表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第二次戦国時代 ―令和動乱記―  作者: 足利
第二部第3章「血統の檻 ― 七条の影」
21/100

第3章「血統の檻 ― 七条の影」

共闘の裏に、裏切りは潜む。

血は盟約を結び、同時にそれを破る。

宿命の歯車が、いま静かに回り出す――。

和律三年。

 日本列島は、八条・七条連合による神軍掃討作戦で一時の平穏を迎えていた。

 しかしその平穏は、薄氷の上に築かれた幻でしかなかった。


 桂川会談から二年。

 八条真葛と七条典孝は互いの領域を尊重し、戦線を安定させていた。

 だが、その裏で静かに権謀術数が渦巻いていた。

 七条幕府の内部――執権職・富士川重俊は、すでに別の密約を交わしていたのだ。


 相手は、中央政府の管領・立花景頼。

 富士川は幕府の独立を守るため、中央の援助を引き出そうとしていた。

 「八条の血がこの国を呪縛している。

 関白の座も、天皇の詔も、結局は彼らが決める。

 我らが真の幕府を築くためには、八条を討たねばならぬ。」


 その密談は、すぐに典孝の耳にも届いた。

 だが典孝は動かなかった。

 「裏切りを罰すれば、幕府そのものが崩れる。

 我はまだその時ではない。」


 その言葉を、富士川は冷笑で受け止めた。

 「ならば、私が“時”を動かしましょう。」


 ――同じ頃、八条邸。

 真葛は弟・八条真琴を呼び寄せていた。

 「七条の内乱は時間の問題だ。

 我らは備えねばならぬ。」

 「兄上、まさか攻め込むおつもりで?」

 「いや、守るのだ。裏切りが生まれるのは、理想が消えた証。

 我は祖父が遺した理を、再び立て直す。」


 だが、理想を掲げる者ほど、裏切りに脆い。

 七条幕府の執権・富士川は、裏で“第三の勢力”――旧日本神軍残党と手を結んでいた。

 それを察知した吉川頼景が密かに典孝に告げた時、

 すでに幕府は二分されていた。


 「……この国は、血の連鎖から逃れられぬのか。」

 典孝は苦渋の表情を浮かべた。

 彼は八条との盟約を破りたくなかった。

 だが、幕府そのものが富士川の掌に落ちようとしていた。


 和律三年六月。

 夜明け前、富士川は挙兵した。

 「幕府の正義は、将軍の手に非ず!

 我ら、真の和を取り戻す!」


 京に近い大津の地で勃発したこの戦は、

 後に「大津の変」と呼ばれる内乱の始まりだった。

 七条幕府軍と富士川派との戦いは苛烈を極め、

 典孝はわずか三日の戦で重傷を負い、翌月に死去する。


 典孝の死後、七条幕府は若き息子・七条頼久が継いだ。

 頼久はまだ十五歳。

 実権は再び富士川の手に戻り、幕府は“傀儡政権”と化した。


 一方、八条真葛はこの機を逃さず、

 七条の混乱を鎮める名目で軍を動かした。

 「我らは助けるために戦う。」

 そう言いながら、彼の軍勢は静かに近畿を包囲していく。


 だがその行軍の先頭で、真葛は一人、

 己の胸に宿る祖父・宿政の言葉を思い出していた。


 ――「和を以て貴しと為す。されど和は、力をもって守らねばならぬ。」


 血統の檻は、いつしか彼自身をも縛り始めていた。

第3章では、七条幕府の崩壊と富士川の裏切り、

そして八条真葛が理想と現実の狭間で苦悩する姿を描きました。

次章「崩壊の予言 ― 九条の策」では、

摂政・九条家が動き出し、

“和令王朝”そのものの未来が問われることになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