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第1話:どうしてこんな事に

新連載始めました。

よろしくお願いしますm(__)m

「ルージュ、君は侯爵令嬢でもあるヴァイオレットに暴言を吐き、階段から突き落とそうとしたり、扇子で殴ろうとしたね。君の様な令嬢は、僕の婚約者にふさわしくない。よって、今日をもって君との婚約を解消する!」


 大きな声でそう宣言したのは、この国の王太子で私の婚約者、クリストファー様だ。彼の傍らには、そっと寄り添う侯爵令嬢、ヴァイオレット様の姿も。


「お待ちください、確かに私は、ヴァイオレット様に貴族令嬢として色々とアドバイスをする事はありましたが、今おっしゃられたような暴言を吐いたり、階段から突き落としたり、扇子で殴ろうとした事など一度もありませんわ」


 艶のある美しい桃色の髪、少し垂れさがった大きな瞳、庇護欲をそそる愛くるしいお顔をしたヴァイオレット様は、そのお可愛らしいお顔を武器に、色々な令息と仲良くなっていたのだ。


 もちろん、私の婚約者でもあるクリストファー様にも、色々とちょっかいを出していた。さすがに令嬢として、色々な令息と仲良くするのは良くないと、何度も彼女を注意したことはあった。


 でも


 “その様な行動は慎まれた方がよろしくてよ。あまり令息との距離が近いと、変な誤解をされてしまいますわ”


 そう忠告したくらいだ。それなのに彼女は、私が嫉妬に狂い、暴言や暴力をふるったと嘘の証言をしたのだろう。そんな嘘の証言を信じてしまうクリストファー様も大概だわ。


 それでも私は、彼の事を愛している。ヴァイオレット様がクリストファー様に近づくまでは、私たちは間違いなく仲睦まじかったはずだ。


 とにかくこんな嘘の理由で、婚約破を解消されたらたまらない。そんな思いで必死に訴えたのだが…


「これはもう、決定事項だ。父上も了承してくれているし、君の父上のサインもある。とにかく、僕と君の婚約は解消させてもらうから。今すぐこの紙にサインを」


 一方的に紙を押し付けているクリストファー様。


「さあ、早くサインをしてくれ。サインをしないのなら、裁判で君の罪を訴えてもいいのだよ!そうなれば公爵家の評判はがた落ちだ。君はもう二度と、別の人間とは結婚できなくなるだろう。さあ、どうする?今この場でサインをするか?それとも、裁判をするか」


 ニヤリと笑いながら、クリストファー様が迫って来た。その瞬間、一気に心が冷めていくのを感じた。


「もしこの場で婚約解消を承諾すれば、私の家族に何かする事はないのですね?」


「ああ、もちろんだよ。円満に婚約解消をしたという事にしよう」


「分かりました。それならサインをいたします」


 こんな一方的なやり方で婚約を解消するだなんて。正直悔しい。でも、もうこんな男と一生添い遂げるなんて出来ない。一刻も早く婚約を解消して、この人たちから離れたいのだ。


 そんな思いで、サインをした。


「これで僕と君は、もう婚約者でも何でもない。早速今日の午後にでも発表しよう。その後すぐに、愛おしいヴァイオレットと婚約を結ばないと。やっとこれで、ヴァイオレットと結ばれるのだね」


 嬉しそうに微笑むクリストファー様を、冷ややかな目で見つめる。


「それでは私はこれで、失礼いたします」


 ペコリと頭を下げ、王宮を後にした。


 馬車に乗り込むと、一気に涙が溢れだす。


 自分が惨めでたまらないのだ。どうして私がこんな目に。クリストファー様の為に、一生懸命頑張って来たのに。


 辛く厳しい王妃教育にだって、必死に耐えて来た。立派な王妃になるために、見た目にも気を使い、大好きなお菓子もずっと我慢していた。慈悲活動だって、積極的に参加してきた。それもこれも、クリストファー様との未来の為に頑張って来たのだ。


 それなのに、この仕打ち…


 でも、もうどうでもいいわ。そんなにヴァイオレット様がお好きなら、好きにすればいい。でも、あの人に王妃なんて務まるのかしら?あの人、ちょっと人に注意されただけで、大げさに泣き叫ぶような人だけれど…


 またいらぬ心配をしてしまった。ヴァイオレット様が王妃教育に耐えられるかどうかなんて、私には関係ない事だ。


 でも、心優しい王妃様が大変な思いをしないかしら?クリストファー様のお母様、現王妃様は本当に素敵な女性で、私の事も随分気にかけてくれたのだ。


 とはいえ、もう私がどうこう出来る問題ではないだろう。最後に王妃様に挨拶が出来なかったのは残念だが、仕方ない。


 とにかくもう、彼らに関わるのはやめよう。


 溢れる涙を、そっとハンカチでぬぐった。よく考えてみたら、婚約者がいるのに他の令嬢を好きになり、ろくに調査もしないで婚約者を一方的に悪者にするような男、こっちから願い下げだ。


 あんな男と結婚させられなくてよかったと思わないと!

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