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8・裏:

妖精王へ会いに行くまでの道のりは、とてもじゃないけど楽なものではなかった。


「アレン!いつまで時間をかけるつもりだ!」

「で、でも川の氾濫の影響が……」

「一時的な処置はしただろう!それでお前の出来ることは終わりだ!」


でも、だって、『アレン』ならそうするから。






「お前、自分を万能だと勘違いしていないか?」


旅を始めて1ヶ月ほど経った頃。ジークにそんなことを言われた。


「へぇ!?お、思ってないよ!」

「確かにお前は妖精の力を駆使して、色々と出来るだろうよ。それは俺も認める」


苦々しい顔のジークは水を一口飲んだ。


「だ、だから僕は……」

「だが万能ではない。先日の村でも、お前の役割は『水の濁りをどうにかする』までで良かったはずだ」


先日立ち寄った村では……妖精の力が暴走した結果、清流と呼ばれるほど綺麗だった川が濁り、氾濫していた。

僕は妖精を宥めて、どうにか勢いを鎮めてもらうのと、水を綺麗にしてもらうことに成功した。

ジークが文句を言っているのはこの後。

氾濫して決壊してしまった堤防の修理やら、川の近くに住んでいた民家の修繕……というかほぼ建て直しなんだけど、それを手伝ったこと。

だって『アレン』ならそうするよ。困った人を見過ごせないんだもん。


「僕は……困ってる人が居たら、助けになりたいよ」

「人の力ではどうにもならない部分を救っただけで、十分その目的は果たしたと思うがな」

「ジークは目の前で困ってる人が居ても助けないの!?」

「状況による」


ジークは寝る準備を始めた。今日は野営だ。


「あの村の奴らは別に極端に衰弱していたわけでもない。放っておいても自分達で問題無く後始末が出来ただろうよ」

「でも……!」

「何で能力のある奴らまで、一から十まで世話してやらないといけないんだ」


ギラリ、と僕を見るジークの眼は鋭い。


「世話って……そんな言い方、」

「お前も少しは選べよ、救うべきは誰なのかをな」


おやすみ、と言い残してジークは横になる。今日は僕が先に見張りをする日。


「……おやすみ」


声をかけたが、返事は無かった。

ジークの言ったことを考えてみるけど、でも、だって、『アレン』ならそうするから……

選べって言われても、『アレン』ならそうするんだから。選んでるじゃないか。




『ジーク!こっチ!』

「痛っ……わかってる!引っ張るな!」


ジークは完全に妖精を見れるようになっていた。と、言ってもジークに付いている光の妖精だけ。

今は大地の妖精が暴走した土地で、土砂崩れが起きる前に止めたかったんだけどギリギリ間に合わなくて……


「……大丈夫か?」

「は……はい……」


ジークが、巻き込まれそうになってた子供を助けたところ。




「ジークが一から十まで世話する必要は無いって言ったんじゃん!」

「はぁ?」

『ジーク、治っタ?』

「多分。ありがとう」


街の宿屋。

ジークは子供を助けた時に怪我をしたけど、妖精の力で治せる程度の怪我だったみたい。

子供の両親から、いや街中の人から感謝され、宿屋を用意してもらえた。

でも、まるでこれじゃ、ジークが主人公みたいじゃないか。


「今回だったら、僕達の役割は『地盤を安定させて欲しい』って妖精に頼むことじゃないの!?ジークの言い分だと、あの子は放っておくべきじゃないの!?」


『アレン』だったら子供を助けてただろうけど、ジークが前に『誰を救うか選べ』って言ってたから選んだのに!

子供は確かに怖くて動けなくなってたけど、でも本当に危険だったら自分で動けるでしょ!?


すると、僕の言葉を聞いたジークがギョッとする。


「お前……正気で言ってるのか?」


その声色は、どういう感情を含んでいるんだろう。


「何が!?」

「あの子供が自力で、あの状況をどうにか出来たと、そう言いたいのか?」

「だって元気だったじゃん!」


子供は両親のもとへ連れて行くと、駆け寄れるくらいには元気だった。あの走りが出来るなら、あの場からも逃げられたと思う。


「僕には誰を救うのか選べ、なんて言っておいて自分は良いところで人助けするの!?ずるいよ!」


もしかして、アレンの評価を奪うつもり?


