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33

 マールが引き連れてきた副官たちは、ニヤニヤとしながら、その光景を眺めていた。


 戦場でのマールがいつもしているように、近隣の村からさらってきた村娘たちに対してやるようなことをマールが王女にしようとしているのだから。


 もちろん、副官たちも戦場ではマールにならって、村娘たちをさらってきて――


 ちょうどよいところに、ミレッタの侍女の一人がそばで待機している。見るからに(つや)っぽく女盛りの美女だ。


 副官たちはその侍女のもとへ殺到し、ギラギラと目を光らせながら、その体を押さえ込んだ。そのまま、力任せに床に押し倒し、その下に隠れている豊満な果実を期待しながらその衣装に手をかけ……


 副官たちは群がるようにして嫌がるその侍女を組み敷いた――はずだった。だが、気が付いたときには、床に組み敷かれていたのは副官たちの方だった。どこをどうしたのかさっぱりわからない。ただ、いつの間にか床から生えてきた頑丈な植物のつるが副官たちの手足を抑え込み、動けなくしていた。


 どんなに力を込めて引っ張ってもそのつるは切れない。


 


「な、なんだこれは! 放しやがれ!」


 


 そんな副官たちの腹の上では、その侍女が靴のままで片膝をつき、部屋の奥に向かって(こうべ)を垂れている。


 


「魔王様、この無礼者たちをいかがいたしましょうか?」


 


 つられて侍女が声をかけた方を見ると、いまごろマールに組み敷かれているはずのミレッタ王女がその場で平然と立っており、(りん)とした声を放つのだった。


 


「サヌの好きにしていいわよ」


「はっ。ではそうさせていただきます、魔王様」


 


 副官たちにはわけがわからなかった。


 今ごろ、マールに押し倒され、蹂躙(じゅうりん)されているはずの王女が何事もなかったかのようにそこに立っており、しかも侍女から魔王と呼ばれている。そういえば『マールはどこに?』と目で探してみると、王女の近くの床で頭から血を流しながら伸びている。まるで、床に激しく投げつけられたかのようだ。


 


「将軍ッ!」


 


 副官が声をかけるが、気を失っている。


 


「将軍ッ! 将軍ッ!」


 


 急に、自分たちをとらえている(いまし)めのつるの締め付けが強まったように感じた。


 そして、自分たちのすぐそばにおぞましい気配が生まれるのを感じる。


 副官たちは床に拘束されたまま、背筋を冷たいものが流れるような気がしていた。


 


 何かがくるっ!


 


 直後にその何かが、正体を現した。自分たちのかたわらに、自分たちをとらえているつるの本体が床の中らせりあがってきたのだ。巨大な牙をはやした大きな口をもつ、毒々しい色の花。


 あまりの出来事に言葉を失いながら、その花を見つめるしかなかった副官たちの目の前で、その花は大きく口を開いた。


 


 や、やめろっ! やめてくれっ!


 


 一人また一人と丸のみしていった。


 


 ――ッ!!


 


 恐怖で声すら上げるヒマもなく、副官たちは全員その花に丸のみにされていった。そして、しばらくは、あたりに肉の裂ける音や骨の砕ける音がほの暗く低く響くのだった。


 


 


 

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