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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

嘘吐き少女と秘密の密会

作者: くそハーレム

僕は今、夕焼けが照らす電車に揺られている。

毎日見る同じ景色に僕は少し飽き飽きしていた。とても退屈だ。ただ毎日同じ日々を過ごすという事は幸せなのかもしれない。しかし楽しみのない日々はとてつもなく暇なのだ。そんな事を考えていると電車は既に最寄り駅に到着していた。


ただぼんやりと帰路につくと、いつも通る道の廃墟の窓から何者かの影が見えた。気になった僕は思わず、その廃墟のドアに手をかけてしまった。


ドアを開けた先には一人の少女が立っていた。

彼女の瞳には光が灯っておらず、底の見えない闇で埋め尽くされていた。

そんな少女に声を掛けるか迷っていると、僕の存在に気付いたのか、少女の方が突然ハッと意識を取り戻したかのように僕に声を掛けた。


「貴方は、どうしてここに?」

「僕はただ、人影が見えたから気になって、気付いたらドアを開けてたんだ。ごめん。」

「謝る必要はないわ、ただ、ここに人が来るとは思っていなかったから驚いただけよ。」

「君の方こそどうしてここに?」

「私は、静かな場所を探していてここを見つけたの。」


不思議な雰囲気を纏った彼女は、面白そうに僕を見つめた。その雰囲気に僕は気付いたら魅了されていた。


「ねえ、貴方、名前はなんて言うの?」

「あ、えっと僕は“園恵 結弦”(そのえ ゆずる)よろしく。」

「そう、結弦…。貴方、私の話し相手になってよ。」

「話し相手…?」

「私、学校で馴染めないから話す相手が居ないのよ。だから私と仲良くして頂戴。」

「そっか、僕で良ければいつでも。」


僕が快く了承すると、彼女は子供の様な無邪気な笑みを浮かべ僕に微笑んだ。その笑顔に僕は目を奪われた。


「結弦、明日もここに来てね。私、今日はもう帰るから明日待ってるわ。」

そう言って僕に手を振り、廃墟から足早に立ち去った彼女を見届け僕も家に帰った。


✂ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


次の日の帰り道、僕は彼女に言われた通りに廃墟に向かった。廃墟のドアを開けると、にこやかに彼女が僕を迎えてくれた。


「約束通り来てくれたのね。ありがとう。」

「来たは良いけど、何をするんだい?」

「私ね、人と話す事が好きじゃないから人と話さないの。だから寂しくて。」

「そうだったんだ…僕が力になるよ。」

「あら、嬉しいわ。でも嘘よ。」

「嘘、?」

「ごめんなさいね、少しからかってみたの。」

「君ってそういうタイプなんだね。」

人をからかう様な人だとは思っていなかったから少し驚いていると、彼女が突然話し始めた。


「ねえ、貴方タイムループしたいと思う?」

「特に後悔している事は無いかな。」

「それは羨ましいわね。人間って過去に戻る事は難しいけれど未来には常に行ってるの。1秒後にループしているって事なのよ。だから過去未来に囚われないで今を生きる事が大切。今って今しか無いからだから今後も後悔の無いようにね。」

「後悔…か。」

「私が一番好きな話をするわ。

世界五分前仮説を元にしているのだけれど、例えば世界は五分前に造られていたとしたら?私達が今まで経験してきたものは全てただの記憶であり幻想なの。アカシックレコードの一冊でしかない。昨日食べたご飯は本当に食べた?昨日遊んだゲームは本当に遊んだ?全てただの記憶で全て五分前に造られていたとしたら?ただの仮説なのだけれど、信じる信じない関係なしでそういう世界なのだとしたらとても面白いと思わない?」

「君はとても難しい話をするね。僕はそこまで世界について考えたりなんてしない。僕は楽しみのない人生を送っているんだ。」

「パラレルワールドについて考えて見たら?今、他の世界線では貴方は魔法使いや勇者なのかもしれない、世界なんて無限に繋がってるのよ。楽しみがないじゃなくて作ろうとして無いのよ。まずは行動から。でしょう。」

