1.転生
初めての投稿です。
更新が不定期になると思いますが、
よろしくお願いします。
南野光太
これが俺の前世での名前だった。
22歳で就職し25歳の時に過労による多臓器不全でICUに送られた。
「俺・もう・・死ぬのかな・・・。」
と呟き眠ってしまったようだった。
目が覚めた。
薄明るい部屋に仰向けで寝ているのがわかった。
体が思うように動かない…動かせない。
動いているのかもわからないが視界が時々ぶれる。
『ああ、神経もダメになってしまったのか』
とボーっと天井を見つめていた。
気が付くと、目の前に人が居た。
何か西部劇に出てくるような服装の茶髪の男女だ。
二人とも俺を見てニコニコしている。
と言うか、微笑んでいると言った方が合っている。
『あれっ?ここってICUじゃなかったっけ?』
などと混乱していたら、俺に何か話しかけてくる。
しかし何をしゃべっているのか、聞いたことのない言語だった。
一応(英・中・仏)の3か国語は勉強していたし他国語もけっこうかじってもいたが、全く聞いたことのない言語であった。
女性が近づいてきた時、違和感があった。
『で、でかい!!巨人か?!』
俺の体くらいの大きさの顔をしている巨人は俺を抱きあげ顔を寄せてきて俺の頬にキスをした。
俺の頬の感覚はきちんと有る。
が体は思うように動かせない。
次の瞬間、女性の乳房が目の前に現れ俺の口へ押し付けてきた。
ここで初めて自分が赤ちゃんとして生まれ変わったのかもしれないと考えた。
そして無意識にというか本能なのか体が勝手に母乳を吸い、腹が満たされたらそのまま眠りに落ちてしまうのであった。
夢だったのかな?それとも…やっぱり生まれ変わったのかな?…転生したっぽいなぁ。
しかも地球ではなく別の惑星…異世界に。
両親が毎日話しかけてくれているおかげで、何を喋っているのか解るようになってきた。
だって意識は一応大人だもん。
父は”ジョーシュ”、母は”セレン”という名前だ。
ちなみに俺は”ジョン”だ。
貴族でもなんでもないので、我々下民は苗字なんてものは無い。
父の“ジョーシュ”という名前なんか、村の中では多数存在しているので、
皆からは”芋畑のジョーシュ”とか”ジョアンの息子”とか呼ばれているが“芋ジョーシュ”って呼ぶ者の方が多いみたいだ。
僕が喋れるようになったら、お酒みたいな響きの名前だから父の事“芋焼酎”って言っちゃうぞ、どうせ日本語わからないだろうし。
“ジョアンの息子”の”ジョアン”とはもちろん俺の祖父で、こちらも別に芋畑を世話している。
俺たちは芋ファミリーだ。
ちなみに、麦畑をやっている人物の名前も”ジョーシュ”で、そこの息子が”ジョアン”と言う。
なかなかに面倒くさい村なのである。
ここは“ノードスカー王国“の”ソナント領“の一番外れにある”アラスタ村“という所。
アラスタ村の半数が農家で、年貢として麦のほとんどを領主へ納めなければならない。
収められた麦は国の指示で、領主が各地へ送るなどする。
なので、この村では麦がほとんど残らないから主食は芋になってしまう。
残る極々少量の麦は中央のお偉いさんが来た時の食事の為に保存しているという形になっているが、
このお偉いさんが来ない年は村祭りの時に消費する特別な御馳走である。
この村の収穫農作物は村長が管理し各家庭に配分する。
時々滅多に…ほとんど来ない旅人に売ったりしてお金を貯める。
お金は働き具合により帳簿が付けられ、旅に出る時や、商人が来村した時に各家庭に払い戻される。
買い物等が終わり残った金銭は、再び村長宅へ預ける形になる。
いわゆる村長宅が貯金箱みたいなものだ。
俺が転生してから3か月を過ぎた頃ふと気が付いた。
『俺ってあまりおしめを替えてもらっていない。』
でも出るものは出ているはずだが、おしめを変えてもらっている記憶がほとんど無い。
母乳を吸っちゃ寝吸っちゃ寝しているので、それなりに出ているはずだが・・・
というか確実にひねり出している。
気になったので漏らしてみた。
すると直ぐに母が来た。
どうやら臭いで気が付いたようだ。
おしめに手を翳し、ぶつぶつ呟いた。
呟き終わったらいつの間にか股間あたりがすっきりしている。
・・・・・???
魔法??
1日4回ほど致しているが4回とも「ぶつぶつ」・・・・・スッキリ!
・・・・・魔法っぽい。
魔法(?)が使える世界なのか?・・・。
そういえば電気もないのに夜になっても家の中が割と明るかったりしていたな。
部屋の中を見回しても証明器具とか無いように見える。
水は水差しを使っているみたいだし、水道も家の中にある感じがしない。
結論、水は井戸から汲んできて、明かりは・・・
なんと!魔法だ!!
父が「ぶつぶつ・・・」すると掌から明るい光の玉が出てきて天井中央付近まで行き留まった。
父は廊下兼玄関行って「ぶつぶつ」・・・”ピカッ!”。
そして疲れた表情で居間兼食堂兼寝室であるこの場に戻って来た。
いわゆる結構広いワンルーム。
母は父に
「灯りお疲れ様。魔力大丈夫?」
と声をかける。
「今回、灯りは2か所で限界だ・・・。」
「私は、ジョンのおしめの浄化で1日4回が限度だわ。連続浄化はできないし。」
「ありがとう、オレは便所の浄化を何とか最低2回以上はしたいよ。」
「私が灯り魔法を使うと浄化回数が減っちゃうからゴメンね。」
と話をしている。
『ぉおおっしゃー!!やっぱ魔法だー!!』
と心の中だけでガッツポーズを決めて雄叫びを上げる俺。
魔法使えるかな?
使ってみたい。
でも結構長い呪文だったなー、良く聞こえなかったし。
でも魔法とは何ぞや?
…そのうち判るでしょうと心の中で呟いてその日は眠りにつくのであった。