85.聖都でひと悶着
帝都を出発しマギ聖共和国へと向かう。
国境まで1小年ちょっと50日くらいかかるみたいだ。
帝国は一筆書き出来るような街の位置並びでは無いので移動に無駄が多い。
帝都からは放射状に街道が出ているので一見回り易そうだが、横のつながりがまちまちなのだ。
それでも44日で国境検問所に到着。
新規に捕縛した88人を帝都へと護送。
無事国境を越えた。
ここからは、聖都まで一本道だ。
季節は冬。
超高級ケッケ肉と超高級なブーモ肉で健康的なエールベであるロック。
同じ肉を食べて健康的なフォルフのアルファ・ベータ・ガンモ・チクワ・コニャック・ショーガの6匹。
10日かけて聖都の外門前に到着。
入都前に一旦ペットの7匹を外に出す。
入都待ちの人々が我先にと逃げ出す阿鼻驚嘆だ。
聖騎士隊が集って来た。
魔王様が前に出て来て
「皆ご苦労。予定通り護送して来た。」
(いやいや、彼らはエールベアとオオカミに対して出て来たのであって、罪人の引き取りで出て来たのではないですよ。)
「えっ?魔導王様?」
騎士の一人が言った。
「そうじゃが?」
魔王様、エールベ達が近くにいるのが当たり前になっていた。
僕はロックの顎の下の毛をもふもふしながらそのやり取りを見ていた。
魔王様はチクワの頭を撫でている。
「え?え?え?」
「なんじゃ?ゲールト達を連れてきたのじゃぞ?」
「え?あ…」
「ゲゲゲゲールトですか?」
「そうじゃ?」
「おぉそうじゃ!こやつはフォルフという種類で名はチクワじゃ。そしてジョン坊の横のはエールベという種類でロックという名じゃ。頼もしい護衛じゃぞ。」
「護衛?この獣たちが?」
「そうじゃ。」
各国の森のエールベやフォルフの群れを大人しくさせたり、森の中の盗賊のアジトを取り囲んだりしながらの捕縛旅行じゃったよ。騎士や兵士だと戦闘になるがこやつらだと抵抗されることなく捕縛できるから楽で速かったわい。」
「でもこのまま聖都へと入れる訳には…」
「ん?・・・あっ!スマン。そうじゃった!すっかり忘れておった。」
ここで僕もロック達の立ち位置を思い出した。
[みんなゴメン、車の中に入って。]
獣組の7頭を護送荷車に入れる。
そしてしばらく後、入都できた。
ゲールト達を収監する刑務所に到着。
無事護送任務は完了した。
でも聖共和国のアラスタ化がまだ残っている。
この国に入国してからすぐに僕は6歳になった。
セーラは4歳・ジョリーとセーヌの双子は3歳になっている。
妹達の誕生日にはアラスタの家に「誕生日おめでとう」と言いに行って来た。
今は聖都からアラスタまでキューで1分以内、ポムで3分、エラで10分、ガンモで2分かからないで移動できる。
ロックだと1昼夜はかかると思う。
みなさんお速い事で。
マギ聖共和国内を囚人の居なくなった護送荷車で廻る。
まだまだ居るであろう盗賊の捕縛と各町村の結界とアラスタ化をするために。
ロック達が外にいると絶対誰も寄り付かないから、獣組は移動農場の3層目の車内で走り回
っている。
看守兼務の兵士は帰国まで護送荷車の1層目の個室で寛いでもらっている。
若い女性兵士の車両外組は盗賊をおびき寄せるのにかなり慣れたようだ。
当初はセリフ棒読みだったのが、今は自然に村娘を演じている。
聖共和国内の盗賊も結構いるのね。
全町村の3分の2終わった時点で、護送荷車の一人部屋は満員御礼だ。
戻るのめんどいからロック達に部屋の前をうろついてもらい、盗賊達には相部屋にしてもらう。
2小年かけて聖共和国の全町村の結界アラスタ化を終え、聖都に戻る。
護送荷車の一人部屋が無くなっていた。
軍事力がほとんど無い国なので、なめられていたのか、結局341人も捕まえてしまった。
もうタコ部屋状態だったよ。
人権?人を襲って来た輩に対して何を言っているのかな?
