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第98話:パレッサ王国は楽しすぎます

 美味しいお料理を堪能した後は、部屋にどもってきてゆっくり休むことにした。


 さすがに今日は疲れたわ。でも、本当に綺麗な国だ。明日国を見て回るのが、楽しみでたまらない。そんな思いで、ベッドに入ろうとした時だった。


 通信機がなったのだ。こんな時間に通信してくるだなんて、きっとお父様ね。急いで通信機を手に取った。


 “ルージュか?今日無事パレッサ王国に着いた様だね”


「ええ、着きましたわ。叔母様も元気そうでしたわ。パレッサ王国は白を基調にした建物が沢山建っていて、本当に美しい国です。明日はパレッサ王国を観光して回る予定ですの。朝も早いので、もう通信を切りますね」


 “ちょっと待ちなさい!呑気に観光なんてしていないで、早く帰って来なさい。明日の夜には、パレッサ王国を出るのだよ。分かったね?”


 この人は何を言っているのだろう。今日ついたばかりなのに、明日の夜には国を出るだなんて。そんな事、出来る訳がない。


「お父様、寝言は寝てから言って下さい。それでは失礼いたしますわ」


 “おい、ルージュ…”


 まだ何か言いたげなお父様を無視し、さっさと通信を切った。お父様ったら、どうして急に帰ってこいだなんて言うのかしら?本当にもう。


 さあ、明日に備えて早く寝ましょう。


 フカフカのベッドに入ると、あっと言う間に眠ってしまったのだった。


 翌日


「ルージュ嬢、僕が街を案内してあげるよ」


「ずるいわ、お兄様、私が案内するのよ」


 朝からデイズ殿下とアン殿下が、嬉しそうに私の元に近づいてきてくれた。せっかくなので、2人に案内してもらいながら、街を一緒に見て回る。周りには普通に平民たちも歩いているし、中には話しかけてくる人もいた。


 本当に王族と平民の距離が近いのね。でも、こうやって平民たちと触れ合えるのも、この国の魅力なのかもしれない。


「ここが我が国のメインストリートだよ。みて、ルージュ嬢。とても綺麗な真珠だろう?」


「真珠?初めて見たけれど、とても綺麗ね」


「真珠はね、この国でも非常に貴重な宝石なんだ。アコヤガイという貝が作っているのだよ」


「えっ?貝がこんな綺麗な宝石を作っているの?それはすごいわ。それにしても、本当に綺麗ね」


「我が国では、この真珠の養殖にも力を入れているのだよ。せっかくだから、真珠専門店に行ってみよう」


「デイズ殿下は9歳なのに、色々と知っているのね。凄いわ」


「僕は次期国王になる人間だからね。これくらい当然だよ」


 そうは言っているものの、とても嬉しそうだ。やはり中身はまだ9歳の子供だものね。


 せっかくなので、いくつか真珠を購入した。どの真珠も、本当に綺麗だわ。


「ルージュお姉様、お昼は貝の専門店で昼食にしましょう。色々な貝料理が食べられるお店ですの」


「まあ、貝の専門店があるの?それは楽しみだわ」


 アン殿下が紹介してくれたお店は、本当に色々な貝の料理を食べさせてくれるお店だった。昨日王宮で食べた貝のパスタはもちろん、貝のワイン蒸しや貝のカルパッチョ、ホタテのステーキまで頂いた。


 本当に色々な貝が取れるのね。もちろん、魚も沢山取れるらしい。


 そして午後は潜水艦というものに乗り、海の中を見ていく。


「この乗り物に乗れば、海の中に入れるの?」


「ああ、そうだよ。それじゃあ早速行こうか」


 ゆっくり潜水艦が海の中に入っていく。


「見て、デイズ殿下、アン殿下、あんなに魚がいるわ。あっ、あんな大きなお魚も。海の中はこんな風になっているのね。凄いわ」


 初めて見る海の中に、1人大興奮だ。


「綺麗でしょう。私も潜水艦で海の中を見るのが大好きなの」


「僕もだよ。そうだ、明日は特殊なスーツを着て、海の中に潜ろう。潜水艦もいいけれど、実際自分で潜る方が、もっと楽しいよ」


「まあ、そんな事も出来るのね。それは楽しみだわ」


 直接海に潜るだなんて、一体どんな感じなのだろう。潜水艦で海に潜っただけでもこんなに素敵な世界が広がっているのに。増々楽しみになって来たわ。



 そして翌日、デイズ殿下とアン殿下と一緒に、特殊なスーツを着て海に潜った。最初は上手く潜れなかったけれど、段々コツを掴み、最後はかなり長い時間、潜る事が出来る様になった。


 私の元に小さな魚がやって来てくれるのだ。それが嬉しくてたまらない。すっかり海の虜になった私は、翌日も、その翌日も海に潜った。


 毎日海ばかりではとの事で、叔母様が近くの丘にピクニックに連れて行ってもくれた。毎日が楽しくて仕方がない。


 パレッサ王国は、私の想像をはるかに超える、とても素敵な国だったのだ。


 ただ…


 楽しい経験や嬉しい経験をするたびに、グレイソン様にも同じ経験をさせてあげたい、ついそんな事を考えてしまうのだ。


 それにお父様から、毎日のように国に帰って来るように言われているし…


 そういえばグレイソン様が、話したい事があると言っていたな…


 でも、グレイソン様の話の内容なんて分かっている。だから、私はやはり国に帰る事は出来ないのだ。


 そうだわ、私がいかにパレッサ王国を楽しんでいるか、グレイソン様に知ってもらえれば、きっと私の事を気にしなくなるかもしれない。


 そうよ、それがいいわ。早速お父様に通信をしよう。

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