「アレン、お前……」


ジークは何か言いたげに口を動かしたが、声は出なかった。

少し悩んだ後、絞り出すように溜め息をついた。


「……わかった、もうお前の好きにして良い。誰でも好きな奴を救えば良い……」

「え!本当!?」

「乗りかかった船だ……尻拭いは付き合ってやる」

「うん!」


なーんだ、やっぱり格好付けて『誰を救うのか……』って言っただけだったんだ!

やっぱり『アレン』がやるべきことをやるべきだよね!

そして、親友の失言くらいは許してあげなきゃ!

でもわざわざ「許してあげる」なんて言うのは野暮だよね〜。


「ジーク、妖精の力で治ったとはいえ、今晩は安静にしてるんだよ?」


大怪我ではないにしろ、そして妖精が治してると言えど、安静にしておくのが大事だからね!


「あぁ……」


ベッドに腰掛けたジークは俯いている。赤い目が見えない。


「じゃ、僕は部屋に戻るね!おやすみ!」


部屋を出る直前、ジークに付いた妖精を見る。

ジークを抱きしめている妖精は……いつの間にあんなに大きくなったんだろう。

手のひらサイズだったのに、見た目だけなら僕達と変わらないように見えるなぁ。






その後も、言い争うこともあったけど、旅は順調に進んだ。

やっぱり親友だよね、意見がぶつかり合っても仲直りが出来るんだ。


「殿下からの知らせだ」


アドルスの妖精からは、数回連絡があった。

曰く、王都は妖精の力が無い状態でも何とか持ち直しているとか、

天候の悪化は妖精の力の影響であると考えられるとか、

うーん、正直要らない情報ばっかりなんだよね。

アレンが妖精王を助けるのは決まってるんだから。


「うん……王都は大丈夫そうだよ」

「そうか。まぁ妖精王の居所とやらから離れているし、影響が小さいのかもな」


それはそうだと思う。妖精王の棲家に近付くにつれて、被害や穢れが酷くなっていってるもん。

あ、穢れっていうのは力を制御出来なくなった妖精が、恒久的に及ぼしちゃう害、みたいな感じ?

力の制御が効かなくなると、大抵は体の方が保たなくなって消えちゃうんだけど……たまーに体が残って、それが土地に吸収されて、穢れになる。

体が消えちゃえばそれでおしまい。何も残らない。ただ、土地に吸収されると暴走した時のままの力がそのまま残っちゃう。

それを潰しながら辿れば、妖精王の棲家に辿り着く。


「もしかしたら、アドルスとやり取りをするのってこれが最後になるかもね」

「……近いのか?」

「うん、もうすぐだよ」


旅を始めてから1年くらい経った。

ジークは元から髪が長いからよくわからないけど、僕の髪は随分と伸びた。1年分だ。


「……ジーク、君は……」


子供を諭すような声色って、こんな感じかな?


