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第二次戦国時代 ―令和動乱記―  作者: 足利
第二部第4章「崩壊の予言 ― 九条の策」
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第4章「崩壊の予言 ― 九条の策」

帝の座は揺らぎ、幕府は血に染まる。

誰もが己の正義を掲げ、

やがてその正義が、国家そのものを裂いていく――。

和律五年。

 戦火は一旦鎮まったかに見えたが、国の根はすでに腐り始めていた。

 七条幕府は若き将軍・七条頼久が継ぎ、名目上は安定を取り戻した。

 しかし実権は執権・富士川重俊にあり、幕府の政策はことごとく八条家への対抗を目的として進められていた。


 「幕府はもはや武門の象徴ではない。

 政治の器にすぎぬ。」

 そう語ったのは摂政・九条信時。

 信時は八条家の血を遠くに引く一族でありながら、中央政府の均衡を保つ立場にあった。

 彼は誰よりも冷静に、この国の末路を見通していた。


 「関白の理想は崇高だ。しかし理想のために血を流せば、それは暴である。」

 信時はそう呟きながら、筆を執る。

 彼の手にあるのは一通の密書――宛名は、淡海町天皇。


 『帝に申し上げ奉る。

 幕府と関白府、いずれも国を救うには足らず。

 今こそ“第三の和”を立てる時でございます。』


 この「第三の和」こそ、後に「九条策」と呼ばれる改革案であった。

 それは、八条・七条の両家を抑え、帝が中立の評議院を設立し、

 地方統治を“公議制”に改めるというものだった。

 つまり、幕府でも政府でもない、新たな国家の原型である。


 だが、この密書は――富士川の手に渡る。


 富士川重俊は立花景頼を通じて中央の動きを掴み、

 九条の策を「反幕府の陰謀」と断じた。

 「摂政九条、帝を惑わす奸臣なり!」

 その声は幕府内で瞬く間に広まり、九条家は弾劾された。


 九条信時は逃亡を余儀なくされ、京を離れる。

 行き先は、旧八条領――山城の八条邸。


 その夜、真葛は久しぶりに信時と再会する。

 月の光が差す庭に、二人の影が並んだ。


 「……また血を流す気か、真葛。」

 「流さずに済む道を、私は探している。」

 「ならば、もう戦はやめよ。

 我らが動けば、帝も巻き込まれる。

 それが国を滅ぼす。」

 「だが、幕府を放っておけば、民が滅ぶ。」


 互いの信念は交わらなかった。

 だが信時は、最後にひとつの言葉を残す。


 「我は帝に“策”を残した。

 やがてその策が、八条の血を導くことになろう。

 それを恐れるな――受け入れよ。」


 その翌朝、九条信時は姿を消した。

 遺されたのは一枚の巻物――『九条策・原本』。

 その中には、未来を見通すような一文が記されていた。


 > “この国の行末は、三度の和をもって決まる。

 >  一たび目に見ぬ和、

 >  二たび血の和、

>  三たび心の和。

>  その時、真の王朝が蘇る。”


 やがてこの言葉が、「崩壊の予言」と呼ばれるようになる。


 真葛はその意味を測りかねながら、巻物を閉じた。

 「三たびの和……か。

 祖父が語った“真の和”とは、このことだったのか。」


 その頃、幕府内では富士川が実権を完全に掌握し、

 七条頼久を傀儡将軍として新体制を敷いていた。

 さらに、日本赤軍の残党までも密かに吸収し、

 「武力による統一」を公然と掲げ始める。


 帝は沈黙し、朝廷は沈み、中央政府は動かぬ。

 八条家、七条家、九条家、立花家――

 すべてが互いを警戒しながら、

 誰も止められぬ時代の奔流に呑まれていった。

第4章では、「九条策」という新たな思想が示され、

これがやがて第三次戦国時代の終焉を導く“未来の種”として描かれました。

しかし同時に、富士川の台頭により幕府の腐敗が決定的となり、

次章からは「血の政変」の幕が開きます。


次回、第5章――

「血の夜明け ― 富士川の最期」

八条真葛、ついに動く。

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