68.王都の一部アラスタ化
今の僕の魔力量と魔力回復作用のある“えぇーゆだなぁー”が使える僕以外の人数が4人居るので、
ソールトの街サイズだと1回の詠唱でできる範囲が予測できる。
全外縁区画で1回、全中区域で1回、中央省庁区域で1回、貴族区域で1回、王城で1回。
の計5回で十分行けそうだ。
各便所も同時に魔改造しての計算だ。
システムキッチンは販売式にするそうなので、定期的に納品というよりも魔改造に来なければならない。
一旦王都内にお触れを出し、都民に周知させる期間をとる。
日程としては10日後だ。
ロシナンの寿命まではまだ1小年はある。
ロシナンの希望で第二王城内の地下牧場でしばらく過ごす事となった。
そのため僕達も第二王城内で…
とはいかず、王都内の外縁地区の旅館に泊まることとなった。
アレック家族は中地区内の旅館に泊まり、領主様一家は王城内で過ごすそうだ。
九日間、王都内のお店とかウインドショッピングに勤しみ、外食、観光を楽しんだ。
あの結界魔法の後から一気に治安が良くなったみたいで、僕の魔法だと気づかず、僕に感謝していた。
ネタばらしはしないよ。
ニマニマと店主の話を聞いていて、父や母が「それは」と言った瞬間、脛を蹴ってネタをばらさないようにしていた。
本当、口の軽い両親だ事。
10日目の朝、王城勝手口から場内に入り、“第二王城”に乗り込む。
傍から見たらいつもの・・・いつもの王様の馬車で、車輪が無く、宙を浮いている物体が馬に引かれて都内を移動。
馬車から50人の警備兵が降りてくる。
そして陣幕を張って目隠しをする。
完全に隠れたことを確認した後僕達魔法組が降りて行く。
準備OKだ。
陣幕外の隊長が、
「これより外縁地区を整備する。」
と宣言。
「じゃぁみんなヨロシク、“きれいきれい”か~ら~の~」
「「「「「えぇーゆだなぁー」」」」」
声だけ聴くと怪しい宗教団体っぽく感じるだろう。
気の抜けたような子供の声に5人の合唱だ。
9日間の間に王都中を廻って街並み等を覚えていたので、陣幕内でも簡単にイメージができる。
外縁地区の新築強化化と便所の魔洗便器化を同時に終えることができた。
そして第二王城へと撤収する。
次に中区域地区へと来て、外縁地区と同じよう、陣幕内で“きれいきれい”と“えぇーゆだなぁー”5重詠唱の魔力回復を行った。
次に中央区域地区、そして行政区域地区と終わらせ、貴族街区へとやって来た。
ここで、“得体の知れない魔法使いに、不気味な魔法なんてかけられたらたまらない。”と拒否する貴族が複数来ていた。
拒否貴族が居る事で、貴族街区は急遽中止。
最後の王城の番になった。
拒否貴族の地区をやらなくなったので、王城は思いっきりできる。
「では早速!“きれいきれい♡”か~ら~の~」
「「「「「えぇーゆだなぁー」」」」」
王城が光り輝いて新築化され、王城敷地内にいた全ての人達が癒された。
最後に、都道だ。
「最後ね、“かいてきどうろ”か~ら~の~」
「「「「「えぇーゆだなぁー」」」」」
もちろん貴族街区は抜きだ。
王都の貴族街区以外のアラスタ化が終わり、帰ろうとした時王様に肩を掴まれた。
「エレベレターが。」
「あっそうだった。」
予定場所に案内される。
資材が山積みだ。
王城と同じようなデザインをイメージして
「“えれべーたーとぅ”!」
にょきにょきと塔が出来上がり各階の廊下の突き当りであろう壁に、渡り廊下が伸びていき繋がった。
エレベーターは2基だ。
外からは使えないので一旦場内に入る。
やはり上下移動時の重力変化は感じられない。
来客用ではないので、王族専用、場合により使用人が使っても良い事となった。
エレベーターの設置を終えた後、帰路に就いた。
貴族街の一角。
広範囲区域の浄化強化魔法反対派の人達が集まっている。
「あの王は得体の知れない魔法使いに洗脳されたのではないだろうか。」
「あの魔王様も押しているというのも嘘くさい。」
「魔王様も洗脳されてしまったか、ボケたか、耄碌したものだな。」
「ナント領のアストールも、法務大臣も、陸軍大将もだ。」
「我々はその魔法使いに関わらなければ洗脳もされまい。」
「この王都に結界もかけたと言っておったな。」
「悪事を働いたら通れないというやつだな。」
「誰でも一つくらいは脛に傷を持っているだろうに。」
「そんな些末な事でも目くじら立てて捕まえようとする、忌々しい魔法だ。」
「本当に、些細な事でも通れない。」
「今回、どのような人物か見ておきたかったが、陣幕で目隠しされていて分からなかった。」
「術者を捕まえたかったが、ああも厳重に警護されていたら手も出せない。」
「暗殺を依頼しようとしたが、現在、王都内には一人もいなかった。」
「呪殺とか出来る者も王都内に居なかった。」
「奴隷にしてしまえば、こちらの思い通りに使えるかもしれんな。」
「他の街に依頼を出そうにも、犯罪依頼の為に王都から出ようとした者は、ことごとく捕まっている。」
「横からのお金も入って来なくなってしまった。」
「ソールトへ行った奴隷商はまだ戻って来ていないしどうなっているんだ?」
「盗賊団を捕まえたと言っていたがアレは本当か?」
「噂だったから気にしていなかったな。」
「まさかあのゲルトが捕まったと言っていたが、絶対ウソだと思った。」
「我々ではゲルトとの面会が出来ない、申請しても却下される。」
「次回の議会で、冤罪の方向へもっていく事にしよう。」
ここに集まっている貴族たちは王都から出ることが出来なくて、ぬらりぬらりと質問を躱して何とか自分の邸宅へと帰って来た、根っからの悪人連中だった。
身分のおかげで、今まで捕まらなかったが、賄賂も薬物も通じない取り締まりに、贅沢三昧を楽しむ為のあぶく銭を入手することができなくなっていたのであった。
外国への横流しや密輸等々の大元締めの集まり。
近い将来ジョンのあの魔法の餌食になるであろう人達の集会でした。