「残らない。俺も行く」


ジークの返答はわかっていたけど。

アレンが、ジークを此処に残して、自分だけ行こうとするシーンだ。

正義感の強いジークは勿論、ついて来るんだけど。


「……妖精王が、ほとんど穢れになりかかってる」

「そうか」

「これまでとは比べ物にならないくらい、つらいと思う」


穢れから発せられる力は、生物への影響が大きい。頭痛吐き気もそうだし、人によっては近付くだけでパニックになる。


「僕は君を、」

「うるさい。行くぞ」

「ジーク」

「あのな、アレン」


ジークは僕を真っ直ぐに見た。


「ここでお前を見捨てるなんて、格好悪いことは出来ないだろう?」


あぁ、良かった。


道中、何回も変なことを言うから不安だったんだ。

そんなことは物語のジークは言ってなかったのにって。何回も思った。



でもやっぱり君は『僕の知ってるジークフリート』だったんだね。



「ジーク……君が来てくれて良かった」


だから僕も返そう。物語の通りのアレンの言葉を。

僕は『アレン』だからね。






それから、妖精王の棲家に行って。


「アレン……行け!ここで立ち止まってどうする!」


ジークが穢れを抑えている間に、僕は渦を巻いた穢れの中に飛び込んで。


「妖精王!」


その中心に居た妖精王に会って。


『グ……誰、だ……我ニ、近寄るナ……!』

「初めまして!僕はアレン、貴方を救いに来ました!」


妖精女王の加護の瞳で妖精王を見て。


『に、人間、フゼい、が……何ガ、出来る!?』

「貴方の力の暴走の、原因を見ます!」


妖精王の力の暴走の原因は知っている。

妖精王の暴走で、天候やら地殻やらに影響が出ていると思われているが、実はこれは逆。

おかしくなっているのは世界のバランスの方。

妖精王は、過剰に力を放出してバランスを取ろうとしているんだ。


「これは…!妖精王、力を止めてください!」

『……駄目、ダ、今、止まレば、せ、セ、セカイ、世界が、壊れる、ル』

「……壊れかけているのは妖精王の方でしょう!」


この物語で1番の、胸熱の展開だ。

精一杯決めなくては。


「貴方だけで背負わなくて良いんです!世界の均衡だって、1つずつ、一緒に解決しましょう!?」

『……オ、ォ、お前、お前ハ……』

「貴方は確かにすごい力を持っている!でも、それで、貴方だけが頑張り過ぎるのなんて、間違ってる!」


目の前の妖精王は、子供の時に見た妖精女王とは全く異なる姿だ。

女王はとても綺麗な女の人の姿をしていたけれど、妖精王は人の姿をほとんどしていない。異形となり、穢れが溢れ、今にも壊れそう。


「僕、誓ったんです……妖精女王様に……『困り事があったら力になります』って……!」


さぁ、妖精王を、世界を、救おう。



「僕が貴方を、世界を、救ってみせます!絶対に絶対に救います!貴方の苦しみも悩みも、僕に分けてください!」



人の痛みがわかる。

人の痛みを分かち合える。


アレンは、そういう人間だから。






その後は、大変だったけど……


「君はそっち!君は……あぁ、あっちの方角に急いで!」


妖精王の治療をする妖精と、世界中に漏れた穢れを抑えに行く妖精に分かれて。


『……その、眼……』

「あ、妖精王!気が付きましたか!?」


ボロボロの様子の妖精王がどうにか目を覚まして、周囲の妖精は歓喜する。


『目ガ覚めタ!』

『アレン!王が目を覚マシた!』

「うんうん、良かったねぇ」


妖精が何体か僕に抱きついて来たり、キスして来たりした。


「改めまして妖精王、アレンと言います。人間の身分で貴方の前に来たことを、まずはお詫び申し上げます」

『……ティターニア、の、』


ティターニア、というのは妖精女王の名前だ。


「はい、幼い頃に女王から加護を」

『……そうか、君が……その眼が、ここまで導いたのか……』

「はい!……ちょっと大変でしたけど」


妖精王は人間大のサイズになっている。妖精女王は……湖で会った時は大きかったけど、多分妖精女王も人間大にもなれるんじゃないかな。


「御気分はどうですか?まだ……と言うか、しばらくは安静にしててくださいねぇ」

『ありがとう』

「え?」


なんて、聞き返したけど。この先の流れはよく知っている。


『私だけでは、もう力を止められなかった。命が尽きる瞬間に……力を一気に放出して、世界の歪みを全て打ち消そうと思っていた』

「妖精王……」

『……傲慢だったな。初めから、皆の力を借りて、策を講じていたら良かったのかもしれない』


ボロボロだけど、妖精王もすごく美しい。

学園に飾ってある絵は想像図だけど、それよりも遥かに美しい。


『ありがとう、人の子、アレンよ』

「いいえ」

『……これからも、我々の良き隣人でいて欲しい』


はは、アレンならこう言ってたよ!