「君の言う通りだね、僕はそうなのかもしれない。」

「突然沢山話してしまってごめんなさいね、久しぶりに話をちゃんと聞いてくれる人と話せたからつい止まらなかったわ。」


彼女は少し寂しそうにそう僕に微笑んでから、自分のスマホを取り出して僕に連絡先を尋ねてきた。

彼女と連絡先を交換出来ると分かった僕は少し浮かれながら彼女に名前を尋ねた。

「そう言えば言ってなかったわね。私の名前は“如月 美姫”(きさらぎ みき)、改めてよろしくね。」

そう僕に自己紹介をした後に彼女は外に目をやり、暗くなるから帰ろうと提案され、僕達は解散する事になった。


✂ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「今日もいつもの場所で待ってるわ。」

今日の昼、スマホに一通の連絡が入っていた。

その相手は彼女だった。彼女と連絡先を交換した実感と連絡をくれた嬉しさで僕はいっぱいだった。

最近は毎日の様に彼女と話をしているので帰りの寄り道がとても楽しみなのだ。

学校が終わった後、僕は急ぎ足でいつもの廃墟に向かった。


「あら、結弦、今日も来てくれたのね」

「うん、今日も君の大好きな話を聞かせてください」

「貴方が私の話に興味を持ってくれるのがとても嬉しいわ。そうね、結弦は最近楽しい事を見つけたかしら?」

「僕なんかが本当に楽しい事なんかを見つける事が出来る気がしないんだ。」

「“人が不可能と思うとき、やりたくないと決めているのだ。”この言葉は偉人のオランダの哲学者スピザノの言葉よ。貴方は最初から諦めて居るのよ。私より何でも持っているはずなのにどうして諦めてしまうのか分からないわ。」

彼女はとても怒ったかの様な不機嫌な顔をして僕を見つめた。

「貴方の裕福な所が大嫌いよ。」

「え…。」

「まあ、嘘よ。」

何も答える事の出来ない僕を見て彼女は、冗談を言っただけよ。と呟いて他の話をし始めた。


「とても膨大で難しい話になるけれど最近聞いた話が少し面白くてね。その話というのがこの世界に森は存在しないと言うのよ。見てきた世界は何者かに植え付けられた価値観であり、偏った見方をしているの。純粋な心で見たままの感想ではなく、ある特定の解釈しか出来ないように刷り込まれ、常識に囚われて本当の物が分からなくなっているのよ。」

「なるほど…?」

「デルズタワーというのは岩ではなく「木」と言っていて、エアーズロックなども木の残骸らしいの。デビルズタワーが木とするならば今私達が見ている木が雑草や茂み程度となるわ。本当の森はもっともっと壮大だから地球に森は存在しない。荒れ果てた残骸。地球の全てがその跡地。

そしてこのままだと食料や資源などが足りなくなるのは嘘であり、遥か昔は今より多くの生物が生きておりそのほとんどは大災害により滅びた為、昔に比べると今の地球はすっからかん、だから食料や資源はもっとあるといっているの。まあこの話は曖昧な点が多くて科学者も否定しているから真実では無さそうだけれどね。」

