声
教室の後ろに貼られているカレンダーに目が行く。理科の学習のために太陽系の惑星の関係が分かるように描かれている。左端に太陽、水星、金星、地球、火星と順に一列に惑星が配置されている。太陽系の星々の描かれたその絵に目を細める。再び目が微かに潤んだ。それまで胸につかえていたものが一気に払拭され、雲ひとつない青空が胸いっぱいに広がる思いがして、胸に久々に新鮮な空気を吸い込めた気がした。
「ごめんね、みんな」
私は子ども達の机に向って一言呟いた。
「さようなら」
沈黙が満ちる。
「私には光がないの」
宛て先のない言葉たちが自然な流れになって出ていく。
「水の出ない土地をいくら掘っても水は出ないのと同じ。無いものはいくらがんばっても出ない」
もう気づいてしまった。
「それはさ、愛情ってのとも違うの」
暗くなった外を見る。暗くなってからはカーテンを閉めて仕事をするのが常だったが、それすら忘れていた。もう、そんなことどうでもいい。
「なんか、すっきりした顔してるもん。わたし」
「不思議だね」
「辛いトンネルから抜け出したみたいな気持ち」
暗くなった窓外には、住宅のオレンジ色の灯りが見える。窓にふと、教室の窓側の隅の席に十歳の自分が見えた気がした。
「長いトンネルだった?」
つづく