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今度こそ穏やかに暮らしたいのに!どうして執着してくるのですか?  作者: Karamimi


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第56話:殿下の事が気になるのですが

 翌日から、なぜかクリストファー殿下は、私の隣に座る様になった。そして必ず、私の好きなお料理を持ってきてくれるのだ。


 どうしてこうも、私の好きなお料理を毎回持ってこられるのだろう。私は殿下に、自分の情報を全く教えていないのに…


 そして私が嬉しそうに食べている姿を見みて、優しい眼差しで見つめているのだ。決して私の嫌いな食材が入っているお料理は勧めてこない。


 まるで私の好き嫌いを、熟知しているかのように…


 きっとたまたまだろう。そうよ、たまたまよ。そう自分に言い聞かせた。


 そんな中、今日は外で絵を描く授業だ。貴族の中には、絵を描く事を趣味としている人も多い。ただ、私は非常に絵を描く事が苦手なのだ。


 さて、今日は何を描こうかしら。出来れば簡単な絵がいいわ。そう思っていると


「ねえ、皆で学院の絵を描くのはどう?外から見た学院、とても素敵だと思わない?」


 そう提案してきてくれたのは、セレーナだ。まずいわ、この学院は非常に複雑な造りをしているのだ。こんなものを描いたら、きっと酷い出来栄えになる。でも、私は皆に、絵が苦手な事を伝えてない。


 どうしよう…


 そう思っていると


「そんな難しそうな絵、僕は御免だよ。ルージュ嬢、君の好きなキンシバイが咲いているよ。この絵を一緒に描こうよ。好きな絵を描いた方がいいだろう?」


「ちょっと、クリストファー、あなたは何なのよ。でも…確かに難しそうね。私も花の絵にしようかしら?」


「私も」


 さりげなく私をキンシバイの方に誘導してくれた殿下。殿下は絵が非常に上手で、学院の絵くらいなら、簡単に描き上げる事が出来るだろう。それなのに、あえて簡単な花の絵を描くように誘導してくれるだなんて…


 まるで私が絵を描く事が苦手な事を、知っているかのようだ。


 もしかして殿下も、1度目の生の時の記憶が?いいえ、きっとそんな事はないはずだわ。たまたまよ、そう、たまたま。


 もしかしたら前回私の描いた絵を見て、私が絵を描く事が苦手だと感じたのかもしれない。でも、前回の絵、そんなに酷かったかしら?私としては、力作だったのだが…


 クリストファー殿下のお陰で、何とか可愛らしいお花を描く事が出来た。お世辞にもうまいとは言えないが、そこまで酷くもない。よかったわ。


 これも殿下のお陰ね。


 授業の後は、皆で一緒に昼食を頂く。今日も天気がいいので、いつもの様に中庭で食事を頂いた。今日も殿下が、私の好きなお料理を準備してくれていた。


 本当にこの人、私の好みを熟知しているのだ。このまま胃袋を掴まれたりしないかしら?


 その時だった。


 モルモットたちが、大量にこちらに走って来たのだ。そして後ろには


「皆、すまない。そこの子たちを捕まえてくれ。私の大切なペットなんだ」


 先生が血相を変えて走ってきている。


「まあ、なんて可愛いの?見て、私の手の上に乗ったわ」


「本当ね、人懐っこくて可愛いわ。私、動物に触れたのは初めてよ。温かくて柔らかい」


「私もよ。本当に可愛いわ。王都で生活をしていると、動物と触れ合う機会なんてないものね」


 皆が一斉にモルモットを手にのせ、ほほ笑んでいる。でも私は、動物が苦手なのだ。昔クリストファー殿下と一緒に森に出掛けた時、野ネズミに噛みつかれてから苦手になった。


 どうしよう、こっちにもモルモットがやってきたわ。


 真っ青な顔をしていると


 私の元にたどり着く前に、次々とモルモットを回収していくクリストファー殿下。


「本当に可愛いね。僕なんてこんなに捕まえたよ。ほら、君もこっちにおいで」


 制服を入れ物にして、次々とモルモットを入れていく。さらに私の元に到達してしまったモルモットも、すぐに回収してくれた。クリストファー殿下のお陰で、何とか事なきを得た。


「ルージュ嬢、大丈夫かい?君は動物が苦手だから、怖かっただろう。もう大丈夫だよ」


 そう笑顔を向けてくれた殿下。どうして殿下は、私が動物を嫌いな事を知っているの?どうしてあなたは、私を庇ってくれるの?


 どうして私の事を、そんなに知っているの?あなたは私を嫌い、殺したくせに…


 でも、なぜだろう。殿下が気になって仕方がない。あなたはいったい何者なの?


 聞きたい事が山ほどある。でも、そんな事を聞く勇気はない。


 ただ、今の彼と一緒にいると、1度目の生の時、まだ仲が良かった日の事を思い出し、胸が締め付けられるのだ。貴族学院に入る1年程度の時間だったが、それでも私は確かに幸せだった。


 何度あの時に戻りたいと願ったか…


 でも…


 私は殿下に嫌われ、家族と共に葬り去られたのだ。あの時の悲しみや苦しみ、無念さは今でも忘れられない。だからいくら優しくされても、油断してはいけないのよ。


 そうよ、私は何を考えているの?また同じ過ちを繰り返すつもり?彼はただのクラスメイト、それ以上でもそれ以下でもない。


 その事だけは、忘れてはいけないのよ。


 そう何度も自分に言い聞かせたのだった。

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