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第32話:僕が犯した最大の過ち4~クリストファー視点~

 それだけではない、裁判長を父に持つミシェル嬢は、自らの手でルージュの無念を晴らしたいと、父と兄の手を借りつつ調査に乗り出した。その結果、ルージュがヴァイオレットを傷つけたという事実はないと証明された。さらにグレイソンのヴァイオレット誘拐事件だが、実はヴァイオレットがグレイソンをそそのかしていたことが判明した。


 その音声の内容も公表されたのだ。


 “このままだと私は、クリストファー様と結婚させられてしまう。私が愛しているのは、グレイソン様だけ。どうか私と一緒に隣国に逃げましょう!”


 “僕は今の家族から、沢山の愛情をもらった。そんな彼らを裏切る事なんて出来ない”


 “こっそりと国を出たらいいのです。大丈夫です、公爵様たちには迷惑を掛けないように、上手くやりますから。私を信じて下さい”


 “…分かったよ。本当に義父上や義母上、ルージュには迷惑が掛からないのだよね?”


 “ええ、大丈夫ですわ”


 僕も会話の内容を聞いたが、明らかにヴァイオレットが誘っていたのだ。どうやら元公爵家の使用人が何かあった時の為にと、録音していたらしい。公爵たちが捕まった時、必死にこの音声をもって王宮にやって来ていたらしいが、門前払いをくらっていたとの事。


「私がこの音声をきちんと伝えていれば、旦那様・奥様、お嬢様やおぼちゃまは命を落とすことはなかったのです。私のせいで…」


 そう泣き叫んでいたらしい。


 そんな中、父上と母上が帰国したのだ。


「クリストファー、お前はなんて事をしてくれたのだ。お前の失態は、隣国にも知れ渡っている。特にセレーナの嫁ぎ先でもあるカラッソ王国の王太子殿下が、今回の事件にたいそうご立腹だ。我が国との取引を辞めるとまで言い出している」


 どうやらセレーナが婚約者でもある隣国の王太子に、泣きながら全てを話したらしい。


 完全に僕たちは間違っていたのだ…


 僕は無実の罪で、ルージュと彼女の家族を殺してしまったのだ。


 僕は間違いなく、ルージュを愛していたはずなのに…


 “クリストファー様は少しお優しすぎるのです。でも、私はそんなお優しいクリストファー様が大好きですわ。大丈夫です、2人で乗り越えていきましょう”


 僕が落ち込んでいると、そう言って笑顔で慰めてくれたルージュ。僕は彼女の笑顔が大好きだった。僕がこの笑顔をずっと守っていきたいと思っていたのに…


 ルージュを失って、初めて彼女がいかに僕にとって大切な存在なのかを、実感するだなんて…


 僕は本当に大バカだ。出来る事ならまた、ルージュに会いたい。でも彼女は、もういない。彼女を殺したのは、僕だ。悔やんでも悔やみきれない。


 そんな中、当のヴァイオレットは


「誰がなんと言おうと、私は王太子でもあるクリストファー様の婚約者なのです。いくら貴族どもが騒いでも、無意味ですわ。クリストファー様、生意気な貴族たちを処罰してください」


 そんなふざけたことを、当たり前のように言っているのだ。僕はどうしてこんな愚かな女を愛してしまったのだろう…


 ルージュを慕っていた王宮使用人たちは、次々に辞めて行ってしまった。騎士団も壊滅状態。裁判長は僕とヴァイオレットを裁判にかけるため、着々と準備を進めている。


 その上


「陛下、私たちはもうあなた様に忠誠を誓う事は出来ません。もちろん、クリストファー殿下にもです。あなた達にこの国を任せる事は出来ません!陛下の国王はく奪と、クリストファー殿下の廃嫡を要求します。ここにこの国の貴族の3分の2以上の署名もあります」


「待ってくれ、スリラー公爵。どうか考え直してくれ」


「何を考え直すのですか。この署名は、我が娘メアリーの亡き親友への想いが詰まった大切な署名です。それに私自身、ヴァレスティナ公爵にはとてもお世話になりました。彼は本当に素晴らしい公爵だった。それをあなた達は…とにかく私は、娘の強い思いを受けて今、この場に立っているのです!」


 他の貴族たちも、強く頷いている。どうやらメアリー嬢自ら貴族の家に足を運び、署名を集めたらしい。


「父上、僕は彼らの想いを受け入れます。それに僕は…間違いなくルージュを愛していました。それなのに、己の醜い嫉妬心から別の令嬢にうつつを抜かし、その上ルージュとその家族を…僕の様な人間が、国王になっていい訳がない…どうか僕を廃嫡してください」


 己の弱さから、僕は罪もない人間を殺してしまったのだ。その報いを受けるのは当然だ。


「クリストファーの気持ちは分かった。スリラー公爵や他の貴族の想いを受け入れよう。私は国王の座から退き、次の国王には、弟に譲る事にするよ…」


 こうして僕たちは、王族を退く事になった。これは当然の報いだろう。

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