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今度こそ穏やかに暮らしたいのに!どうして執着してくるのですか?  作者: Karamimi


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第74話:私の進む道は?

 色々と話をしていたら、すっかり暗くなってしまった。なんだか今日は、疲れたわ。まさか殿下にも1度目の生の時の記憶があっただなんて。その上、友人たちによって私の無念は晴らされていたのだ。


 あの女も殿下も、あの後悲惨な最期を遂げていたのだ。そしてグレイソン様は、私達家族を裏切っていなかった。彼は彼なりに、私達家族を大切に思ってくれていたという事も分かった。


 正直1度目の生の時、もっと踏み込んでグレイソン様と関わっていたら、もしかしたら最悪な最期を向ける事はなかったのかもしれないなんて、考えてしまう自分もいる。


 ただ、いくら1度目の生の事を考えても、どうしようもない。私は既に過去に戻り、2度目の生を生きているのだから。


 そんな事を考えているうちに、屋敷に着いた。


 馬車から降りると


「ルージュ、よかった。ずいぶん遅かったから、心配していたのだよ」


 私の元に駆け寄ってきたのは、グレイソン様だ。


「帰りが遅くなってごめんなさい。ちょっと先生に頼まれごとをしていたので、それで少し遅くなってしまいましたの」


「こんな遅くまで頼まれごとって、先生は一体何を考えているのだろう。明日先生に、抗議をしないと。いくら何でも、遅すぎる!」


 まずいわ、このままでは先生が、グレイソン様に怒られてしまう。というよりも、嘘がバレてしまう。


「実はその…殿下と少しお話をしておりまして。それで遅くなってしまいましたの。でも、大したお話ではありませんわ。ヴァイオレット様の事ですので、お気になさらずに」


「殿下とかい?殿下はルージュの事が、好きなのだよね?もしかして殿下と婚約を?」


「それはあり得ませんわ。殿下にははっきりと、“あなた様のお気持ちを受け入れる事は出来ません”と伝えてあります。ですので、どうかそんな悲しそうな顔をしないで下さい」


 グレイソン様が悲しそうな顔をすると、胸が締め付けられるのだ。それに1度目の生の時の真実を知ってしまった。グレイソン様はあの時、どんな気持ちで死んでいったのだろう。


 きっと相当無念だっただろう。あの時、お父様とお母様が泣き叫んでいた理由が、今ならわかる。なんだか無性にグレイソン様が愛おしくなり、彼をギュッと抱きしめた。


 温かい…


 この温もりを、これからもずっと守っていきたい。グレイソン様には、幸せになってもらいたい。


「ルージュ、急にどうしたのだい?でも、嬉しいよ」


 グレイソン様が抱きしめ返してくれた。なんだか無性に落ち着くのはなぜだろう。しばらくこのままでいたい…


「そろそろ屋敷に入ろう。その…もしかして殿下に何か言われたのかい?もし何か悩んでいるのなら…いいや、何でもないよ。お腹が空いているだろう?夕食にしよう」


 きっと殿下と何を話したのか、気になっているのだろう。グレイソン様の瞳からは、不安がにじみ出ている。彼にはこんな顔をして欲しくないのに。でも、本当の事は話せない。私達は今、2度目での生を生きています!だなんて…


 屋敷に入ると、両親も待っていた。


「随分と帰りが遅かったわね。グレイソンは夕食も食べずに、ずっとルージュの帰りを外で待っていたのよ」


「そうだったのですね、グレイソン様、ごめんなさい」


「僕が好きで待っていただけだから、気にしないでくれ。さあ、早く夕食を食べてしまおう」


 その後はいつも通り、夕食を頂いた。ただ、心なしかグレイソン様は、不安そうな顔をしていた。


 部屋に戻り、眠る準備を整えると、ベッドに入った。そして改めて今日の事を思い出す。ずっと疑問や違和感を覚えていたが、殿下の話を聞いて全て解消した。殿下がなぜ私に執着するのか、なぜあそこまでヴァイオレットを嫌うのかが理解できた。


 ただ…


 いくら殿下が後悔していて、今私に優しくしてくれていたとしても、1度目の生の時、殿下にされた仕打ちの記憶が消える訳ではない。正直今も、殿下の事を憎んでいる自分がいる。優しくされればされるほど、1度目の生の時の辛い記憶が、私を苦しめるのだ。


 殿下に振り向いてもらいたくて、必死に努力していた1度目の生の時の私。何を言っても私の言う事は信じてもらえず、いつも悪者にされていたあの頃。事実無根な悪事を理由に、婚約を解消されたあの日、私は殿下に愛想をつかし、彼の事はもう私の心から抹消したのだ。


 殿下の事を忘れ、平穏な生活を望んでいたあの頃。それすら奪い取り、薄暗い地下牢に入れられ、絶望した日々。目の前で両親を殺され、痛みと悲しみ、悔しさに打ちひしがれながら死んでいった1度目の生の時の私。


 あの時の絶望と痛みや悲しみは、今でも決して忘れない。


 あの時の日々を思い出し、涙が溢れでる。早く忘れたいのに、殿下とヴァイオレットがそれを許してくれない。


 私はこのまま、1度目の生の時の呪縛に囚われながら生きていかないといけないの?そんなのは絶対に嫌!


 だとすると、私の進む道は…

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