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光の満ちる教室に
今改めて少年の顔を思い出そうと試みた。霞の瞼には、何も浮かばなかった。
ただ微かに霞は胸の辺りが暖かくなったのを感じた。
朝の会が始める前、私の目の前に広がる教室。八時半から朝の会が始まり、挨拶をして学校が始業する。その前の束の間の自由と奔放の時間とも言うべき時。
教室には子ども笑い声が満ちる。笑顔が満ちる。一人ひとりの身体から、光がぼんやりと漂うように放たれる。わたしの身体からもだ。
いつの間にか、当たり前の風景になっている。子ども達が机に座り本を読み、机の間を歩きながら談笑し、後ろのランドセルを収めるロッカーの前のスペースでは、座って輪になってトランプをしている。黒板に出てきて、かわいらしい絵をチョークで描いている。
放課後、順一という少年が教室に顕われていろいろなことを話した。まるで古くから知っている友人の様だった。その頃から、すこしずつ自分の教室の様子が変わり始めた。ずいぶん何日も彼とともにすごした気がする。がしかし、今となっては、どんなことを話したのか、ほとんどと言っていいほど思い出すことが出来ない。