表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/124

第31話:僕が犯した最大の過ち3~クリストファー視点~

 最後にルージュの無様な姿を拝もう。そう思い、地下牢へと向かった。小汚い服を着せられたルージュが、薄暗い地下牢に閉じ込められていた。


 僕は満面の笑みで、彼らの行く末を話してあげた。さすがのルージュも絶望から泣き叫ぶだろう。もしかしたら命乞いをするかもしれない。もし命乞いをしたら、ルージュだけは助けてやってもいいかもしれない。


 一応僕は、彼女を愛していたのだ。元婚約者として、情けを掛けてやってもいいかと思ったのだが…


「そうですか、承知いたしました。でも、私は何も悪い事はしておりません。クリストファー殿下、神様はきっとあなた様の行いを見ております。どうかあなた様も、後悔しない日々をお過ごしください」


 そう言うとニヤリと笑ったのだ。この女、何を言っているのだ?自分たちが悪いことしたのに。


 ただ、ルージュの瞳を見た瞬間、一気に胸が苦しくなり、その場を急いで立ち去った。何なんだろう、この感じは。僕は悪くない、悪いのはルージュだ。


 その後グレイソンは処刑され、ルージュたち家族は隣国へと送られた。これで全て終わった。もう大丈夫だ。


 でも、その日から僕は、なぜかルージュの夢を見る様になった。夢の中のルージュは、いつも寂し気で、それでも僕を見るとにっこりと笑うのだ。彼女の元に向かおうとするが、決してルージュに触れる事が出来ない。


 ルージュ、今頃どうしているのだろう。無一文で他国に放り出されて、生きていけるのだろうか?急にルージュの事が心配になって来た。


 だが、もう後戻りはできない。それに僕はやっと愛するヴァイオレットを手に入れたのだ。ただヴァイオレットは僕と婚約した途端、非常に我が儘になった。


 気に入らない使用人には怒鳴りつけ、時に物を投げて傷つける事もあった。そのせいで、使用人たちが何人も辞めて行ったのだ。


 さらに始まったばかりの王妃教育も、1日で音を上げる始末。教育係を買って出てくれた侯爵夫人には


 “私にはとても彼女の教育係は務まりません。どうか別の方を当ってください”


 そう言われる始末。


 その上領地で過ごしていたルージュの友人たちが、ルージュが国外追放にされたと聞きつけ、続々と戻って来たのだ。


「クリストファー、あなたがろくでもない人間という事は知っていたけれど、ここまで人でなしだとは思わなかったわ。ルージュを…私の大切な親友を返してよ!今すぐ返せ!!」


 今まで涙なんて見たことがなかったセレーナが、泣き叫んでいた。


「クリストファーもヴァイオレットも、絶対に許さないから!地獄に叩き落してやる!!」


 そう叫び、部屋から出て行った。怒りをあらわにしたのは、セレーナだけではない。騎士団長を父に持つマリーヌ嬢は、婚約者のアルフレッドと父親の手助けの元、今回の処罰に関わった騎士団員たちの事情聴取に乗り出したのだ。


 その結果、ルージュとその家族は、騎士団員たちの手で殺されていたことが分かった。親友を失ったマリーヌ嬢の悲しみはすさまじく、食事も喉を通らない程衰弱していると聞く。


 騎士団長やアルフレッドからは、かなり激しく抗議を受けた。ただ僕は、ルージュを国外に追放しろとは言ったが、殺せとは言っていない。どうやらヴァイオレットの指示だった様だ。


 ルージュがまさか、殺されていただなんて…


 僕はその事実を聞いた時、泣き崩れてしまった。分かっている、僕がルージュを国外追放にしろと命令したのだ。無一文の貴族が、身一つで国外に追放されたら遅かれ早かれ命を落とすことぐらいわかりきっていた事だ。


 それでも心のどこかで、生きていて欲しい、そう願っていたのだ。それなのにまさか殺されていただなんて。


 僕は騎士団長に頼み込み、ルージュが殺された場所を教えてもらおうと思ったが…


「あなた様がそれを聞いて、どうするおつもりですか?申し訳ございませんが、ルージュ嬢や公爵、夫人が殺された場所は、あなた様には教えられません」


 目に涙を浮かべて、そう言い放った騎士団長。騎士団長は、娘の大切な親友の命を自分が管理する騎士団員が奪ってしまった事を酷く悲しみ、早々に辞任を表明。同じく自分にとっても大切な友人でもあり、婚約者の親友を奪った騎士団なんかにいたくないと、アルフレッドまでも騎士団を辞めたのだ。


 彼らの辞任によって、次々と騎士団員が辞めて行った。そのせいで騎士団は、全く機能しない状態に陥ったのだ。その上、今回の件に関与した騎士団員は、自責の念から精神的な病気を患うものまで現れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