67.移動式ミニ王城
王様の馬車も当初の魔改造を解除した。
見た目はそのままで“らぷゅたばーじょんに”で内部拡張しても“らぷ号Ver.2”とさほど変わらない。
王様は家臣なども引き連れて移動するからもっと大きくした方がいいよね。
と勝手に思った。
「“らぷ号”と同じくらいの広さしかないから、もっと広くした方が良いかな?」
「うんと広くしてくれ!」
ヨシ!言質取った。
「まずは第一段階の“らぷゅた”」
当初の“らぷ号”と玄関の位置が違うだけで内部はほぼ同じ作りになった。
どれくらい大きくしたら良いのかな?
10倍だと体積100倍(長50m幅27m高27m)か。
階高約4mx2の3mx6の8階建て。
階高合計26m床厚を考えたらこんなものか。
1階は大広間とトイレ。
2階は謁見の間と会議室x2と控室x2とトイレ。
3階は厨房と会食室と食材庫と大型冷蔵庫と冷凍庫。
4階は客室(貴賓室)x8。
5階は警備兵や使用人達の個室と食堂とトイレ、そして御者席への出入り口。
6階は身内用の部屋X6と使用人の控室と個室とトイレ。
7階は王様家族の通常生活空間とほぼ同じ間取り。
8階はラウンジとホールとトイレ。
各階へは階段3カ所とこの世界ではまだ無いエレベーターを3基。
エレベーターは来客用1基と、バックヤード1基用と王族・身内専用1基。
床下は馬が走り回れるように草原っぽく土プラス芝生にする。
馬房と倉庫も備え付けちゃう。
これ絶対魔力不足になるやつだ。
試しに5人全員で“えぇーゆだなぁー”をかけてもらおう。
「よし!じゃぁみんなヨロシクね!“らぷゅたばーじょんさん”!か~ら~の~」
「「「「「えぇーゆだなぁー」」」」」
“バシュン!”って昔のフラッシュが光ったように一瞬の閃光と音とともに、本体はそのまま姿で車輪が床底の四つ角から少しはみ出て、ドローンのような感じで浮いているの王様専用馬車が鎮浮している。
「たぶんできた…と思う。」
恐る恐る扉を開いて中を覗く。
そこに見えたのは10分の1スケールのドールハウスの中装に見える。
入り口からは1階部分だけしか見えない。
大大広間を見ているはずだが薄っぺらい部屋にしか見えない。
入ってすぐ脇には床下へ降りるスロープとトンネルのようなドームが見える。
頭だけ中に入れると、後ろで見ている人達からは頭が消えたように見えたはずだ。
僕は、そのままの流れで中に入る。
「ジョンが小人になった!」
イメージ通りの仕上がりになっていた。
皆に中に入ってもらう。
ぞろぞろ中に入ってきた。
「おおお!」
「まず最初にコレの使い方を教えるね。」
と言ってエレベーターの使い方を教えた。
エレベーター内は上下に移動する感覚が皆無だ。
扉が閉まって次に開いたら目的の階に着いている。
そして各階の用途、部屋割りを伝えた。
皆思い思いの場所を探索している。
ポムたちなんか床下の牧場へ行って寛いでいた。
馬車の外観はぱっと見ほとんど変化がなかったが、よーく見ると、小っさい豆粒ほどの大量の窓がラッピングにより胡麻化されていた。
移動式簡易王城の完成だ。
魔王様がぼくの傍に寄ってきて、
「どれくらいの魔力を使ったんじゃ?」
「ソールトの“キレイキレイ”全部くらい。」
「この馬車だけで街一つ分か。」
遠くで王様と王妃様が揉めている。
「ここに住みましょう!」
「王城が有るじゃないか。」
「ここに引っ越せばよろしいじゃありませんか?」
「本城の管理もあるだろう。」
「あそこは皆に開放して私たちはこちらを使うの。」
「本城は対外的に必要だから。」
「呪いも跳ね返すのですよ。」
「それは…」
「王都の結界も呪い跳ね返すよ。」
助け舟を出してあげる。
「わたくしはこの・・・」
と言ってエレベーターを指さす。
あぁ、移動問題ね。
王城にエレベーターを通すと上下階の間取りに難が発生しちゃうからね。
エレベーター棟というか塔を作って渡り廊下でつなげるのがベストだ。
王都のアラスタ化と王城の魔改造をすることにしようと思った。
「エレベーター用の場所が有れば良いんだけどね。」
「じゃあそれまでここに住みます。よろしいですね!」
ぞろぞろと使用人たちが入って来て粛々と作業をしている。
警備兵、使用人たちの個室は、現代ビジネスホテルとほぼ同じ内装の1人部屋で風呂なしトイレ付だ。
はっきり言ってこの時代のお貴族様が止まる部屋を狭く小さくした感じだ。
4階や6階の部屋は現代スイートルーム並みの仕上がりな為、こちらが王様達の居住部と勘違いされてしまっていた。
実際王様居住部へ入った者は、他との違いに愕然としていたそうだ。
なにせ現代億ションとかロイヤルスイートルームとかペントハウス同等の設備なのだから。
内装に関しては、今の王城内とこちらのキャンピング馬車という“移動式簡易王城”とでは月とスッポンなくらいの違いがある。
4~7階には各区画に1か所ずつ風呂場がある。
使用人たちのひそひそ話を総合すると、全員こちらで働きたいそうだ。
最終的に別荘と呼ばず、“第二王城”と呼ぶことになった。
第二王城から出てきた僕たちは王都のアラスタ化へ向けて打ち合わせをするため、本城の会議室へ行く事無く、再び第二王城内へと戻って来たのであった。