第2話 血の防衛線
皇都は炎に包まれ、兄弟の理想が激突する。戦乱の幕が上がる。
2030年10月。
東京都千代田区――皇居外苑一帯。
その夜、東京の中心は地獄と化した。
日本皇軍、およそ20万人。
対する政府側――皇宮警察と陸上自衛隊、航空自衛隊を合わせた総勢30万人。
数では政府が上回っていた。
しかし、皇軍は周到な準備と内部情報をもとに、
夜明けと同時に皇居を包囲。
首都圏の電力網が突如として落ち、東京は漆黒に沈んだ。
通信回線は遮断され、ネットもテレビも沈黙。
その静寂を破ったのは、第一発の榴弾砲だった。
「――撃てッ!!」
家昌の怒号が響く。
一斉に火を噴く榴弾砲の列。
皇居を取り囲む堀の外側から、炎が上がった。
しかし、すぐさま政府軍も反撃に転じる。
「こちら陸自第1師団!反撃開始!」
皇宮警察と自衛隊は、皇居を死守するために正面から迎え撃った。
空には航空自衛隊の戦闘機が飛び交い、
街には地響きと爆音が続いた。
八条家太郎はその様子を、皇軍本営の通信車両から静かに見つめていた。
「……やはり、容易ではないな」
隣に控える副官・富士川弘 が頷く。
「敵は三十万。ですが、我らが信念に勝る力はない」
「……信念で弾丸は止まらん」
太郎は苦笑した。
だがその瞳の奥には、確かな覚悟が宿っている。
政府側の反撃は凄まじかった。
市ヶ谷、防衛省、霞が関――
各地の官庁が防衛拠点と化し、皇居周辺は完全に包囲された。
皇軍は次第に劣勢に追い込まれていく。
家昌率いる主力部隊は、桜田門付近で激戦を繰り広げた。
火炎と銃弾が交錯する中、
皇軍の若い兵士が叫ぶ。
「将軍! 弾が尽きます!」
「怯むなッ! 我らは武士の末裔ぞ!」
家昌は剣を抜き放ち、自ら前線に立った。
銃弾が頬をかすめ、血が飛ぶ。
しかし彼は怯まず、兵を鼓舞した。
「今こそ令和を正す時だ! 退くな、進め!」
その雄叫びが夜空を震わせた瞬間、
皇居の一角が炎に包まれた。
炎の中で運命が交差する。兄弟の絆に初めて亀裂が走った。




