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第二次戦国時代 ―令和動乱記―  作者: 足利
第一部第5章 黎明の乱 ―最後の戦い―
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第15話 暁の祈り

戦いの夜が明ける。宿政は血塗られた大地に立ち、最後の祈りを捧げる――。

夜明け前の東京――灰色の空がわずかに朱に染まり始めていた。

皇居を中心に広がった戦火はすでに三日三晩続き、空は煙と灰で覆われていた。

街の輪郭は崩れ、帝都の灯はもはや消え果てていた。


かつて関白太政大臣の座にあった八条家太郎は、

いま、焦土と化した皇居の庭に立っていた。

甲冑は砕け、肩には焼け跡、腕は血に染まっている。

それでも彼の眼は、揺るがなかった。

彼の前には、宿政――安土幕府最後の将軍がいた。


「……兄上。すべては終わりました」


宿政は、ゆっくりと太刀を鞘に収めた。

その声は静かで、風のように透き通っていた。

背後では、皇軍の残兵たちが武器を下ろし、

自衛隊との最後の小競り合いが収束していく。

敗北も勝利も、もはや意味を持たなかった。


「終わりではない、宿政。始まりだ」

太郎はそう言って、朽ち果てた松の根元に膝をついた。

その傍らには、焦げた旗――“令和律令”の紋章が残っていた。

理想に燃え、国を新たにするはずだったその旗が、

いまやただの灰と化している。


「この国は、我らの手を離れ、再び歩き出す。

人々が望むのは、剣ではなく――心の和だ」


宿政は静かに頷いた。

戦乱の中でも、彼だけは終始「共存」を望み続けた。

兄のように強くはなれず、

弟のように狡猾にもなれず、

ただ、和を信じた。


「兄上、私は……この血の時代を終わらせたい。

 武の世ではなく、人の世を。」


「ならば、宿政――その祈りを託そう。」


太郎は、血に染まった手を弟の胸に置いた。

その掌の温もりが、かすかに震えていた。

戦士ではなく、人としての最後の温もりだった。

宿政はその手を握り返し、目を閉じる。


遠くで、夜明けの太陽が昇り始める。

焼けた皇居の屋根に光が差し、

瓦の隙間から一筋の光が、彼らの頬を照らした。


「令和の世は……再び律となるのか、それとも――」


太郎の声が途切れた。

その瞬間、風が吹き抜け、彼の衣がはためいた。

宿政が目を開けたとき、兄はもう動かなかった。

その顔には、穏やかな微笑が宿っていた。


――そして、暁の祈りが響いた。


宿政は、亡骸の前に跪き、刀を地に突き立てた。

天を仰ぎ、静かに誓う。


「八条の血は、再び剣を掲げぬ。

 この国を再び、人の心で治めん。」


その誓いは、後に“暁のみことのり”と呼ばれ、

令和律令を終焉させ、新たな時代の礎となる。


皇居の瓦礫の中、一本の桜の枝が芽吹いていた。

灰を払い、陽に向かって伸びるその若枝は、

まるで新しい日本の心を象徴しているかのようであった。


やがて宿政は、剣を置き、筆を取った。

彼は「和令われい」と名づけた新たな法を記す。

それは剣による支配ではなく、

信による結びの律であった。


「戦の世を超えて、和の世へ。」


その言葉を最後に、宿政は皇居を後にした。

燃え残る都を振り返ることはなかった。

ただ朝日が昇る東の空に、亡き兄の影を見た。

そして静かに微笑んだ。


――こうして、令和戦国の幕は下りた。

光と影が交わり、令和の新時代が始まる。戦国の夢は、再び静寂の中へ。

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