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第44話:真実は映像の中にあります

「ぼ…僕は本当に、ルージュ嬢のメイドが教室から出ていくのを見たんだよ」


「僕だって見たよ。凄い勢いで走って出て行ったから、印象に残っているのだよ」


 必死に訴える令息たち。


「それは一体何時ごろだい?」


「大体17時ごろかな?」


 17時ごろか…私が色々と考え事をしていた時間だわ。それにグレイソン様も、まだ騎士団の稽古をしていた時間だ。誰もアリーの無罪を証明する事は出来ない。


「とにかく、今すぐルージュ嬢のメイドをここに…」


「本当に家のメイドが、その様な事をしたのでしたら、その時はメイドを厳しく処罰いたします。どうしてその様な事をしたのか、徹底的に調べ上げ、原因を追究し、適切な対応を取ります。ただし、もしも虚偽の証言をしていたとしたら、その時はもちろん、それなりの対応をさせていただきますが、よろしいですか?」


 グレイソン様が今まで見た事のないほど、鋭い眼差しで令息たちを見つめていた。グレイソン様はきっと、アリーの無罪を信じているのだろう。でも、アリーは男爵令嬢だ。もしも私の命令だったとしても、侯爵令嬢でもあるヴァイオレット様の私物を壊したとなると、厳しい処罰が下されるだろう。


 もしそうなったら、私がアリーに命令したという事にして、私が罪を被ろう。そもそも、完全に油断していた私が全て悪いのだ。あの女は、本当に恐ろしく血も涙もない女なのに…


 1度目の生の時、どんな思いで大切な家族を殺され、無念の死を遂げたか…あの時の痛みや悲しみ、苦しみをすっかり忘れ、一瞬でもあの女を信じた私が、愚かだったのだから…



 よし!


「あの…」


「先生、この教室には、監視用のカメラを設置して頂いたのでしたね。その映像を分析すれば、本当に家のメイドがヴァイオレット嬢の教科書やノートを破り、落書きしたかが分かります。すぐに調べましょう」


 監視用カメラを設置?一体どういうことなの?訳が分からず、グレイソン様の方を向いた。周りも騒めき始めている。


「実は入学式の時のいざこざがあった後、グレイソン殿に“万が一またこのような事があるといけないので、教室に監視カメラを設置して欲しい。そうすれば証拠が残るから”と、言われまして。学院長先生や他の先生方、それからクリストファー殿下とも相談して、監視用カメラを付ける事にしたのです。ただし、その映像を確認するときは、何か事件が起こった時と決めてあったのですよ。この教室だけでなく、全ての教室に設置されています」


 何と、グレイソン様がそんな提案をしていただなんて。


「それじゃあ、早速映像を見てみましょう。すぐに真犯人が分かるはずですよ」


 グレイソン様が、ニヤリと笑ったのだ。


 そして、映像が映し出された。どうやら昨日の授業風景の様だ。ドンドン早送りしていく。そして放課後、教室には誰もいなくなった。


 いよいよここからが本番だ。


 しばらくすると、アリーを見たという令息が1人で入って来た。辺りをキョロキョロ見ている。しばらくすると、ヴァイオレットも教室に来たのだ。


 “ヴァイオレット嬢、僕が見張っているから、早く”


 そう言うと令息が、教室の扉の前に立ちだした。


 そしてヴァイオレットが足早に自分の席に行くと、教科書を自らびりびりに引き裂き、落書きを始めたのだ。


 それもニヤニヤ笑いながら…


 この子、頭がおかしいの?自分の教科書をニヤニヤしながら破るだなんて…


 全て破り終わると


 “ありがとう。準備は整ったわ。あなたは明日、ルージュの使用人が教室から出ていくのを見たと証言してくれたらいいから”


 令息の男性の首元に手を回し、自らの唇を令息の唇に合わせている。ちょっと、何をしているの?この2人は…


「止めてくれ。頼む」


「お願い、止めて」


 令息とヴァイオレットが叫んでいるが、もちろんやめる訳がない。騒ぐ2人を、他の令息たちが取り押さえている。


 一通り口づけが終わると、令息は去って行った。ただ、ヴァイオレットは教室から出て行こうとしない。するとしばらくすると、もう1人の令息がやって来たのだ。


 “遅くなってごめんね、ヴァイオレット嬢。それで僕はどうすればいいのだい”


 嬉しそうにヴァイオレットに抱き着く令息。


 “あなたには明日、ルージュの使用人が教室から出ていくのを見たと証言して欲しいの”


 “分かったよ。ヴァイオレット嬢の為なら、お安い御用だ。でも、なんでそこまでルージュ嬢を嫌うのだい?あの子、とてもいい子なのに”


 “あら、あの女はいつも私を虐めてくるのよ。あなたにも何度も話したでしょう?あなたは私の味方よね?”


 “ああ、もちろんだ。僕はいつでもヴァイオレット嬢の味方だから”


 そう言うと、口づけをしていた。こんな風に、2人のも令息と口づけをかわすだなんて!我が国では、そう言った行為に非常に厳しいのだ。婚約者ではない異性とその様な行為をするだなんて、考えられない。


 あまりの衝撃映像に、私は完全に固まってしまった。

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