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第114話:またヴァイオレットが…

 その日のお昼休み。今日はクラスの皆と一緒に、教室で食事をする事になったのだ。せっかく同じクラスになったのだから、皆一緒に昼食を食べようという話になった。


 早速使用人たちが、皆で食べられる様に机を移動してくれた。


 皆で昼食だなんて、初めてね。なんだかワクワクしてきたわ。でも、その前に…


「ちょっとお手洗いに行ってくるわね」


 楽しい食事の前は、やっぱりお手洗いにいっておかないと。そう思い、1人でお手洗いに向かう。お手洗いは階段を降りてすぐの場所にあるのだ。


 小走りで階段を降りようとした時だった。


 ドン!


 誰かに背中を押され


「キャァァァァ」


 勢いよく階段から転げ落ちていく。


「ルージュ様、大丈夫ですか?」


 近くにいた生徒たちが、私に駆け寄ってきてくれた。


「ええ、大丈夫ですわ。ただ、足をひねってしまった様で…」


 どうやら階段から転がり落ちた時、足をひねってしまった様だ。しまった、油断したわ。きっとヴァイオレットの仕業ね。でも…きっともう、彼女は逃げていないだろう。


 そう思っていたのだが…


「ヴァイオレット嬢、今ルージュを階段から突き落としたね」


「痛いですわ、放してください!乱暴はよして。私がどうしてルージュ様を、階段から突き落とさないといけないのですか?」


「僕も見たよ、君がルージュ嬢を階段から突き落とす姿を」


「私も見たわよ。何ならここに映像も残っているけれど」


 上を見ると、怖い顔でヴァイオレットに迫っているグレイソン様と殿下、さらに友人たちの姿が。


「ルージュ、大丈夫かい?可哀そうに、ヴァイオレット嬢に階段から突き落とされたのだね。ごめんね、来るのが少し遅かったばっかりに、ヴァイオレット嬢が突き落とすのを止める事が出来なくて」


 私の傍に駆け寄ってきてくれたグレイソン様に、抱きかかえられた。そしてそのまま、階段の上へと連れて行かれた。


「あなた達、どうして私がルージュ様を?言いがかりはよしてください」


「何が言いがかりよ。だからあなたが階段からルージュを突き落とす映像を、録画しているのよ。見たいなら見せてあげるわ」


 そう言うと、ミシェルが携帯型の録画機を再生させたのだ。携帯型という事もあり、白黒で見にくいが、それでも私を突き落とすヴァイオレットの姿が、しっかりおさめられていた。


「これで言い逃れは出来ないわね。公爵令嬢のルージュを階段から突き落とすだなんて、何を考えているの?打ち所が悪ければ、命にかかわっていたかもしれないのよ!」


「そんな…私はそんなつもりでは…」


 目に涙を浮かべ、訴えているヴァイオレット。その時だった。


「一体何の騒ぎですか?」


 騒ぎを聞きつけてやってきたのは、先生たち数名と学院長先生だ。


「先生、ヴァイオレット様がルージュを、階段から突き落として怪我をさせたのです」


「私はそんな事をしておりませんわ。先生、信じて下さい。皆が私を陥れようとしてくるのです」


 涙ながらにヴァイオレットが訴えている。


「何が陥れようとしているよ。先生、これが証拠の映像です」


 さっきの映像を、先生たちに見せるミシェル。


「またヴァイオレット嬢か…確かにこの映像を見る限り、君がルージュ嬢を階段から突き落としている様だね。ヴァイオレット嬢、職員室に来てくれるかい?」


「どうして私が!どいつもこいつも、私の邪魔ばかりして」


 ギャーギャー騒ぐヴァイオレットを、先生たちが連れて行った。


「ルージュ、大丈夫かい?痛いところはないかい?」


 ヴァイオレットの姿が見えなくなると同時に、グレイソン様は心配そうに話しかけてきたのだ。


「ちょっと足をひねってしまった様で…でも、大したことはありませんわ」


「足をひねっただって!十分大事だ。とにかく、すぐに医務室に行こう。それにしてもあの女、何を考えているのだか。こんな事をしても、自分が不利になるだけなのに」


 珍しくグレイソン様が怒っている。今この状況で、私に害を加えてくるだなんて。よほど自分の思い通りに行かなくて、頭に血が上っているのだろう。


 ただ、皆の方が一枚も二枚も上手だったという事ね。それに1度目の生の時は、最大の味方、クリストファー殿下がいた。彼がいたおかげで、どんな理不尽な事でもまかり通っていたのだ。


 どんな嘘でも、殿下はヴァイオレットの言う事を信じていたから。だから私に直接危害を加えてくることは、ほとんどなかった。


 最後に私たち家族を殺した時も、上手く周りを利用して、自分の手を汚すことはなかったのに…


「ルージュ、ごめんね。僕がもっとルージュの事を気にかけていれば、怪我をする事もなかったのに」


「グレイソン様のせいではありませんわ。すぐに駆け付けてくれて、ありがとうございます。お陰でヴァイオレット様を取り逃す事はありませんでしたわ」


「いいや…あの女を捕まえたのは、ミシェル嬢だよ…ミシェル嬢め」


 なぜかミシェルに対して、不満の言葉を漏らしている。なぜそこまで、ミシェルを敵視するのだろう。さっぱりわからない。


 その後医務室に行き、治療を受けた結果、大したことはなかった。ただ、心配したグレイソン様が、その後もずっと私を抱きかかえて移動するため、恥ずかしくてたまらなかった。


 ちなみにその後、ヴァイオレットは謹慎3ヶ月の処分が言い渡された。そしてファウスン侯爵家には、またしても莫大な慰謝料を請求する事になったのだった。

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