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第102話:帰国する事になりました

「ルージュお姉様!」


「アン殿下、すっかり元気になったのね。よかったわ」


 翌朝、私を見つけるなり、飛びついて来たアン殿下。熱も下がり、湿疹も綺麗さっぱり消えていた。元気そうで本当によかったわ。


「ルージュお姉様が助けてくれたのでしょう?本当にありがとう。ルージュお姉様は、私の命の恩人ですわ。これからもずっと私の傍にいて下さい」


 小さな手で私に抱き着いてくるアン殿下が、可愛くてたまらない。


「アン、あなたは病み上がりなのよ。ルージュ、昨日は本当にありがとう。お陰でアンもすっかり元気になったわ。同じ病で苦しむ民も、昨日すぐに薬を飲んだお陰で、元気になったそうよ」


「それは良かったですわ。あのソーシーの葉は、差し上げますわ。万が一また、同じ症状で苦しむ人が出た時、すぐに対処できるように」


「ありがとう。そうしてもらえると助かるわ。さあ、朝食にしましょう」


 今日は陛下も一緒に朝食を頂いた。なんだか5人で食事をするだなんて、久しぶりね。


「ルージュ嬢、昨日は本当にありがとう。君はアンの命の恩人だ。本来ならずっとこの国にいてもらいたいところなのだが…」


 何やら陛下が苦笑いをしている。一体どうしたのだろう。


「実は昨日の夜、お兄様から改めて連絡があったの。“いい加減ルージュを帰国させろ!このままルージュが帰国しないのなら、今すぐルージュを迎えに行く”と言いただして。お兄様ったら、あのタイミングであんな脅迫めいた通信を送ってくるだなんて…ただ、さすがにお兄様が乗り込んで来たら、ルージュも嫌でしょう。それにあなた、グレイソン様の事が気になっている様だし。一度帰国して、彼ときちんと話をした方がいいのではないかとも思ってね」


 お父様ったら、まさか叔母様を脅すだなんて。それも昨日は、アン殿下が生きるか死ぬかの大変な時だったのに。一体何を考えているのかしら?


 でも…これ以上叔母様たちに、迷惑をかける訳にもいかないか…


「嫌だよ、ルージュ嬢は、ずっとここにいていいんだよ。もし伯父上が乗り込んで来たら、僕が追い返してあげるから」


「そうですわ、私も伯父様を追いかえしますわ。皆で伯父様を追い返しましょう」


「ありがとう、デイズ殿下、アン殿下。2人の気持ちはとても嬉しいのだけれど、私のお父様はとても凶暴なのよ。万が一2人に危害を加えたら大変なので、一度帰国するわ」


「伯父上はそんなに怖いの?」


「ええ、ゴリラみたいなものですわ」


 誰がゴリラだ!そう怒られそうだが、2人を説得するためには、お父様には悪者になってもらっておこう。ただ、お父様は普段は温厚な性格なので、きっとデイズ殿下にもアン殿下にも優しく接するだろうが…その辺は伏せておこう。


「ゴリラか…よくわからないが、強そうだな。母上もルージュ嬢も美しいのに、伯父上はゴリラなのですか?」


「ええ、そうよ。ウホウホ言っているわ」


 叔母様がそう言って笑っている。完全にからかっているわね。でも、2人は完全に信じている様だ。


「それでは仕方ないですね。ルージュ嬢、もしまた我が国に来たくなったら、いつでも来てね。僕たち、全力で歓迎するから」


「デイズの言う通りよ。ルージュ、もし嫌なら、一度帰国して、またすぐにこの国に来たらいいからね。私達は大歓迎だから」


「ありがとうございます。その時はよろしくお願いします」


 叔母様やデイズ殿下の言う通り、本当にすぐにこの国に舞い戻ってくるかもしれない。その時は、笑って受け入れてもらおう。


 食後、早速帰国の準備を始めた。ついにパレッサ王国ともお別れか。1ヶ月足らずだったけれど、とても楽しかったな。


 街並みを見つめながら、楽しかった日々を思い出す。そして


「ルージュ、気を付けて帰るのよ。またいつでも遊びにいらっしゃい」


「ルージュ嬢、アンの事、本当にありがとう。またいつでも来てくれ」


「もしアラカル王国が嫌なになったら、すぐに帰って来てね。僕たち、待っているからね」


「ルージュお姉様、やっぱり寂しいよ。またすぐに帰って来てね。それから、助けてくれてありがとう。私、絶対にルージュお姉様の事を忘れないから、私の事も忘れないでね」


「皆様、ありがとうございます。私もアン殿下の事はもちろん、皆様の事を絶対に忘れませんわ。それでは、お世話になりました」


 皆に最後の挨拶をし、船に乗り込んだ。本当にこの国とも、もうお別れなのね。そう思うと、なんだか胸が熱くなる。


 ゆっくり動き出す船に向かって、皆が手を振ってくれる。私も手を必死に振った。


「皆様、本当にありがとうございました。また必ず遊びに来ますわ」


 もう聞こえないかもしれない、でも、どうしても伝えたかったのだ。


 皆様、本当にお世話になりました。もしかしたらすぐに舞い戻ってくるかもしれませんが、その時はまたお願いしますね。


 小さくなっていくパレッサ王国を見つめながら、そっと心の中で呟いたのだった。

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