3.生後7か月、そして1歳へ・・
転生して7か月。
やっとつかまり立ちも出来るようになったぞ!
水以外に風の魔法も火の魔法も土の魔法も出来るようになったがまだ秘密にしている。
風は目に見えないから最後の魔力枯渇状態に調整するのに丁度良い。
火魔法は光の見えない高温に調整した火の玉(火球)を空高くに飛ばし去る方法で練習している。
一度雲に当ててみたら火球の通った部分が完全に蒸発してしまって焦ってしまった。
土魔法は・・・・・
穴掘っては埋めるの単純作業の繰り返し。
ブラック…窓際…島○し…。
魔力調整も割と簡単に出来るようになった。
以前のあの
1.魔力量は生まれた時から決まっている。
2.魔法の強さも生まれた時から決まっている。
というこの世界の常識は何なのだろうか?
もう既に魔力量がかなり増えている…ような気がする。
3.魔法の種類や精度は努力次第でどうにかなる。
確かにどうにかなったね。
イメージ大切。
4.何らかの原因により後天的に魔力量や魔法の強さが増えたり減ったりする。
若いうち何歳までが増えやすいのかはこのまま実験中っと。
5.魔法は呪文を唱えなければ発動しない。
ぶつぶつ長々言わなくてもOKって事が判った。
妄想重要。
6.魔力枯渇状態は吐き気とめまいが強烈に襲ってくる。
これは今のところ僕には関係無いみたいだ。
若さなのか、体質なのか分からないけど、だって普通に眠っちゃうんだもん。
7.丸一日魔力枯渇状態で魔力が回復しなければ魔力量が減るか死んでしまう。
試したくないです。ハイ。
だって死にたくないもん。
そういえば、魔力による肉体強化ってのもラノベであったと記憶しているが出来るものだろうか?
魔法の発動は簡単に出来るようになったが、魔力の流れ?魔力自体を感じなければならないような気がするが、さっぱり判らん。
まーそのうち何とかなるかもねー。
本日、転生してから丁度1年たった。
この村では誕生小年、いわゆる誕生月に年齢が1つ上がる。
かなり後に判明するのだが誕生日と表現するのは貴族連中のような、貯えが十分にあり、天候に影響されない生活を常にしている者たちくらいだそうだ。
おしめは既に卒業している。
一般の子達よりかなり早いらしい。
もちろん歩きはじめたのも、話し始めたのもそうだ。
「きょー、きゅーしょーねんににちわ、ぼくのいしゃいのたんじょーびょ。」
(訳:「今日、9小年2日はぼくの1歳の誕生日だよ。」)
うまく喋れるようになったので子供らしく話しちゃう。
けど説明はいままでどおりで堪忍やー。
この世界では1年が10小年。
小年とは地球で言う月みたいなものだ。
小年・・・・もうめんどうくさいから“月“と言おう。
でも言葉に出すときは“小年”と言うよ。
1月は42日なので1年420日なのである。
1日の時間の分け方は日本の江戸時代のような感じで分割されて、
日が出てから沈むまでが日中と言って“中”(なか)
日が沈んでから次の日の出までが“夜”(よる)
と言い、中と夜の各々を10等分して地球と同じ“時”と言っている。
地球で0時と1時の間にあたる時間帯を中1時と言って、1日の始まり。
10時と11時の間を夜1時と言って夜の始まり。
そして中1時から夜10時までが1日となっている。
どの家庭でも中1時の間で朝食を食べ、中6時に昼食、夜1時から夜2時にかけて夕食(晩御飯)を摂っている。
時間の分け方は厳密ではなく、人それぞれで誤差が有る。
僕は既に歩けるようにはなったが、まだ思った通りに動くのが心もとない。
割とすぐに転んでしまう。
結構擦り傷・切り傷・打撲痕が絶えない。
治癒魔法なるものの存在はこの村では無い。
この村では誰も使ったことが無いし見たことも無い。
この村は…物凄い僻地である。
誰かが大怪我しても安静にして、自然に治るのを待つしかない。
都会…町からは人がほとんど来ない。
この村から出ていく人はまずここより少し大きい隣村“タルタン”に行くしかない。
反対側は鬱蒼とした大森林で、その奥には頂上が“どんだけ~~!!”ってくらい高過ぎる山脈が聳え立っているのでこの方面へ向かう人はいない。
隣のタルタン村から更に大きいモーラスト村へ行き、次にまたまた更に大きいケーチャ町に行く。
海の近くにある王都を中心に扇状に広がっていく街・町・村。
簡単な図にすると
王都から、ここアラスタ村までを簡略化して
海│王都 – 街 - 街 - 村 – 街 - 町 - 街 – 街 – 町 – 町 – 村 – 村 – 村
ってな感じだ。
各村や町の間は大人の足で歩いて2日から7日ほどかかる。
街道は人や荷馬車が通った跡なので平均移動速度は遅い。
だが中央行くに従って街道は歩きやすく整備されている部分が多くなる。
ちなみに大きな街の中の横断や外周回りも1日はかかるのだ。
街中は人込みで早く進めないし、外周部は街を広く囲む防壁や堀が有り、立ち入り禁止区域は更に迂回しなければならないので移動時間がかかってしまうのだ。
王都までは歩きのみで100日はかかってしまう。
往復では200日ほどかかってしまうため、行って来いのとんぼ返りで半年はかかる計算だ。
王都に近づくに従って…というか、この村から離れるに従って、賑やかになっていく。
だから、寂れる…廃れる…方面には皆行きたがらない。
なので、都会からこの(王国一小さく貧乏な)アラスタ村に移住してくる酔狂な人は皆無なのである。
この事実を知るのはずっと後になるのであった。
季節はある。
春夏秋冬。
雪が解けて最初の花が咲く頃から春が始まる。
夏はある特定の虫が出始めた頃から始まり、麦の色が黄色に変わるあたりから秋、
雪が降り始める頃が冬となる。
1年の始まりが春、なので1・2月が春、3~6月が夏、7・8月が秋、9・10月が冬である。
今は冬の初め9月である。
既に収穫は終わっている。
大豊作だった。
だが今年の王国内は干ばつによる不作地域が多かったので、大豊作の我がアラスタ村からの徴収量が増えてしまった。
それでも例年より食料の備蓄が増えているので安心できる。
麦の収穫量は例年の2倍・・・。
年貢の徴収量も例年の2倍・・・・。
残りのお祭り用の麦量ももちろん2倍。
しかし、この残り麦欲しさというのは冗談として、他の村が干ばつなのにこの村だけ収穫2倍という事が気になったらしく、領地視察という名目で領主様ご一行が大所帯で来るらしい。
くそっ!せっかくこの村で唯一、おいしい麦が食べる事の出来る祭りができないじゃないか。
って言ってもこの世界では俺…僕はまだ麦食っていない。
米も食っていない。
肉も・・・・。
だって乳離れして間もないし。
だが麦年貢2倍の恩恵はあった。
なんと王国からと領主から肉をいつもの2倍支給される事だ。
塩や香辛料も2倍支給してもらえるのもとてもありがたい。
が、僻地のこの村へ新鮮な肉はあまり来ない。
新鮮な肉は狩猟専門の村民が裏の森を彷徨って半月に1匹仕留めて来るくらいだ。
定期的に商人が運んでくれる程度でも肉や塩はありがたい。
食べ物とは関係ないが、
『次の春までは魔法の練習をし、魔力量の変化の観察を続けよう。』
と思うのであった。