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8:巡り巡ってお前、異世界転生者じゃね?

月日の経つのの早いこと、そろそろ最終学年になりますよっと。あ、モブルです。


「ただいま〜!」


なんの変哲もない日、アレンがひょっこり帰って来たぜ!






妖精の力が使えなくなった王都は……まぁかなり変わったんだろう。

『日常をちょっと便利にする』みたいな商品が、まぁ〜かなり売れたね。地方に既存の商品を王都にも持って来ただけなんだけどね、ぶっちゃけ。


が、案外それくらいで済んだ。

ちょっと悪天候が続くな〜っていうタイミングはあったし、ここ最近何だか地震が多いわ〜ってタイミングもあったけど、壊滅的な被害が出るほどにはならなかった。逆に、『王都の人間が災害に備える癖が付いた』って王様が安心していたらしい。

不便な生活も、王都外から来てる人間は大して困らなかったし、人間は慣れるものだ。妖精の力が使えなくなって半年も経たないうちに、人間の世界は平穏を取り戻していたと思う。

まぁ、妖精の世界がどうなってたのかは知らないし、裏でアレンが頑張ってたのかもしれないけどな。


「英雄が帰って来たぞー!」


アレンとジークフリート様が帰って来た日、学園を中心に王都はそれはもうお祭り騒ぎになった。


「お前達!……帰還するなら連絡くらい寄越せ!」


第2王子殿下は真っ先に走り寄り、2人に思いっ切り抱き付いた。勢い的にはラリアットに近かった。

遠巻きに見ていたので細かい会話はわからないが、二言三言交わし合って笑っていたように見える。うぅ、こそばい。

学園長達も、アレン達に歩み寄って何かしらの言葉をかけていた。

そうそう、この1年で妖精学を中心に色んな研究がかなり進んだんだよね。

不便さを解決するのは、やはり知恵を尽くした技術だろう。


「英雄の御帰還か!これは世界的なニュースになるぞ!」

「そうですねぇテセス様」

「こういう時にこぞって『英雄◯◯』のような名の菓子が出回るのだろうな。個人的には好かないが、乗るべきか?」

「いいえ、お勧めしません」


ここ1年で、テセス様もすっかりウェイカー商会の常連だ。


「そうか、ウェイカーがそう言うのならそうなのだろう。他の地域の様子も併せて静観だな」

「賢明です、テセス様」

「それよりも来年のスイーツフェスについての話を詰めたくてだな…」

「お任せくださいテセス様ぁ!」


先日、テセス子爵領で開催した『スイーツフェスティバル』っていう……まぁお菓子専門の市場みたいなもんなんだけど、ウェイカー商会が全面的に協力して開催したらこれが大ウケだった。

子爵も大喜びで、来年も是非頼む!と仰っていた。

テセス子爵領は名産が少ないから、新たな観光イベントになるってさ。これは新たな金策になるぞぉ…


「おいウェイカー、何を悪い顔をしている……」

「いえいえ、次回は衛生面での対策も講じて生菓子も販売したいですねぇ」

「あぁ、それなんだが……」


テセス様は、割と催し物の企画立案やら計画やらが上手いらしい。これは使えるね。






「はー……お祭り騒ぎになってるからって休講とか……」


戦士に休息は必要だ。

だがそれはアレンとジークフリート様以外にも適用しなくても良い。

急に暇になった時って結構困るんだからねっ!