「勿論です!」






「ただいま〜!」


そう言いながら、学園の門をくぐる。

返事の代わりにざわつきが返って来る。


「そんな気軽な……」

「え、だって仰々しく帰る感じでもないでしょう」

「だからってなぁ……俺たちの後の学年も入って来てるんだぞ」


ジークは呆れたように言いながらも僕の横に追い付いた。

そっか、僕らのことをそもそも知らないって学年も居るのか。


「お前達!?」


上の方から声がして、僕とジークはほぼ同時に見上げたと思う。

生徒会室の窓からは正門がよく見えるんだけど、その窓の1つからアドルスが驚愕の顔でこちらを見ていた。


「あ。アドルスだ〜」

「ご機嫌よう、殿下」

「ただいま〜、って、えぇ!?」


アドルスは窓から(3階だよ?すごいよね!)飛び降り、着地する。多分風の妖精の力を使ってるんじゃないかな。


「アドルス!今ので怪我っ……ぐえっ!?」

「ぐっ、」

「お前達!……帰還するなら連絡くらい寄越せ!」


着地後、此方へ走り込んできたアドルスはその勢いのまま僕とジークに突っ込んだ。

勢い的にはラリアットだ。痛かった。


「痛い!?痛いよアドルス!」

「痛いっす」

「どれだけ……」

「うん?」


いつもハキハキしているアドルスの声が、信じられないほどか細い。


「俺が、俺達が、どれだけ心配をしたと……」

「……うん、心配かけちゃったね。ただいま」

「帰還しましたぁ」

「貴様!ふてぶてしさが増したな!?」


バッと僕達から離れてジークを睨むアドルス。ジークはどこ吹く風。


「……ふふ」


良いよねぇ、こういうやり取り。親友ならではだよ。


「アレン君!ジークフリート君!」


学園長が校舎から出て来た。学園長は杖をついているから走れないが、可能な限り早歩きで此方に歩み寄って来る。


「あっ、学園長先生!無理はなさらず……」

「君なら、君達なら!成し遂げてくれると信じていたよ……!」

「……皆さんの期待に応えられたのなら、何よりです」


他の先生方も出て来て、そこからはもう騒ぎになってしまった。

次々に寄せられる賞賛の声、どんな旅路だったのか聞く声、他にも……もう、多すぎてわからないや!

この騒ぎが王都全体にまで伝わって、もっと騒ぎになるんだけど……それはもう少し後の話だ。




「よくぞ世界を救ってくれた」


王都への帰還の翌日。僕とジークは王様に呼ばれて王宮へ来ていた。

そう言えば王様に会うのって初めてかも。


「お久しぶりでございます、陛下」


涼しい顔で挨拶を述べるジーク。そっか、ジークは初めましてじゃないのか。


「へ、陛下、初めまし……じゃなくて、お初にお目にかかります、アレンと言います」

「良い、そう固くなるな。顔を上げてくれ」


言われた通りに、そろそろと顔を上げると王座に座る王様が居る。すごい!ファンタジー作品でよく見る感じのやつだ!

王様の横にはアドルスが立っている。何だか誇らしげだった。


「父上、彼らは私の最高の……」


口を開いたアドルスに割り込む形で王様が笑った。


「ふふ、何度も聞いた。最高の友人、だろう?」

「うぐ、は、はい!」

「……」

「おいジーク!何だ!何か言いたいか!?」

「いいえ何も、第2王子殿下」


横に居たジークの顔はわからないけど、どんな顔してたんだろう。


「君達の勇気と、正義に。心から感謝を」

「と、とんでもないです!僕はただ、困ってる人は助けたくて……」

「ね?父上。途方も無いお人好しでしょう?」

「そのようだな」


アドルスの言葉に王様は再び笑う。


「君達の存在は未来永劫、語り継がれるだろう」


あぁ、これだよ。これが僕が望んでた展開。

良かったぁ、ここまで長かったな。




「アレン!」

「へ、アドルス!?」


王宮の客間へ通されてお茶を飲んでいたら、アドルスが入って来た。ノックされたかな、今。


「ノックした!?びっくりしたよもう!」

「あぁ、すまん。お前に紹介したい人が居てな」

「え、誰だろ……」


こんな展開あったかな?

内心首を傾げていると、アドルスに促されて1人の女の子が部屋に入って来た。

金色のふわふわした髪の、僕よりも少し年下くらいの女の子だろうか?


「彼女はレイシー。レイシー・ジェーン・フォーゲリーだ」

「は、初めまして、アレン様」


ドレスの裾をつまんで挨拶する彼女は、お姫様のようだった。


「は、初めまして……?」

「レイシー嬢の年齢は、私達よりも2学年下になる。もうそろそろ学園に入学だな」

「はい!とても楽しみで……」

「……?」


わからない。どういう展開だろう。


「あぁ、勝手に話を進めてすまん。実はフォーゲリー家がお前を婿養子として迎えたいと言っていてな。それで、レイシー嬢と婚約をさせたいそうだ」

「へぇ〜…………えぇ!?」


アドルスとレイシー嬢を交互に見る。

婚約者!?アレンの婚約者はレイチェルのはず……!?


