喫茶テルーズ
今日はお客さんが少ない。
本を読みながら、お気に入りのチェアで待つ。
かぼちゃのケーキとコーヒーを準備しているのに。
夕焼けが見える。何の日だったっけ。
牛乳と卵を仕入れないといけないね。
新しいメニューを考えないと、お客さんも飽きてしまう。
常連さんはホットケーキを頼む。
私は作り続ける。
「こんばんは。今日は遅くなっちゃった」
栞を挟んで、見上げる。
「あら、斎藤さんこんばんは。何かあったのですか。」
「いつものでね。今日はお祭りよ、町内の」
「そうだったんですか、いやはや私も行こうと思いましたが、何せ腰が悪いもので」
「何を言ってるんですか、まだ私たち若いでしょう。」
ホットケーキを焼く。
「はい、お待ちどうさま。」
「ありがとう、あら今日はイチゴとクリームが乗っているね。どうしたの」
「ええ、気分です。」
「気分、ね」
斎藤さんはゆっくりと食べる。私はそれを本を読みつつ、見つめるのが好きだ。
忙しい若者が電子機器を触りながら食べているのも、読書をしつつ休憩がてら食べるのも私は好きだ。
だが斎藤さんは味に集中している。
「そういえば塔野さん、聞きましたか。近くに本屋ができるんですって。」
「あら、いつから」
「九月じゃなかったかしら。繁盛してくれるとこちらにも人が来ますね。」
「はあそうですか。」
本屋、私は本が大好きだ。紙の匂い。
どんな本を売るのだろうか。