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41.タルタン村へレッツゴー

雪が積もり、冬籠り時期になった。

魔洗便器のおかげで、僕は村中の家を巡り便所の浄化をしなくて済むようになっている。

なのでようやくハワイではなくタルタン旅行へと行く事が出来る。

夏場で野営を含めて片道7日かかる道のりを、冬場で除雪のされていない街道を行くのである。

『死にに行くの?』と聞かれてしまいそうな環境の中を、人力で“らぷ号”を引いて行くのである。

でもアラスタ村民は心配はしていなさそうだ。

「何故誰も心配してくれないんだろう?」

「そりゃージョンの魔法を信用しているからでしょう。」

何か嬉しくもあり悲しくもある微妙な感覚になる。

玄関前でアレックに定番のアレ“りにあかぁ”と“ういんどばりあ”をかける。

そして僕が農作物の収穫までの間に整備した、雪の積もらないほど良い温かさの村道を通って村門まで来た。

ここから先は雪の中。

アレックは一息吐いて、意を決して目の前の雪の壁へ挑む。

アレックが雪の壁に近づくと、雪が左右に分かれ、街道の地面が現れた。

アレックを中心に半径1M程の半球状に雪の壁が避ける。

街道を進むアレックは道が何処に在るのかが見えるようになったみたいだ。

「何か進むべき方向が明るく、雪が半透明に見えて雪下の道が見えるぞ。」

何と、生き物にかけた“りにあかぁ”と“ういんどばりあ”の隠れた性能が分かった瞬間だ。

「へー、それでポム達が簡単にショートカット出来たんだね。」

どんどんスピードを上げるアレック100m9秒台の速さで走る。

トーン・・・・・・トーン・・・・・・トーン・・・・・・。

数秒に1回地面を蹴る。

時々十数秒惰性で宙を飛んで休んでいる。

アレックは先頭の為、左右に雪が吹き飛ぶ。

すぐ後ろに在る“らぷ号”は幅が有る為、更に雪を吹き飛ばす。

後ろを見ると幅6M程でしっかり雪の無くなった街道が顔を出している。

これはリアル人間キマロキ編成だ。


日が一番高くなった頃一旦休憩する、と思ったがアレックは

「こりゃー楽だー!夕方まで休まず走るぞー!」

と休む気配が無い。

僕達は“らぷ号”の中から窓越しで雪煙と雪原、深森とその奥の刑務所の塀みたいな垂直に近く切り立ったい巨大な山脈を眺めながら、お茶飲んだり、車内の便所に行ったりして寛いでいた。


夕方近くに動く景色がピタッと止まった。

今日はここまでで、その場で野営する。

先ずはアレックにかけた魔法を解除し、“らぷ号”の中に入ってもらう。

タルタン方面は道が判らない位の雪が積もっているので、人はまずやって来ない。

アラスタ方面からだと終着()からなので、来るとしたら顔見知りの村民だ。

盗賊なんて来やしない。

アラスタ以外からここまで来るには、雪かきしながら、若しくは雪を漕いで来なければならない。

だから安心して休める。

床下冷蔵庫から食料を出し料理をする母ちゃん達。

料理はまだ出来ていないが、外から嫌な気配がしてきた。

扉を開けると、目の前にはギラつくドスの数々が見える。

ポムが来てしまった。

せっかく除雪した街道を無視して一直線に来たみたいで、真っ直ぐに除雪されたようなポムの獣雪道が見える。

ポムの鼻息が荒い。

らぷ号“内の皆は青ざめている。

「僕一旦帰るね。」

と言い残しポムに飛び移り、すかさず“りにあかぁ”&“ういんどばりあ”をかける。

その瞬間“グニュン!”と景色が歪んで数秒で“グニュン!”と厩が目の前に現れた。

厩ごと“きれいきれい♡”の僕だけ“えぇーゆだなぁー”をかける。

もう面倒くさいから解除魔法はしないで浮いたまま寝ちゃおう。

とその場で横になり浮いていると

「ジョン、家に帰って。」

とロシナンから声がかかった。

「何で?」

「いや…これから2頭(ふたり)で…えーっと…うーんと…」

「ジョン!察しろよ!」

ポムに怒られた。

その言い方に少し腹が立ったので、かなり鼻息が荒れるまで2頭の角を揉みしだき、

「「早く!」」

と急かされ厩を追いだされた。


翌朝“きれいきれい♡”を2頭にかけた途端、全速力で“らぷ号”玄関前の空中に放置された僕。

「ただいまー!あけてー!」

呼べど叫べど反応が無い。

良い香りがするが反応が無い。

ドアを叩くも反応が無い。

何故だ!


ジョンよ

10.外壁と屋根と床底は遮音・防火耐火・防水撥水仕様・超断熱・防虫・防風・魔法攻撃正反射・物理攻撃正反射・悪意の有る者の侵入拒否。

の“遮音”と“物理攻撃正反射”を忘れてはいませんかね?


しばらく叫んでいると、

「ジョン遅いなー」

と父ちゃんがドアを開けた。

父ちゃんの目線で空中で留まっている僕。

結構長い時間見つめ合っていた。

ようやく“らぷ号”に入れてもらい、僕だけ魔法解除する。

「なんで皆僕を無視するの?」

「「「え?何にも聞こえなかったけど?」」」

「・・・・・・」

「次は一回一回“らぷ号”往復にしてやる!どうせ片道2~3秒だし。」

と言うと、

「マジ?」

と親父。

「もっと時間かかると思ったけれど、一瞬だったよ。」

「じゃー今晩から一緒に泊まれるね。」

と母ちゃん。

だがこの予定は悲しくも実現出来ないのであった。


今日は父ちゃんが“らぷ号”を引く番だ。

でアレックと同じ感じで移動を始めたら昼前に着いてしまった。


そしてタルタン村裏門に一番近くにある母ちゃんの実家、“甘芋ボルト”の家へ向かう僕達一行。

爺ちゃんの家の前まで、父ちゃん先頭の人間キマロキ編成でやって来て、そして下車した。

ドアをノックする母ちゃん。

「おーぅ、今行く。」

ドアが開いた瞬間

「「ただいま!」」

セレン(母ちゃん)&サレン。

「ん?ん?なんでお前たちがここに居るんだ?」


昔、線路の除雪で活躍した除雪列車

”キマロキ編成”

が今回出したかった言葉です。

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