著者:砂廣ジュン
王様「僧侶よ、勇者と共に魔王城を⽬指すのだ」
僧侶「確か今代の勇者って『変態勇者』って⾔われてる……」
王様「……そうであるな」
僧侶「無理無理無理ですぅっ!」
王様「他の僧侶もそう⾔って辞退したのだ! とにかく⾏くだけ⾏ってくれ! これ書状!」
僧侶「結局押し付けられましたね。ここが勇者の邸宅かぁ……怖いなぁ」
僧侶「すみませーん」コンコン
勇者の声「今少し⽴て込んでいるのだが……」
僧侶「だったら出直しますので」
勇者「いや、せっかくご⾜労いただいたのだ。⼊って待っててくれ」
僧侶「では、失礼します」ガチャ
勇者「やあ。こんな姿で失礼」スッパダカ
スライム「ヤァ」
僧侶「勇者が全裸でスライムに⾷べられてるぅ!?」
勇者「スライム⾵呂さ。中々気持ちが良いものだよ」
僧侶「……つまり、意図してやっていると?」ドンビキ
勇者「⽇課なんだ」
僧侶「スライムが透明だから⾊々⾒えそうなんですけど」メソラシ
勇者「服を着たままだとへばり付いたスライムを洗うのが⼤変なんだ」
僧侶「いや、屋内でやりましょうよ」
勇者「スライムは掴みどころがないから運びにくいんだ」
僧侶「スライムですからね」
勇者「君も⼊ってみないかい? 実は美肌効果があるんだ」
僧侶「お肌よりも気にするべき⾒た⽬があると思いますが?」
勇者「スライムは毒のない無害な種を選んでいるから安⼼安全だよ」
僧侶「この状況が安⼼安全じゃないです。早くスライムから出てください」
勇者「わかった」ヌトッ
僧侶「あ、私の⽬の届かないところでお願いします」
勇者「⽚付けと着替えに少し時間がかかる。先に屋敷で待っていてくれ」
僧侶「ええはいそうします。ぜひ中に⼊らせてください」
勇者「スライムの中かい?」
僧侶「屋敷の中ですぅぅぅうう!」
勇者「書状は拝⾒させて頂いた。魔王城までよろしく頼む」ペコリ
僧侶「正直、まともに服を着ているのに驚いてます」
勇者「失敬な。魔物と関わる時以外は着ているさ」
僧侶「魔物と関わる時は脱ぐんですか」
勇者「⾎や体液で汚れると困るだろう」
僧侶「まっとうな理由のつもりなんでしょうけど、作業着を着ればいいじゃないですか」
勇者「洗うのが⼤変だ。あと……」
窓の外「*爆発⾳*」
勇者「……これは⾮常事態か?」
僧侶「そうですね、⾏きましょう!」
村⼈「魔王軍だぁ! 逃げろ!」
⼦供「おかあさーん、どこー?」
⽜の魔物「俺はミノタウロス族最強の戦⼠にして魔王軍四天王が⼀⼈。『鉄⽜』のノタロウ
だぁ!」
僧侶「四天王がなんで王都に!?」
鉄⽜「⼀騎打ちを望む者は居るかァ!? 受けて⽴ってやる!」
勇者「その決闘、承ろう。このコインが地⾯に落ちた瞬間に開始でよろしいか?」
僧侶「勇者さん!? 相⼿はあの交易都市トラデモンを⼀⼈で落とした『鉄⽜』ですよ!?」
鉄⽜「グハハハ、良いぞ、ニンゲン。そこな⼥に最後の⾔葉でも告げておくが良い」
勇者「いや、すぐに始めよう。それと⼆つ訂正をさせてもらおうか」ピン
鉄⽜「訂正だと?」
勇者「⼀つ。彼⼥とは今⽇が初対⾯であり、そういった関係性ではない」
コイン「地⾯へ参ります、ご注意ください」
鉄⽜「いざ、尋常に̶̶」
勇者 は しっぷうのごとく きりつけた!
勇者「⼆つ。私は⼈間よりも、⽑⽪のある種族の⽅が圧倒的に好みだ」
鉄⽜「ば、バカな、速すぎる……。オレは、ケンタウロス族の、英雄だぞ……」
勇者「勿論ケンタウロス族も魅⼒的ではあるが、私の性癖としては魔⽜が⼀番だな。⾻格の
美しさ、筋⾁のしなやかなライン。何をとっても⼀流だ。いつか最⾼の美⽜を⾒つけたら求
婚するつもりでいるよ」
鉄⽜「この、変態、が……」バタン
僧侶「すごい、四天王を⼀太⼑で……」
村⼈「魔⽜……って……」
村⼈「やべぇな……」
⼦供「ママー、かっこよかったねー」
⼥性「シッ、⾒ちゃいけません!」
僧侶「……こんなに⼤勢⼈がいる中で性癖暴露するのは、確かに『勇者』ですね」
僧侶「『鉄⽜』の襲撃から三⽇。被害が少なかったからか、既に⽇常の⾵景ですね」
勇者「王都はもう⼤丈夫だろう。私は明⽇にでも出⽴しようと考えているのだが、⼀つだけ
確認させてもらっても良いかい?」
僧侶「なんです?」
勇者「本当に私と旅をするのか? これまでの⼈達は逃げていったが」
僧侶「はい。魔王軍とは因縁もありますし、勇者さんも(ケモナーなのを除けば)悪い⼈で
はないと分かったので」
勇者「そうか……では、よろしく頼む」アクシュ
僧侶「こちらこそ、よろしくお願いします」シェイクハンズ
僧侶(私の、⽬的のために……)
??「『鉄⽜』がやられたようね」
??「キャハハッ、あいつは四天王の中でも最強ッ!」
??「⼈間ごときに負けるとは魔族の⾯汚しデスねェ……」
??「鎮まれィ!」
??「魔王様!?」
魔王「『鉄⽜』は知略こそ劣れど、我が部下の中で正しく最強の男であった」
魔王「『⼫童』よ、下⼿⼈を仕留めよ。『鉄⽜』を超える豪傑であっても、貴殿の悪辣さには
敵うまい」
⼫童「キャハハッ、オッケー。⾎祭りに上げてくるヨッ!」