「でもそういう発想の人がいるんだなって思うと面白いのかもしれないね。少しロマンがある話だね。」

「ある男の人が言っていた話をそのまま話しただけだからこの話は難し過ぎて私にはよく分からなかったわ。」


彼女は少し疲れた顔をして続きは明日話すと言い残し、彼女は僕に手を振り帰っていった。


✂ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


昨日の話の続きを楽しみに今日も僕はいつもの廃墟に向かった。ドアを開けると彼女は元気そうな笑顔で僕を迎えた。


「昨日の続きを話すわ、今日も沢山あるわよ。」

「うん、今日もよろしくね。」

「昨日言った話だと、遥か昔は巨人が住んでた事になる。巨人は巨大樹などを破壊したことによって酸素などが足りなくなってしまい、住めなくなったから小型化した私たちが住んでいるって感じらしいの。なぜ破壊したのかは分からない。過去の歴史を壊すため?今の木はカーボンベース、昔はシリコンベースでシリコンベースは莫大の情報を保存することができるわ。木と交信することによりあらゆる情報を受けとることができるからそれを知りながら破壊したんじゃないかしら?シリコンはクリスタルで洞窟にあるクリスタルは遥か昔の巨大樹の根っこってその人は言ってるわ。何だかそう言われると色々実感が湧かなくてよく分からなくなるわね。」

「今話題にしている話は到底理解の出来る様な話では無いけれど話のネタとしては面白いね。」

「違うわ、私がね話したかったのはこの話を通して見た話なの。結弦は生き物を飼ったことがあるかしら?」

「うん、小学校とかの時によく飼ってたな。」


「私達は動物を飼う時、捕まえてゲージに入れ餌を与え飼育する。これが今の人間に当てはまったと言われるホモ・サピエンスの「神の飼育」、ホモ・サピエンスは元々別の星で生きていたが高度な技術を持った生命体が飼育するためにホモ・サピエンスを地球に連れてきたの。その時に下準備として元々いた原人達を絶滅させホモ・サピエンスにとって暮らしやすい場所に環境を整え、その際に巨人や恐竜などは絶滅、そして今私達は餌を与えられ飼育されてる状態であるわ。そして私達は知性を持って1万年足らずで脳の体積は3倍になり様々なものを発明。つまり飼い主からすると成長しているわけよ。だから「森が存在しない」という話にも繋がっていて今地球に存在するものは人類が扱えるものに調節されているわ。」

「凄い…。」


「この話を見た時とても面白いと思ったの。そしてそう考えると今まで築いてたものを簡単に自分達より上の人に壊されることがわかる。飼い主が私達に飽きて他の生物が欲しいと考えてしまえば今の状況は簡単に壊され、消えてしまうって考えると怖いわよね。」

「僕もこの話は割と面白味があって好きだな。」

「小さい頃とか色々と考えるわよね、この世界この事とか。誰かが言っていたのは、この世界は凄い大きい家の住みっこの埃の中。それとともに私達の部屋の隅の埃の中にも小さな宇宙があるかもしれない。そんな事を考えるととても面白いと思わない?よく色々な人が“貴方は特別です死んだらだめ“とよくいうけれどこんなよく分からない広い世界で私達砂粒より小さいものが消えても実際は何も変わらない。闇が深いわね。この世界は。」

「でもそんな世界だからこそ美しいのかもしれないね。僕は日本人独特の滅びの文化を好むから何だかんだ綺麗な話だと思った。」

「あらそう、貴方が消えてしまっても誰も悲しまないでしょうね。」

「え…?」

「嘘よ、私が勿論悲しんであげるわ。」

彼女は今日の話は終わりだと言ってそのまま帰って言ってしまった。彼女が日に日に話した後に疲れた顔になっていっている気がして少し心配になりつつ、家に帰ることにした。


✂ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


僕はいつもの通りに廃墟のドアを開けると彼女はとても暗い顔をしていた。


「大丈夫…?美姫さん。」

「あら、来ていたのね。」

彼女の様子が明らかにいつもよりおかしい。

「僕で良かったらいつでも相談乗るよ?」

「…貴方に私の気持ちは理解出来ないわ。私よりなんでも持ち合わせている貴方には。」

「本当にどうしたの、様子がおかしいよ。」

「ええ、そうよ、私は昔からおかしいのよ。頭がおかしいの。何も持っていないのに顔だけで皆から疎まれて、上手く話す事すらできない。私は価値の無い人間よ。」

「僕はそうは思わないよ。君は素敵な話を毎日してくれる、僕に毎日楽しみを与えてくれた。それにとても綺麗な心を持っていると思うよ。」

「五月蝿い!どうせ全部思っていないのでしょう、私の顔にしか興味無いから私の事すぐ嫌いになって離れていくのでしょう。」

「そんなことない、君の中身も全て素敵だからこそ、だから僕は君に会いに来てた。確かに全て完璧に理解出来てる訳じゃないけど、だけど君の素敵なところは理解してるつもりだよ。」