「フォーゲリー侯爵家の現当主はとても優秀な統治者でな、お前の各地での善業の噂を聞いて、是非にと仰っていた」

「父は……とても感動しておられました。アレン様は、どんなに小さなことで困っている人々も見捨てなかったとか?」

「い、いやー、そんな……あはは……」


でも、タイミング的にはこの辺りのはずだ。

エピローグでアレンの隣に婚約者が居たはずで……今が直前だから。


「公式での打診はまだだが、先に会わせておこうと思ってな。レイシー嬢もとても優秀だぞ?来年の新入生代表者だからな」

「1年間とはいえ、アレン様と同じ学園に通えて嬉しいです!」


レイチェル。レイシー。

成る程、少し間違って覚えていたらしい。横文字の名前ってごちゃごちゃになるよね!


「……うん、僕は、こんなお嬢さんと婚約出来る器じゃないかもしれないけど……」


レイシー嬢の前に立ち、頭を下げる。


「貴女に相応しい人間に、なってみせます」

「まぁ……!」

「ふふ、当人同士の意思は固まったな」


アドルスは得意げに笑って、そして廊下で待機していたメイドに声をかける。


「茶の用意を頼めるか!?」

「勿論でございます」


そして、3人で仲良くティータイムを過ごした。

レイシーは明るくて、でも少し恥ずかしがり屋で、ふわふわと笑う、レイチェルとは別ベクトルの『お姫様』のようだった。

あぁ、こんなに可愛い子が僕の婚約者になったんだ。嬉しいな。






「入学おめでとうございます、レイシー嬢」

「アレン様!」


新たな年が始まり、僕は最終学年に、そして聞いていた通りにレイシーが入学して来た。

いやはや、留年になったらどうしようかと思ったけど……元々成績上位者だったのもあって、進級させてもらえた。勿論ジークも。


「良ければ学園内を案内しても?」

「は、はい!アレン様!」


すっと腕を差し出すと、レイシーは飛び付いて来た。

わぁ、女の子って柔らかくて良い匂いするんだ!よくある描写とかじゃなくて、マジなんだ!


「……アレン様、世界はもう大丈夫なのでしょうか?」


ふと、不安げにレイシーが聞いて来た。


「うーん……正直に言うと、また何かのキッカケでこの間までのようなことが起きるかもしれない、ですかね……」

「そうしたら……またアレン様は世界を救いに行ってしまう?」


レイシーを見ると、不安そうな瞳が此方を向いていた。


「……そうかもしれません。でも、必ず帰って来ますよ」


よーし、ここは格好付けちゃおうかな。

丁度この辺でアレンが婚約者に跪く描写があったからね。


「帰るべき場所を手に入れることが出来たのですから。必ず貴女のところへ、帰って来ます」

「アレン様……!」


ぼぼぼっとレイシーの顔が赤くなる。うーん、可愛い。


「私っ……私も!アレン様の帰るべき場所であり続けますから!」

「ありがとうございます」


とびきりの笑顔で答えてみせると、レイシーも笑ってくれた。




これは、アレンの物語。


平民の身分で生まれた、とても美しい男の子。

つらい境遇に堪えながら過ごし、母親と移り住んだ土地で様々な才能を示し、

好奇心旺盛で頭も良くて、誰も彼も隔てなく接するみんなの人気者。


妖精女王の加護を受けてからは、人間のみならず妖精のためにも奔走し、

学園では身分の違いが顕になりつつも、やっぱり誰でも分け隔てなく接して、

王子や貴族と親友になる。


そして、世界の様子がおかしくなった時には真っ先に妖精王へ会いに行く旅に出て、

道中でも困った人を見過ごせなくて、

最後には妖精王を、世界を救う。

でもそれを自慢する様子も無くて。




「アレン!レイシー嬢も!」

「あれがアレンの婚約者か」

「アドルス!ジーク!」


少し先でアドルスが笑って手を振っている。その横には相変わらず無表情なジークも。いや、少し表情が柔らかいかな。


「レイシー嬢、彼らに改めて貴女を紹介したいんですが、時間は大丈夫ですか?」

「ひゃっ!?は、はいぃ!」


なんて、なんて幸せなんだろう。


あぁ、僕はアレンになれたんだ。

大好きな物語の、大好きな主人公の『アレン』に。




僕は、アレン。

これからも、ずっとずっと幸せに過ごすんだ!













































あれ、














































物語(ここ)から先は、僕はどうしたら良いんだろう?



『お前、異世界転生者じゃね?』、これにて本編完となります。

本当にありがとうございました。

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