命大事。
自分自身を守る為には仕方がないよね。
マギ聖共和国内のアラスタ化を終えたから、帰国する予定だ。
北方面の隣国トリトール王国へはまだ行かない。
なぜならば都市結界魔法の要請が来ていないからだ。
魔王様が言うには、王族は結界推進なのだけれど、貴族の半数以上が反対なのだそうだ。
国境検問所は1か所だけだから森を抜けてこられると出入国の管理が行き届かない。
そこでガンモ達の出番だ。
オスであるアルファとベータはおでん組の手下という立場になってもらう。
そして僕はキューに乗り
国境付近で一番規模の大きい獣の群れへと向かう。
ここの森の群れは他とは違っていた。
エールベがフォルフを従えていたのだ。
簡単にいえばフォルフはエールベのパシリだ。
体中傷だらけのフォルフがエールベの指示を受け動いている。
その風景を見た僕達、特にガンモの殺気が物凄い。
エールベとフォルフで200頭規模の群れが、僕達に対して臨戦態勢をとっている。
僕は皆に
[僕が行ってくるけど良いかな?]
ロックが
『俺が先に行って、この現況を変えたい。』
[それだったらガンモが良いかも。]
『そうだな。ガンモ、わかるな。』
『ええ、任せて。』
ここのエールベがフォルフを奴隷の様に扱っているので、その奴隷の仲間がいかほどかを思い知らせるためだ。
ガンモが1頭だけで敵のボスの前に行く。
ガンモの殺気が溢れた。
それと同時にこの地のエールベの半数が泡を吹いて気を失った。
そして次の瞬間、敵のボスの両手足が付け根から吹き飛んだ。
ボスの取り巻きと思しき個体の手足も吹き飛んだ。
熊…蜂の子みたいになっている。
そして傷だらけのフォルフを引き連れて戻って来た。
『ボス、お願いします。』
とのガンモの言葉に他のフォルフは目を見開いた。
だってあの桁違い・次元違いの強さを見せたフォルフがボスと言ってお願いしている相手が人間の子供だ。
驚かないわけはない。
更に自分たちの身に起こる現象は想像の範疇を超えるものだった。
[“きれいきれい♡”]
フォルフの怪我が全快そして体力も魔力も戻った。
片目や耳・前足の一部が欠損している個体に近付き、一頭一頭に“さいせいちりょう”をかけ、最後に“えぇーゆだなぁー”で全快させた。
蜂の幼虫状態のエールベの近くへ行くロック。
『おまえらはやってはいけない事をやったというのをわかっているのか?敵であっても尊厳を守らねばならない。』
『おまえは更生のの余地なしだな。』
と言うと軽く前足をふるう。
その瞬間、元ボスだった個体が粉々に破裂した。
取り巻きも同様粉々に粉砕された。
残ったエールベを見まわしたロックが僕の所へ来て、
『ボス、あいつらはボスに虐げられていた奴らだから治してやって欲しい。』
今度はエールベの生き残りが目を見開く。
もちろんフォルフもだ。
残っていたエールベは身体欠損が無かったので“きれいきれい♡”だけで済んだ。
それにしても生傷が多かったな、血が止まったばかりと言う感じだった。
もちろん全頭に”かいわする“をかけた。
聖共和国側の国境門番に森の中の警備をエールベとフォルフにお願いしたことを伝えた。
が、信じない。
当たり前か。
そこでまずガンモに出てきてもらう。
その後ロックにも出てきてもらう。
百聞は一見にしかずだ、が、まだ信用していない。
最後に森から200弱のエールベとフォルフに出てきてもらった。
国境の門では阿鼻驚嘆の地獄絵図だ。
狼と熊が1頭ずつだとインパクトが弱かったみたいだが、200頭にもなると・・ねぇ。
[ということだから皆ヨロシクね。]
と僕が言うと皆2度頷き森の中へと帰って行った。
これを見て信じないはずはない。
「森の中を通る人間は殺さず捕まえてここに連れて来るように言ってあるから、よろしくね。」
「あ、あぁ。一応トリトール王国側の警備兵にも…というか彼らも見ていたみたいだから大丈夫だな。」
トリトールの兵士も頷いていた。
そして僕はようやくノードスカー王国へ帰る事が出来るのであった。
これからは、アラスタ村でのんびりスローライフだ!
とはならない事は、薄々感じているジョンであった。
主人公ジョンの物語はここまでです。
次は別の人視点のお話を1話投稿し、4章の終りとします。




