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第41話:もしかして性格が変わったの?

 午前中の授業が終わった後


「ルージュ様、一緒に昼食を頂きましょう。今日は天気がとてもいいので、中庭なんていかがでしょうか?」


 満面の笑みで私の方にやって来たのは、ヴァイオレットだ。一瞬引きそうになるのを必死に堪え


「私でよろしければ、ご一緒させていただきたいですわ。私の友人たちもご一緒してもよろしいですか?」


「ええ、もちろんですわ。私、皆様と仲良くしたいと考えておりますの。ぜひよろしくお願いいたします」


「それじゃあ、皆で中庭に行きましょう」


 どうして私が、一番関わりたくはないこの女と一緒にご飯を食べる事になっているのかしら?でも、あんな顔で来られたら、断る事なんて出来ない。


 もしかしたら、私の友人たちに取り入って、私を孤立させるつもりとか?ついそんな事を考えてしまう。


 中庭に着くと、それぞれが席に座った。ちなみに貴族学院には、皆お弁当を持って来ることになっている。お弁当と言っても、午前中の授業が終わる寸前に、使用人がお弁当を学院に届けてくれるため、出来立ての温かいお料理を頂く事が出来るのだ。


 そしてすぐに各使用人が、お弁当を食べられる様に準備をしてくれる。貴族学院には、使用人を1人世話役として、一緒に連れてくることが出来るのだ。私にはアリーが付いて来てくれている。


「ルージュ様のお弁当、とても美味しいそうですわね。そのフォアグラとお肉のステーキ、とても美味しそうですわ…申し訳ございません。私ったら」


 恥ずかしそうにヴァイオレット嬢が頭を下げている。


「そんなに気に入って頂けたのでしたら、どうぞお召し上がりください」


 そっと彼女のお弁当の空いているスペースに入れてあげた…て、私は何をしているの?ついお節介の癖が出てしまったわ。万が一毒が入っていると騒がれたら大変なのに!


 そう思ったのだが…


「よろしいのですか?それでは1口…なんて美味しいのでしょう。こんなに美味しいお料理は初めてです。そうですわ、私のお弁当も食べて下さい」


 さあ、どうぞ。と言わんばかりに、いくつかのお料理を乗せてくれた。早く食べて下さいと言わんばかりに、目を輝かせて見てくる。


 何なの、この子。本当に何を考えているの?


 それでも、せっかく頂いたのだ。食べない訳にはいかない。そう思い、お料理を頂いた。


「とても美味しいですわ。特にこのお肉のソースが絶品です」


「そのソース、フルーツをベースに作っているのですよ。さっぱりしていて食べやすいでしょう。ルージュ様に褒めていただけるだなんて、嬉しいですわ」


 この世のものとは思えない程、可愛らしい笑顔を向けるヴァイオレット。何なのよ、この子。どうしてこんな可愛い顔をするの?もしかして、何かの拍子に、本当にいい子になったの?


 でも、私たちを殺した女なのよ。そんなに簡単に信じていいの?いい訳ないわ。それなのに、どうしてこんなに可愛らしいのよ…


 完全に頭がパニックになる私に、ヴァイオレットはセレーナ達にも同じ様にお弁当を交換して、あっと言う間に彼女たちとも打ち解けていた。本当にこの子、人の心を掴む天才なのかもしれない。


 この私ですら、もしかしたらヴァイオレットはいい子なのかもしれないと、錯覚させられてしまうほどに…


 正直この子の考えていることがよくわからない。


 混乱する私を他所に、この日からヴァイオレットは、私たちと一緒に行動する様になったのだ。いつも笑顔を絶やさず、時に甘えてくるヴァイオレットは、いつの間にか私たちのグループの妹的存在になって行った。


 もちろん、私を睨むことは無くなったのだ。


 最初は令嬢だけで食べていたお弁当も、グレイソン様やアルフレッド様、さらになぜかクリストファー殿下まで加わって、皆で食べる様になったのだ。


 1度目の生ではほとんど話すことがなかったヴァイオレット。初めてこんな風に話しをして気が付いたことがある。それは、彼女は本当に人懐っこくて可愛い子だという事だ。


 もしかしたら、本当にヴァイオレットは、性格が変わったのかもしれない。そう思うほど、私たちに対して好意的になったのだ。


 ただ、なぜかクリストファー殿下だけは、怪訝そうな顔でヴァイオレットを見つめていた。どうしてクリストファー殿下が、そこまでヴァイオレットを警戒しているのかさっぱりわからない。


 それでもヴァイオレットに話し掛けられれば、普通に対応はしている。多分すっかりヴァイオレットを気に入っているセレーナに、“ヴァイオレット様に冷たくするなら、クリストファーとは一緒に食事をしないわよ”と言われた事を気にしているのだろう。


 正直まだヴァイオレットの事は信用できないが、それでももしかしたら、もう彼女は何もしてこないかもしれない。心のどこかで、そんな油断が出てきてしまっていたのだった。

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