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第36話:久しぶりのご対面です

 しばらく進むと、懐かしい貴族学院が見えて来た。私は2年生の長期休みの間に、婚約解消と国外追放を言い渡されたのだ。


 長期休みの前の日、友人たちは皆領地で過ごすと言っていた為、あの日を最後に私はひっそりと一度目の生に幕を下ろしたのだ。


 再び皆と再会し、楽しい時間を過ごしてきたが、学院を見るとどうしても1度目の生の時を思い出してしまう。


「ルージュ、また考え事をして。学院に着いたよ。行こう」


「ごめんなさい。さあ、行きましょう。今日から貴族学院での生活、楽しみですわね」


「そうだね、ただ…ルージュはあまり楽しそうには見えないけれどね」


 あら?私、そんなに不安そうな顔をしていたかしら?いつの間にか、すっかり私の事を理解したグレイソン様。私の事は何でもお見通しの様だ。


「正直殿下に会うのは少し不安ですが、グレイソン様や友人たちもいてくれるので、大丈夫ですわ。せっかくなので、学院生活を目いっぱい楽しみたいです」


「それならいいのだけれど…会場は大ホールで行われるらしいね。行こうか」


「はい」


 2人でホールに向かって歩き出した時だった。


「おはよう、ルージュ、グレイソン様」


「やっと来たわね、遅いわよ」


「グレイソン、ルージュ嬢、今日からよろしくな」


 私達の元にやって来たのは、友人4人とアルフレッド様だ。どうやら私が来るのを待っていてくれた様だ。


「おはよう、皆。もしかして待っていてくれたの?嬉しいわ。皆でホールに向かいましょう」


 友人たちに囲まれ、ホールに向かった。そして皆で席に着く。既にたくさんの貴族たちが来ていたが、何とかまとまって座る事が出来たのだ。よかったわ。


 ふと前の方を見ると、こちらを見ているクリストファー殿下と目があった。その瞬間、にっこりとほほ笑まれたのだ。とりあえず会釈だけして、視線をそらした。


 ただ、その視線をそらした先にいたのは…


「ヴァイオレット…」


 桃色の髪を腰まで伸ばした令嬢、ヴァイオレットが1人で座っていたのだ。その姿を見た瞬間、体中から怒りが沸き上がって来た。あの女のせいで、私たちは…


「ルージュ、そんなに怖い顔をしてどうしたの?ヴァイオレットって…ああ、あの子はファウスン侯爵家のヴァイオレット様ね。確か体が弱く、ずっと領地で療養していたと聞くわ。貴族学院入学に合わせて、王都に戻って来たそうよ。それにしても、可愛らしい子ね」


 そう言ってミシェルが微笑んでいる。ミシェル、あの女は見た目は可愛いけれど、本当に性悪女なのよ。決して近づいてはいけない、危険な女!何てことは、とても言えない。


「確かに可愛らしい令嬢だけれど、僕はルージュの方がずっと可愛いと思うよ」


「確かにマリーヌの方が可愛いな」


 そう言ってグレイソン様とアルフレッド様が笑っていた。グレイソン様、今笑っているけれど、あなたは1度目の生の時、あの女に心を奪われ、私たち家族を裏切ったのよ!


 そう言いたいが、もちろん言える訳がない。


「皆様、お静かに。今から第126回、貴族学院入学式を始めます。まずは学院長先生の挨拶からです」


 あの先生、懐かしいわ。それに学院長先生も。相変わらずお優しそうな顔をしていらっしゃる。久しぶりに見る学院の先生たちを見ていると、胸が締め付けられる。先生たちとも、ろくにお別れを言えなかったのだ。


 また先生たちにお勉強を教えてもらえると思うと、なんだか嬉しい。


 学院先生の話の後は、新入生代表のクリストファー殿下の挨拶だ。前日遅くまで、クリストフファー殿下は挨拶の練習をしていた。そんな彼を勇気づけるために、私も前日は夜遅くまで王宮で殿下の練習に付き合ったのだったわ。


 懐かしいわね。きっと殿下、昨日は必死に新入生代表の挨拶の練習をしていたのだろう。あの人は少し不器用なところがある。それでも必死に頑張る殿下の事が好きだった。彼をもっと支えてあげたい、そんな思いで必死に頑張って来たのだけれど…それがいけなかったのかな?


 いつの間にか私は、殿下の負担になっていたのかもしれない。そうで無ければ、いくら好きな令嬢が出来たからと言って、根はやさしい殿下があそこまで私たちに酷い仕打ちをするなんて考えられない。


 て、私は何を考えているのかしら?殿下は私達を死に追いやった相手なのに…どんな理由であれ、やっぱり彼のやった事は許せない。


「ルージュ、入学式が終わったわよ。クラスに行きましょう。多分私たちは皆、同じクラスよ。ただ、クリストファー殿下も一緒だろうけれど…」


 そう言って苦笑いしているメアリー。他の皆もなんとも言えない顔をしている。


「皆、心配をかけてごめんね。でも、もう大丈夫だから。ほら、クラスに行きましょう。私、皆と過ごす学院生活を楽しみにしていましたの」


 1度目の生の時は、なんだかんだ言って王妃教育の為、毎日王宮に出向かなければいけなかった。でも今回は、比較的毎日自由だ。1度目の生では出来なかった事を、目いっぱい楽しみたい。


「私も学院生活を楽しみにしていたのよ。毎日皆に会えるだなんて、本当に最高よね」


「本当ね。毎日一緒にお勉強をして、一緒に昼食を頂く。放課後はお茶をしたりしましょうね」


「いいわね、考えただけで楽しそう」


 これから始まる学院ライフに、皆胸弾ませている様だ。もちろん私も…ただ、あの2人だけは警戒しないと。

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