温室にマーガレットは居なかったし、中庭で昼寝するくらいしか時間の潰しようがない。


「「はぁ」」


あれ、溜め息がハモった。


「あ、ど、どうも」


ハモり主は控えめに軽く頭を下げた。

黒髪に目立たない目鼻立ち。えーと確か。


「ご機嫌よう、タイム様」

「え、何で俺の名前知って……」

「学園中の生徒の名前を覚えております、タイム男爵家子息殿」

「すげぇなお前!でもやめてよ、様とか殿とか…田舎の男爵家出身だよ俺は……」


もぞもぞと言った後、苦笑して続けた。


「セージ・タイム、セージで良いよ」

「じゃセージ。俺、モブル・ウェイカー。よろしくどうぞ!」

「あぁ、ウェイカーってお前か!」


ここ1年くらいで俺の名前だけは大分広まった。顔が印象に残らないからってんで、ちょっと話したくらいじゃ気付かれないんだけど。


「急に休講にされたって、寝るくらいしかやることねーじゃんな?」

「いや、そう!俺もそうなんだよ!街に出たってもっとお祭り騒ぎだろうし……」

「アレンも祭り上げられて大変だよな〜」

「アレン……ウェイカー、あいつと知り合い?」

「同郷でね」


そう答えると「へぇ!」とセージが言った。


「やっぱ子供の頃からすごかった?」

「あー、まー、そうね。目立ってたよね色々」

「あの見た目で頭も良くて強くて……すげーな、主人公みてぇ」

「わかるわ〜」


『主人公みたい』、という印象はやはり持って当たり前なのだろうか。


でも、ある日突然田舎に越してきて、

麗しい見た目で周囲を虜にして、

頭の良さで頭角を表し始め、

ある日妖精女王の加護を貰い、

妖精の願いを叶えつつ自分も研鑽を続けて王都の学園へ入学、

その後王子や侯爵家の子息を始め、色んな人物を交友を深めて、

突然力を暴走させた妖精王を助ける旅に出て、

そんで全て解決して王都に帰還する……


いや〜、これ以上無い主人公だわ〜。

巡り巡って、アイツやっぱり異世界転生者じゃね?

だってそうじゃないとありえない事の進み方してるもん。ご都合主義過激派みたいだもん。


「……なぁ、暇つぶしにくだらない話、して良い?」


互いにぼーっとしていた所で、ふとセージが口を開く。


「良いよー。でも『すべらない話』に厳しいよ、俺」

「俺さ……前世の記憶があって、全然違う世界で生きてたんだぜ?」

「へー……え、マジ!?」

「うわっ!」


瞬時に身体を起こした俺と連動するように、セージは身体を跳ねさせた。


「マジ?異世界?ねぇ、どんな所!?」

「すげー食い付くじゃん!疑うとか無いのかよ!?」

「いや、その話が嘘でも本当でも良いよ!すげー好きなんだよ異世界の話!」

「変な奴……此処とは違い過ぎて、何から話せば良いんだか」


セージは座り直して続けた。俺もちゃんと正座で聞こう。


「まずは貴族とか……そういう身分制度が無い。昔はあったけど廃止されてるんだ」

「へぇ!」

「それから交通も此処よりずっと楽で……飛行機っつってな、空を飛ぶ鉄の塊があるんだ。それで大人数が遠方にも2時間くらいで行けたんだよ」

「ちょっと何言ってんのかわかんない。」

「だよなぁ」


セージはクスクスと笑うが笑い話じゃない。

どうやったら金属の塊が空に浮かぶってんだ。詳しく聞きたい。


「……俺な、妹を連れて田舎の爺ちゃんと婆ちゃんの家に行く所だったんだ」

「うん」

「その、飛行機でな。でも途中で……天気が悪くなったんだか、機体の故障だか、どっちもだったのかは知らないけど……激しく揺れ始めて、悲鳴が……」

「……」


セージの話はわからないが、考えてみよう。

まず、空を飛んでるなら天候の状況はどう考えても影響があるだろう。船だって天気がやべー日はやべーんだから。

キタイの故障。察するに、ヒコーキ自体に何かしら故障があったんだろう。

えーと、ぶっ壊れた船で荒波に繰り出した場合……


「……え、詰んでない?」

「詰んでるとか言うなよ!その通りだけど!そこで……すげー怖いけど、妹をどうにか守らなきゃって抱きしめて……そこで意識が途切れたんだよ」

「うわ……」

「馬鹿だよなぁ、あんな状況で抱きしめたって守れるはずないのに」


悲しそうに笑うセージの顔を見ていたら、セージは繕ったような笑顔を引っ込めた。うん、無理して笑わないでほしい。笑える話じゃない。


「それで気付いたら、知らない女の人のこと見上げててさ」

「ん?流れ変わったな」

「何か白衣の婆さんとか……あとはおっさんも入って来た」

「登場人物増えて来たぞ」

「身体動かそうとしても上手く動かないし、声出そうとしても泣き声しか出ないし、どうにか確認したら俺の手が赤ちゃんみたいに小さくて」

「あれ?異世界編始まった??」

「始まった始まった」


えぇー!?

すごいぬるっと始まるじゃん!

何か妖精王みたいなすげーのが出て来て、『お前を生き返らせてやろう…』みたいなのじゃないの!?


「しばらくして、どう考えても俺が居た世界とは違うってわかってさ。知らない女の人は母さんだったし、おっさんは父さんだった」

「白衣の婆ちゃんは助産師だろうな多分!」

「文化の違い、どころの話じゃないし……自分が死んだのかどうか、あの後どうなったのか、妹がどうなったのか、わかんないことだらけで……」

「なまじ記憶があると、そういう部分で色々考えちまうのか」

「で、外に出るのも怖くなってさ、ガキの頃って結構引きこもってたんだよ」


一種のパニックみたいなもんだろうか。

まぁそりゃ死ぬ直前までの記憶があって、急に赤ん坊になってたら混乱する。

しかも前世が大人だったらまぁ……まだいくらか冷静に考えられたかもしれんが、話を聞いた感じだとコイツ子供の時に死んだんじゃ?


