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第83話:グレイソン様の気持ちが分かりません

 友人たちに背中を押され、屋敷へと戻ってきた。


「ルージュ、お帰りなさい。グレイソンもさっき帰ってきたのよ。今日は久しぶりに、4人で食事ができるかしら?」


 お母様が嬉しそうに、私に話しかけてきたのだ。


「グレイソン様が?珍しいですわね。私もすぐに着替えて参りますわ」


 もしかして、グレイソン様の気持ちが落ち着いたのかしら?こんなに早く帰ってくるだなんて。そう思っていたのだが…


「グレイソン様は、やっぱり食堂には来ないのね…」


 喜んで食堂にやって来たのだが、グレイソン様の姿はなかった。


「ルージュ、そんなに落ち込まないでくれ。そういえばこの後、グレイソンが話があると言っていた。一体どんな話だろう」


「グレイソン様がですか?その話し合い、私も参加しますので」


 グレイソン様から話しがあるだなんて、何だか嫌な予感しかしない。とにかく私も、その話し合いに参加しないと。そう思い、お父様とお母様と一緒に、居間でグレイソン様がやって来るのを待つ。


 一体どんな話だろう。お父様とお母様も不安そうだ。


 しばらくすると、グレイソン様がやって来た。


「義父上、義母上、急にお呼びだてして申し訳ございません。この4年、2人には実の息子の様に大切に育てていただきました。本当にありがとうございました」


 そう言って、お父様とお母様に頭を下げたのだ。


「グレイソン、頭を上げてくれ。君はこれからも私たちの息子だ」


「そうよ、グレイソン。このままこの屋敷を出ていくみたいな言い方をしないで」


 お父様とお母様が必死に訴えている。


「義父上、義母上、僕は今後、騎士団の宿舎で生活をしようと考えております。そして騎士団員として、生涯を迎えたいと思っているのです。ですので、ヴァレスティナ公爵家を継ぐことはできません。恩を仇で返すような形になってしまい、本当に申し訳ございません。ですが、僕はこれからは、自分の好きな事をして生きたいのです。どうか養子縁組を解消してください」


 今なんて言ったの?ずっと騎士団員として生活をする?ヴァレスティナ公爵家を継ぐことは出来ない?養子縁組を解消する?



 そんな…


「グレイソン、待ってくれ。とにかく落ち着いて話をしよう。もしかして、私が君に無理やりヴァレスティナ公爵家を継がせようとしていたことが、負担になっていたのかい?」


「グレイソン、そんな寂しい事を言わないで。私達はあなたの事を、本当の息子の様に思っているのよ。だから…」


「本当の息子の様に思って下さっているのなら、どうか僕を自由にしてください。お願いします」


 必死に頭を下げるグレイソン様。そこまでこの家が嫌だっただなんて…


「グレイソン、養子を解消すれば君は、貴族ではなくなる。そうなると、貴族学院にも通えなくなるのだよ。せっかく沢山の友人も出来たのだろう?それなのに…」


「騎士団には大切な友人たちがたくさんおります。それに僕は、貴族には未練はありませんから」


 そうはっきり言いきるグレイソン様に、お父様とお母様も何も言えない様だ。


「…グレイソンの気持ちはわかったよ。ただ…今すぐには結論を出すことは出来ない。一度騎士団長にも話をしないといけないし。とにかく、グレイソンの気持ちを極力尊重する方向で話を進めよう」


「あなた!」


「グレイソンが決めた事だ。私達は応援してあげよう。グレイソンを引き取った時、そう決めただろう。グレイソン、君を私達の手で幸せにしてあげられなくて、本当にすまなかった。全て私たちの力不足だ。騎士団の件、早急に手配しよう。それが私にできる、唯一の事なのだろう?」


 お父様が泣きながらグレイソン様に訴えている。


「ありがとうございます。出来るだけ早めに手配をお願いいたします」


 ペコリと頭を下げると、そのまま部屋から出て行ったグレイソン様。


 どうして…


 グレイソン様は本当に、私達家族を捨てるつもりなの?どうして?


 やっぱり納得できない!


 部屋から出ると、そのままグレイソン様の部屋へと向かったのだった。

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