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 謁見の間。


 普段はウェスト王国に仕える臣下たちを集めて、公的な儀式などを行う場で、収容人数千人を超える広大なホールになっている。


 奥まった場所は数段高くなっており、背後の神々を描いた大きなステンドグラスの下には国王が座る玉座が置かれている。


 近衛騎士団団長は息の上がったドナルドを連れて、その謁見の間に飛び込んでいった。


 そのあとを追いかけて、幾人もの近衛騎士たちが謁見の間に突入し、団長たちを囲もうとするが、団長は壁を背にしてそれに対峙している。


 


「団長! しっかりしてください! 王弟殿下は反逆者ですぞ!」


「団長! 陛下に剣を向けてはいけません!」


「団長! その剣を降ろしてください!」


 


 囲む近衛騎士たちは口々に呼びかける。団長の方も、次第にドナルドのスキルが解けてきたようで、目の奥に光が戻ってきたようにも見える。


 


 団長の動きが鈍くなったのを感じ取った近衛騎士たちが包囲の輪をぐっと狭める。だが、まだ団長の呪縛は解け切ってはおらず、剣を大きく振り回す。慌てて、飛びのいた近衛騎士たちの隙を()って、団長とドナルドは謁見の間の奥へと逃げて行った。


 ついに、ドナルドたちは奥にある玉座のもとまでたどり着いた。


 


「我は王なるぞ! 我こそが王なるぞ!」


 


 近衛騎士たちが構える幾振(いくふ)りもの抜身(ぬきみ)の剣に囲まれ、ドナルドが叫ぶが、だれも耳を貸さない。


 


「その証拠に、見よ! 我はウェスト王国の国王の証である王冠を戴き、錫杖を手にしている。今や玉座に座ってさえいる。我こそがウェスト王国の正当なる国王なのだ! 者ども、我に剣を向けるとは、無礼であるぞ!」


 


 そのけん責の声に従って剣を降ろすものは誰もいなかった。


 


「わ、我こそが、我こそがこの国の王なるぞ!」


 


 


 


 その少し前の出来事だった。


 この王宮から少し離れた場所にある離宮の一つで、とある魔王がだれに聞かせるとなくつぶやいていた。


 


「あの愚か者が最初に言っていたように、反乱者側が、今回の反乱はおバカヘンリーが(くわだ)てたものだという噂を流している。なら、それをこちらのいいように利用できるのではないかしら?」


 


 ぶつぶつ独り言をつぶやきながら、寝室の中を歩き回っている。


 


「この混乱のうちなら、手のものを送り込んで父上を亡き者にすることぐらいたやすいだろうし、それを反乱軍の流す噂の通りに、あのおバカヘンリーの仕業(しわざ)だってことになすりつけられるのじゃないかしら?」


 


 魔王はたちどまり、顔を上げてにんまりと笑う。


 


「うん、いい考えだわ。これならきっとうまくいくに違いないわ」


 


 一人確信し、うなずく。そして、早速、魔王は足元に魔法陣を展開しはじめた。すぐに床一面に巨大な光の魔法陣が浮かび上がる。


 


「おいで」


 


 魔王の一言に反応し、展開した魔法陣の中央が強く、そして、まがまがしく光る。魔法陣の中から冷たい空気が吹き上げ、寝間着姿の魔王のおろした長い髪を天井へとなびかせる。


 一層光が強くなった。だが、唐突にその光は消え去った。その代わりに光が消えた魔法陣の中央には巨大な鳥型の魔物が出現していたのだった。


 


「ステュムバリウム、お前に命じるわ! これから王都の王宮へその翼で飛んで行き、謁見の間にいる頭に王冠を乗せている男を食い殺してきなさい!」


 


 その鳥型の魔獣は、高くするどい一声を放ち、漆黒(しっこく)の翼を大きく羽ばたかせた。


 魔王の寝室の中に突風が吹き荒れ、部屋の中を無茶苦茶に荒らすが、魔王はそれを気にするそぶりも見せず、あっという間に遠くへ飛び去って小さくなった鳥型の魔物を微笑みを浮かべながら、見送るのだった。


 


「もし、今ここにあのおバカがいたら、なんて言ったかしら? ううん。わかりきったことね。なんて私が偉大で、利巧なのかとほめたたえて、偉大な魔神のごとく(あが)めたに違いないわ」


 


 その背後で、侍女の格好をした魔族の女がボソッとつぶやいていた。


 


「あの男なら『この混乱状態の非常時に、どこの世界に謁見の間の玉座でいつまでもぼやぼやしてふんぞり返っているバカな国王がいるんだか』と呆れているでしょうね。国王というものは、非常時にはよからぬ企てをおこす者を警戒して、出入りをチェックしやすく、防御しやすい、出入り口の一つしかない執務室なり、会議室なりに、少数の側近たちとこもって、各所に指示を出しているものですし」


 


 そのもっともな意見は今の魔王の耳には届かなかったようだ。


 


 


 

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