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 そういったことが公表された途端、ヨックォ・ハルマ中の企業が活発に活動を始めた。


 どこの企業も魔道具に使われる材料である魔導石・魔断石を集め、魔晶線を確保しようと動き出す。そして、研究機関を立ち上げて、それらを使って魔道具を再現しようと試みた。


 だが、結局はうまくいった企業はなかった。


 どの企業も魔導石・魔断石の適切な組み合わせや張り合わせに失敗したからだ。


 ま、ここまでは予想通りってところだ。


 ライバルたちのもとにも優秀な技術者たちがそろっているわけだし、ここ数か月は実際に使用可能な魔道具が手元にあるわけだ。調査し放題だったはずだ。


 もちろん、彼らだってただ遊んでいたわけではないだろう。なんとか自分たちの手で再現しようとは頑張っていただろう。それでも、彼らはそれに成功しなかった。つまり、そう簡単に再現できる技術なら、我々が仕様を公開する前に、とっくに模造品が販売されていただろうって話だ。


 結局、技術が公開されたからといって、すぐに魔道具を製造することなんて、どこもできはしなかった。


 そこで、我々の第二弾の発表が行われた。


 今度は、我々スミス商会が発注して取り寄せているチップの供給元を公表したのだ。


 つまり、我々スミス商会もチップの加工技術は把握しておらず、チップの供給を外部企業から受けているだけだと明かした。


 その外部企業というのは、我々スミス商会と取引はしているが、資本的な関係をもたない企業。なので、スミス商会以外の企業とも取引することは可能だと。


 たちまち、我々が公表した企業に問い合わせが殺到した。


 もともと、あの水差しに使っていた水を加工する魔法や、王女様に献上した宝石に使っていた光を生み出す魔法などなどが知れ渡っていたが、それら以外の魔法に対応したチップを作れるかどうかだれもが知りたがっていた。


 そして、その答えは、もちろんYESだった。


 そうして、チップの大増産が開始された。


 風を操るもの、大地に穴を掘るもの、小さな雷をおこすもの、炎を起こすもの。


 工場はフル稼働し、様々な魔法に対応した様々な規格のチップが続々と作り出され、全ヨックォ・ハルマ中へ向けて出荷された。


 大忙しだった。


 チップの供給を受けた企業群は、すぐに多様な用途にもちいられる多品種な魔道具を生み出し、流通させるようになった。


 ただ、ヨックォ・ハルマで魔道具の作成の自由が保障され、民生用の魔道具が生産されたのは、ウェスト王国内だけ。ほかの国では、民間での製造はもとより、研究も大幅に制限されていた。


 なので、ウェスト王国からの輸出品のほとんどにそれらの魔道具が占めるまで、大して時間はかからなかった。


 我々スミス商会だけでなく、ライバルのオーシャン・ホエールとフリューゲルス、そのほかの中小企業群も、これらの魔道具の製造販売で、大いに(うるお)ったのは言うまでもないだろう。


 大いに感謝してもらいたいものだな。


 なのに、あいつらときたら、スミス商会が払う金額の二割増しを出すから、自分たちへ(おろ)すチップの生産を最優先してくれとチップ製造企業へ圧力をかけようとしているのだとか。それを聞きつけ、俺たちが文句を言ったら『お前らだってよそからチップを調達しているだけじゃねぇか! 偉そうにするなっ!』って、なんて言い草だ! ったく!


 魔道具の製造技術を公表し、製造方法を公開してもらった恩を感じないのかよ!


 


 とまあ、一部不満を感じなかったわけではないが、結果的に、魔道具技術の公開は、ウェスト王国と王国民たちにとっては、格段に生活が豊かになり、便利さが増し、その上で収入が増え、だれもが満足がいくものになった。


 うん、本当に便利になったものだ。


 暑い日には、スイッチ一つで涼しい風がふきつけるようになったし、寒い日にはスイッチ一つで部屋を暖められるようになった。


 台所で調理をするときには、スイッチ一つでコンロに火が起き、つまみで火力が調節できるようになった。


 洗濯物もいくつかのボタンを押すだけで、汚れが落ちて清潔になるだけでなく、乾燥も行ってくれるようになった。どんなに汚れていても、洗濯用の魔道具に入れてスイッチをいれるだけで、清潔な衣類をまた着られるのだ。本当にありがたい。


 部屋を掃除する際にも、風の魔法を生み出す魔道具が大活躍したし、部屋を明るくするために手を汚して油を用意したり、火を起こしたりしなくてもよくなった。


 本当に多様な魔道具が爆発的に登場した。


 人々の創造の力が一斉に開花し、あっという間に社会を変えていった。


 社会の隅々まで魔道具が浸透し、だれもがもう魔道具なしでは生活できなくなったかのようだった。


 ある哲学者が、この劇的な社会の変化に警鐘を鳴らし、これ以上魔道具に頼り切るのは人間の生存本能に反し、精神を堕落させて危険だと主張したりもしたが、だれもその声に耳を傾けなかった。


 むしろ、だれもが次にどんな便利なものが登場し、自分たちの生活をどう便利に変えてくれるかをワクワクしながら待つようになっていた。


 


 


 

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