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ついに、すべての準備が整い、カナーガッファ帝国皇帝カールは全軍に出陣命令を下した。
カールが率いるカナーガッファ帝国軍は事前の準備もあり順調に南下を続けた。
事前の打ち合わせ通りに、カナーガッファ帝国の挙兵に合わせて、ウェスト王国を囲むほかの王国も兵を動かし、ウェスト王国への進軍を開始したとの連絡が届いている。
「ぐははは、来月にはウェスト王国の王宮にて、我が子や孫たちとの顔合わせの宴会が催されることだろう」
カールは機嫌よく、言い放つのだった。
やがて、帝国軍はウェスト王国との国境付近にまで到達した。
丘陵地帯が広がる国境周辺、国境を見下ろすウェスト王国側の丘の上に真新しい砦が築かれている。
通常、丘の上に堅固な砦を築くなら、何年もかかるものだが、あの砦の建設に実際にかかった日数はほんの三か月ほどでしかなかった。
建設当時、その出来事は大きな驚きと恐怖をもってカナーガッファ側に受け止められたものだ。だが、今は違う。マールがウェスト王国から持ち込んできた様々な機密資料によって、その建設の背後にはどのようなからくりが潜んでいたのか、すでに判明している。
もっとも、それらの機密資料の中にはかの巨大ゴーレムを操る魔法に関しての詳細までは記載されてはいなかったが。
――あの間抜け男め! 肝心の資料を持ち出してこないとは!
腹の中では毒づいているのだが、その表情はずっと機嫌のよいままだった。
――今回の遠征ではそれらの魔法を手に入れられるだろうし。そのあかつきには、カナーガッファはより強大な国になることだろう。
カールは遠く国境の向こう側の砦を眺め、そんな明るい未来予想に胸を躍らせていた。
これといった抵抗もなく、帝国軍はたやすく国境を越える。
ほどなく真新しい砦のある丘の前面に軍を展開し終えた。
砦からの攻撃もなく、全軍の配置が完了。あたり一帯に大軍がひしめいているにもかかわらず、しんと静まり返っている。だれもがこれから起こるであろうことをかたずをのんで見つめていた。
なんでも、これから秘密裏に開発が続けられていた新しい攻撃手法のお披露目が行われる。ここにいるカナーガッファ軍の兵士たちは、今まさに連綿と続く兵器開発の歴史の転換点を目撃することになるのだと伝えられていた。
そのため、兵士たちは興奮と期待のこもった目でこれから起ころうとしていることを見守るのだった。
そんな中で、カールの指示に合わせて、一台の巨大な台車が最前線にまで押し出されてきた。
台車の上には、頑丈な石でできた巨大な一枚板が載せられており、その四隅に高位の宮廷魔導士のローブを羽織った老人たちが立ち、常時その板にもてる魔力を注入しているようだ。
板の上には、ルーン文字で書かれた複雑で巨大な魔法陣が描かれており、常に魔力を供給し続けていなければ、その魔法陣は消滅してしまうのだろう。
そして、その魔法陣が描かれた台車の後ろに、別の台車も続く。
こちらには、千はくだらない数の魔道具が積み上げられているのが見える。それらはすべて背後の操作パネルに接続されており、待機している軍人の操作に合わせて、完全に同期して魔法を放つ。
二台の台車は砦に向かい合うように並べられ、配置された。準備は完了した。あとは、カールの号令待ちだ。




