何があったのか
はじまりは、絶東唯一の列強、明和で起こった技術革新だった。
後に第三次産業革命とも呼称されるそれは、まさしくプロメテウスの火だった。
人類が常に滅びの危機に瀕する世界、その引き金だった。
聖暦1926年、泰照十五年に起こったそれは、まさしく世界を揺るがした。
その技術革新によって、明和では艦が空を飛び、誰もが機械を纏い、家電製品は喋り、機械の人形が街で働くさまを誰もが目にするようになった。
次に動いたのはデウツ連邦帝国の「SES基金」だった。これまで世界を「まとも」に保つため努力していたと言う彼らは明和及びその同盟国に対し「異常」を収容するとして、デウツを支配し、隣国ガレリアに侵攻し、南方にあったロマーナ帝国と手を結び宣戦を布告した(すぐに裏切られ、ロマーナは中立となるが。)。
その次に動いたのはビュータウンド連合王国。
国内勢力、中世の魔女狩りに際して大陸から逃げ出した魔法使いたちは、この大変化に呼応してその存在を表舞台に表すことを決定した。民間の大企業はさらなり、政府にすら強力なパイプがあった彼らは、デウツ側に加わって碤紗の権益を守るために、国内をまとめ上げ、デウツ帝国に宣戦を布告した。
世界一の大帝国は、斜陽から黎明に転じたのだ。
それに続き、アシルファ大陸に逃亡していたガレリア共和国政府はデウツに対する徹底抗戦を主張。現地勢力に妥協した彼らは、呪術の力を得てデウツのアシルファ侵攻を止めることに成功した。
その折に、アシレマ大連邦は聖欧大陸にデウツ側で参戦すると表明。巨大な怪物を聖欧に派遣した。
智慧那民国もそれと同時に明和に宣戦布告。明和は四方八方から囲まれる形となる。
しかし、明和はそれら全ての侵攻に対応した。
大美帝国を構成する大陸国家、サウザニア連邦を落とし、他の旧聖欧諸国の碤紗植民地も奪った。
アシレマとの間に存在するホウライ諸島も占領した。
そんな明和の快進撃に慌てたロマーナは、講和を結ぶことを提案。
同年ロマーナ首都、ロマーナにてロマーナ講和条約が結ばれ、明和は現在の占領地域全てを勢力圏と認められた。
しかし、慢心してしまった。薄氷の上の勝利だったのにだ。
敗戦した大連邦、連合王国、連邦帝国は互いに手を取り合い、互いの足を刺そうとしながら、その牙を研ぎ始める。
ガレリアは明和と同盟を結んだ。
評連はというと、国内で加速主義者による革命が起こり、とても対外関係に気を張れる状態では無かった。
そして、すべての主要国が一撃で世界を終わらせられる兵器を手に入れてしまった。
こうして、現在の冷戦がはじまったのだ。
世界は互いに睨み合い、昨日の友人が今日の敵である。
我々にできるのは、ただこの世界が終わるまで眺め続けることだけだ。
死にそうです