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第118話:ヴァイオレットが学院に戻ってきました

 私達の婚約披露パーティも無事に終わり、ホッとしたのも束の間、今日はヴァイオレットが学院に戻って来る日だ。


 いつもの様に制服に着替え、学院に行く準備をする。


「ルージュ、今日からまたヴァイオレット嬢が、学院に戻って来るね。それにしても、2度も謹慎になるだなんて、とんでもない令嬢だ。とにかく、ヴァイオレット嬢には近づかない方がいい」


「ええ、分かっておりますわ。ただ、さすがにヴァイオレット様も、もう私に何かしてくることはないでしょう。何をしてもすぐにバレてしまうのですから」


「そうだといいのだけれど、なんだか心配で…」


 グレイソン様が心配そうに呟いている。


「グレイソン様、学院に着きましたわ。私達はいつも通り過ごせばいいのです。それでは参りましょう」


 グレイソン様と一緒に、教室へと向かう。すると、ヴァイオレット様は既に学院に来ている様で、自分の席に座って大人しくていた。


 私達の姿を見ても、特に何も言ってこない。


「ヴァイオレット嬢の事だから、何かしらアクションを起こして来るかと思ったけれど、特に何もしてこないね。おかしいな?何か企んでいるのかな?」


 不思議そうな顔で、グレイソン様がヴァイオレットを見ている。


「グレイソン様、向こうが何もしてこないのであれば、いいではありませんか。さあ、私たちも席に着きましょう」


 向こうが何もしてこないのなら、あえてこちらから絡む必要もない。そう思い、私たちも席に着いた。


 しばらくすると、先生がやって来て


「今日からヴァイオレット嬢も復帰しましたね。ヴァイオレット嬢、もう問題を起こさないで下さい」


 先生がヴァイオレット様に向かって、そんな言葉を投げかけた。すると


「はい、分かっておりますわ。先生もクラスの皆様も、散々ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした」


 そう言うと、スッと立ち上がり、皆に頭を下げたのだ。珍しい事もあるものね、あの子が頭を下げるだなんて…


 そういえば入学式翌日も、同じように私たちに頭を下げて来たような…


「ヴァイオレット嬢も反省している様ですね。それでは、授業を始めましょう」


 いつも通り授業が始まった。


 “ねえ、今日のヴァイオレット様、なんだか雰囲気が違う気がしない?なんかいつもより、落ち着いているというか…”


 小声で話しかけてきたのは、マリーヌだ。


 “確かにいつもと雰囲気が違うわね。ある意味不気味だわ”


 “もう、ルージュったら。もしかしたら本当に反省したのかもしれないわね”


 そう言ってクスクス笑っているマリーヌ。でも私は、あの女の恐ろしさを誰よりも知っているつもりだ。あの女は反省なんてしてない。


 絶対に!


 授業が終わり、休憩時間になった。相変わらずヴァイオレットは、自分の席から動こうとしない。


「ねえ、今日のヴァイオレット様、様子が変じゃない?いつもなら殿下かグレイソン様に必ず絡みに行くのに、全く席から動かないわよ」


「2回も謹慎になったのですもの。さすがに大人しくしていようと思ったのじゃない?ヴァイオレット様が大人しくしてくれているなら、よかったじゃない」


「そうね、これで私たちのクラスも、やっと平和になるわね」


 セレーナとメアリーがそんな話をしていた。


 そしてお昼休み、今日もクラスの皆と一緒に、昼食を頂く。最近皆で食事をする事が多いのだ。


 皆で食べられる様に、今日もメイドたちが机を動かしてくれた。そしてそれぞれ自分の席に座る。すると


「あの…皆様、今までご迷惑をおかけして、本当にごめんなさい。私は周りが見えておりませんでしたわ」


 急にヴァイオレットが皆に向かって、頭を下げたのだ。そして


「こんな私ですが、どうかまた、皆様のクラスメイトとして仲良くしてください。お願いします」


 真剣な表情で訴えるヴァイオレット。そんな彼女を見て、皆が顔を見合わせている。


「あの…こんなもので許されるとは思っておりませんが、料理長に頼んで、お菓子を焼いてもらいましたの。我が家の領地で採れた、最高級の小麦を使ったマフィンです。宜しければどうぞ」


 そう言いながら、皆にマフィンを配り始めたのだ。1つ1つ丁寧にラッピングしてあり、とても美味しそうだ。


「ヴァイオレット嬢がそこまで言うのなら、頂くよ」


 1人の令息が、マフィンを1口。


「うまいよ、このマフィン。生地がしっとりしていて、甘さもちょうどいい」


 令息の言葉につられ、他のクラスメイト達もマフィンを食べ始めた。


「確かにとても美味しいですわ」


「本当ですね、美味しいです」


「皆様のお口にあってよかったですわ。こんなもので許されるとは思っておりません。ですが、どうか私の気持ちを理解して頂けると嬉しいです」


 そう言うと、ヴァイオレットが笑顔を向けたのだ。


「確かにこのマフィン、美味しいわね」


「うん、美味しいわ。でも、こんなもので今までの事を水に流せというのは無理だけれどね」


「そうよね、でも、ヴァイオレット様。本当にこの1ヶ月で、反省したのかもしれないわね」


 友人たちも、マフィンを絶賛している。


「ルージュ様、今まで本当に申し訳ございませんでした。どうかルージュ様も、マフィンを食べて下さい。とても美味しいですよ」


 ヴァイオレット様が、笑顔で私にマフィンを勧めてきたのだ。

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