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第22話:私の勝ちです

「お嬢様、どこにいかれるのですか?」


 夕方、部屋から出て行こうとしている私にアリーが叫んだ。


「そろそろグレイソン様が帰って来る時間でしょう。お迎えに行くのよ。アリー、もうバカな事はしないから、安心して頂戴」


 そう伝えても、私は信用できませんと言わんばかりの目で、私を見つめるアリー。本当にアリーったら。


 とにかくグレイソン様をお迎えに行かないと。そう思い、玄関へと向かった。既にお母様も待っていたが、プイっとあちらの方を向いてやった。


 その時ちょうどグレイソン様を乗せた馬車が、公爵家の中に入って来たのだ。


「グレイソン様、おかえりなさい。今日も疲れたでしょう?」


「ルージュ、義母上、ただいま戻りました。あれ?ルージュ、何だか顔が赤くないかい?それに手も熱いよ。熱があるのではないのかい?」


「え?熱ですか?そういえば、なんだか体がだるい様な…」


「これは大変だ。すぐに部屋に戻ろう」


 グレイソン様が軽々と私を抱きかかえると、屋敷に入って行った。いつの間にか私より大きくなったグレイソン様。こんなに軽々と私を抱き上げるだなんて、やっぱりグレイソン様も男性なのね。


 て、感心している場合ではない。


 もしかして、あの水浴びのお陰で熱が!


 私の部屋に着くと、グレイソン様がベッドに寝かせてくれた。


「義母上、やっぱりルージュの体、かなり熱いです。すぐに医者の手配を」


「ええ、分かったわ」


 お母様がすぐにメイドに指示を出している。なんだか急に体がだるくなってきた。頭もボーっとするし。これはやっぱり、風邪かしら?


「可哀そうに、風邪をひいてしまったのだね。もうすぐ医者が来るからね」


 グレイソン様が心配そうに私の頭を撫でている。


「グレイソン、ルージュは明日のお茶会に行きたくなくて、冷たい水で水浴びをしていたのよ。それも服を着たまま。本当にいつからこんなおバカな子になってしまったのかしら?」


 はぁっとお母様がため息をついている。なんと言われようと、熱が出たのだ。きっと明日のお茶会は欠席で確定だ。さすがに熱があるのに、お茶会にいけだなんてことは、言わないだろう。


「ルージュ、君は一体何を考えているのだい?冷たい水を急に浴びたら、心臓がびっくりして止まってしまう事もあるのだよ。いくら明日のお茶会が嫌だからって、やりすぎだよ」


 グレイソン様にまで怒られてしまった。でも、熱が出たのだから、結果オーライだ。


「ただ…ルージュがここまでして明日のお茶会に行きたくないだなんて、きっと何か理由があるのだろう。義母上、明日のお茶会は僕だけで参加します。だからどうか、ルージュはゆっくり休ませてあげてください」


「そうね、熱が出てしまったのだから、仕方がないわね。本当にルージュは…王妃殿下には丁重に謝罪の手紙を送っておくわ」


 再びお母様がため息をついている。


 やったわ!これで私は、明日のお茶会に出なくていいのね。


「ルージュ、嬉しそうだね。でも、どうか今度からはこんな無謀な事はやめて欲しい。ルージュにもしものことがあったらと考えると、僕の心臓が持たないよ。分かったね」


「ええ、分かりましたわ。グレイソン様、明日は私の分まで存分に楽しんできてくださいね」


 満面の笑みでそう答えた。


 その後お医者様の診断を受けたのだが、やはり風邪との事で、温かくして寝ていればよくなるだろうと言われた。


 さすがに熱が上がって来て辛かったのだが、なぜか甲斐甲斐しくグレイソン様が看病してくれたのだ。


 食事を食べさせてくれたり、氷まくらを変えてくれたり、汗を拭いてくれたりと本当に良くしてくれた。


 そんなグレイソン様に、つい私も甘えてしまう。今まではどちらかというと、弟みたいな感じだったが、今はお兄様みたいだ。


 結局この日は、グレイソン様に甘えて、色々とお世話をしてもらったのだった。


 翌日、残念ながらすっかり熱は下がってしまった。熱が下がったのなら、お茶会に参加しろと言われるのかと思ってひやひやしたが、グレイソン様が“まだルージュは病み上がりだから、どうか休ませてあげて欲しい”と両親に頼んでくれたお陰で、私は家で療養する事になった。


 本当にグレイソン様には感謝しかない。


「それじゃあルージュ、行ってくるけれど、君は家でゆっくりしているのだよ。分かったね」


「ええ、分かっていますわ。グレイソン様、ありがとうございます。王宮のお料理はとても美味しいので、沢山食べて来てくださいね」


「えっ?ルージュは王宮の料理を食べたことがあるのかい?」


 しまった!つい1度目の生の時の記憶を語ってしまったわ。


「いえ…きっとおいしいのだろうと思っただけですわ」


 オホホホホッと言わんばかりに、ごまかしておいた。


「そういう事か。せっかくだから王宮の料理を沢山いただいてくるよ。それじゃあ、行ってきます」


「気を付けて行ってらっしゃいませ」


 笑顔でグレイソン様に手を振った。グレイソン様が殿下と恋仲になる事はまずないし、ヴァイオレットはまだ領地にいるはずだし、何よりもアルフレッド様達もいるからきっと大丈夫だろう。


 笑顔でグレイソン様を見送ったのだった。

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