戦後】


 幕府は壊滅し、七条家は再び京都を離れた。

 富士川家は断絶、立花家は管領職を返上して隠居。

 九条兼文は「九条策」を改訂し、帝に献上した。


 だが、帝・図俊天皇はそれを採用せず、

 ただ静かに新たな元号を宣した。


 > 「今日より、元号を“暁応ぎょうおう”とす。」


 その名の通り――

 血の夜明けのあとに、ようやく新たな暁が訪れたのであった。

第二部・最終章では、富士川重俊という男の末路を通して、

権力の崩壊と新たな時代の胎動を描きました。

「血の夜明け」は悲劇でありながら、

それが“第三次戦国時代”を終わらせる始まりでもあります。


次回、物語は第三部へ――。

時代はさらに200年後、

八条家と七条家の血が再び交わる「再統の時代」へと移ります。

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