「そしたら8歳の頃……妹が産まれたんだ。前世の妹と同じ歳の差で」


妹も、もしかしたら。


「ちっちゃい妹見て……俺泣いちゃってさぁ、もしかしたらこの子も前世の妹の生まれ変わりで、また俺の妹として産まれて来てくれた、んじゃ、ないかって……」

「うん」

「……いや、別に、生まれ変わりじゃなくても良いんだ。とにかくその時に、今度こそ妹を守れるような人間になるって決めた。父さんにも母さんにも謝った。心配かけてごめん、俺、これから頑張るからって」


溢れた涙を袖で拭うセージ。


「……2人とも泣きながら俺を抱きしめてくれたよ。一緒に頑張ろうって。その時にようやく俺は……今世の両親を、自分の両親だと受け入れることが出来た」


前世の両親こそが自分の両親だ、今世の両親にあたる人物はよくわからん他人だ、のような思いはきっと拭えないだろう。

知らん世界で、前世の記憶があるのに、何かぽっと出てきたこの両親は何だろうと。それはそうなっても仕方ない。


「……あ、ごめん!すげぇ語っちゃった!」

「いや、面白かったけど」

「この前誕生日でさ……前世の年齢超えたんだぜ、俺」

「そっか」


やっぱり前世は、せいぜい15歳くらいの子供だったんだ。

生まれ変わり、という事実を受け入れられる人間はどのくらい居るだろう。

ましてや、前世が幸せなもので、それが突然壊されていたとしたら。


「……でさぁ、前世では何かこう……小説とかが流通しててさ」

「ん?うん。また流れ変わったな」

「全然知らん世界に生まれ変わって無双する!みたいな設定の娯楽小説とか腐るほどあったわけ」

「ぶっ……」

「しかも生まれ変わった人間って……えーと、転生者っていうんだけど、大抵の場合はチート能力……えーと、万能な力?みたいなのを持っててさぁ、偉業を成し遂げる〜みたいな展開で……」


駄目だ、笑いそう。


「俺も期待したんだけど、全然何の力もないし平凡な生まれだしさぁ……だから、あのアレンって奴を見てると、俺の期待した異世界転生者みたいな人生だよなって……」

「やっぱりそうだよなぁ!?」

「ガキの頃はさぁ、突然目に模様が浮かび上がって、光って、何かすげー力が出る!みたいな妄想を……」

「ぶほっ!ちょ、やめ……ひぃっ、ひぃ……!」

「ん?お前、やっぱりって言わなかったか?」


笑い過ぎて呼吸が怪しい俺に向かって訝しげな顔を向けるセージ。


「いや、俺さぁ…!アレンのこと、会った時から「異世界転生者じゃね?」って思っててさぁ…!」

「え!?やっぱそうなの!?」


あー、おかしい。目に模様が浮かび上がって、っていう部分でもう駄目だ。完全にアレンだ。


「っていうか何でそんなさらっと異世界転生者って……」

「俺のひぃひぃ爺ちゃんが異世界転生者だからさぁ」

「マジ!?」


こうなったら俺の知ってる異世界転生者を全員教えてやろうか。


「あ!モブルー!」


そう考えていたら、突然名前を呼ばれた。

ニコニコ笑って、こっちに走って来るのは……


「あ?アレンじゃん」

「休講だからって気を抜き過ぎじゃない?」


アレンだった。

旅の途中に切る暇が無かったのか、髪が長くなっている。肩に付く程度に。


「久々に会って、第一声が説教かよ」

「別に説教のつもりは無いけど!」

「英雄サマが人の少ない庭にどうした?」

「もー!揶揄ってるでしょ!流石にちょっと疲れちゃって、あんまり人の居ない場所を探してたんだけど……」


そりゃあもう誰かしらがべったりくっ付いて、アレンのことを褒めまくってたからな。


「そしたらモブルが見えたからさ」

「そうかいそうかい」

「あれ、モブルの友達?」

「え、あ、えーと、そうです!」


お、セージは『そうです』って言えちゃうタイプの人間か。


「良かったぁ!モブルって友達居たんだねぇ!」

「コイツは本当に……」


アレンは変わらない。しれっと失礼なことを言う所も、いつでもニコニコしてる所も。

それに加えて、今日の表情は晴れやかだ。

まぁそれはそうか。妖精王を救って、帰還した日なんだからな。


「なぁ、アレン」


こんな晴れやかな日なら、こんな質問をぶつけても許されるんじゃないだろうか。


「ん?なぁに?」


きょとんとする顔も、昔から変わらない。

これからもきっと、コイツは何も変わらない。

馬鹿みたいにお人好しな『アレン』のままなんだろう。

お人好しに免じて、聞かせてくれよ。

お前がこれまでにきっと見て来た、違う世界の事を。




「お前、異世か、」






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