「貴方に何がわかるの…。私はそんな事思われる様な人間なんかじゃない。貴方も、貴方の大切な人も、皆居なくなってしまえばいいのに。」

彼女は突然ハッとすると、スタスタと歩いて帰っていってしまった。

突然の彼女の怒りに対し、僕はどうすればいいのか分からず、悩んだ挙句帰る事にした。


✂ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「父さん、母さん、ただいま。」


いつも通り玄関で挨拶をしたが、今日は返事がない。


明るいはずのリビングからニュースの音しか聞こえない。


僕は心配になり走ってリビングに向かうと、





そこには父と母の死体があった。



信じることが出来なかった。


✂ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ああ、どれくらいの時間が経っただろうか。僕は家の近くの公園で立ち尽くしていた。

何が起きたのか僕はまだ状況が把握出来ていなかった。

あれは明らかな他殺だった。

そして何よりも僕が帰ってくる少し前までは生きていたはずだった。僕がもう少しでも早く帰ることが出来ていたらこんな事にはならなかった。


僕がただ唖然としていると突然、彼女の事を思い出した。先程彼女が “貴方も、貴方の大切な人も、皆居なくなってしまえばいいのに” と言った事を思い出し、突如怒りが湧いてきた。自分でも理解が出来ないほど僕はイライラしていた。いや、きっと彼女に罪は無いのかもしれない、誰かに当たりたいだけなのかもしれない。そう思っていると突然彼女が目の前に現れた。


_____________


気付くと目の前には彼女の死体があった。









僕が殺した。


✂ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


何故こうなったのか僕も知らない。

ただ、分からないけど僕は彼女を殺そうと思った。

そして僕も死のうと思った。

彼女の言った通り、僕も、僕の大切な人も全員この世から消してしまおう。


そう思っていると彼女の手には手紙が握られていた。

それを拾ってみるとその内容に、僕は自分のしたことを酷く後悔した。


結弦へ

突然の手紙でごめんなさい。


どうしても謝りたい事があって。

私は昔から虚言癖や性格の悪い所が多くて、親も居ないものだから何も無くて空っぽな人間なの。

だから優しい貴方を見ていると自分がとても惨めになってしまって貴方への当たりが強くなってしまったの。

日に日に貴方の素敵な所を見つけるたびに自分の愚かさが許せなくなってしまった。

優しくて怒らない貴方にいつも甘えてしまっていたわ。本当にごめんなさい。


それと貴方と貴方の大切な人全員居なくなってしまえなんて言ってしまった事本当に後悔しているわ。

これは本当に申し訳無いと思っているの。

これに関しては直接頭を下げるわ。

言ってはいけないことを言ってしまった。

言葉は取り消すことが出来ない。

貴方の心を傷付けてしまった。何度も何度もあの後悩んでどうしても謝りたかった。


私の事なんてとっくに嫌いなのだろうけど私は貴方に救われたし、とても大好きよ。許される事だとは思っていないのだけれど、もし、許してくれるのならこれからも貴方と毎日話したいです。


美姫より


僕はもう、何も考えることが出来なかった。

ただごめん。

そう思った。

君の望み通り僕は消える事にしようと思っていたのだが君はそれを望んでいなかった。

大切なものも全て失った。


でも大丈夫。

また毎日彼女と話す事が出来る。

いつもの場所でまた話を聞かせてもらうんだ。

僕はそっと腕の中にいる冷たい彼女に微笑んだ。

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