表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セカイの世界  作者: サクツキ
第四章 緋凶の悪童と赤炎の闘士
49/151

赤の王女と原初の鏡

二章頃から活動報告にあらすじ擬きを書いてるのですけど、それは前書きに書いた方がいいのでしょうか?

トロンの街を出て、王都レービルドとの間にある村『メラオラ』へと向けて歩く俺達。

空は既に夕焼けとなり、暑い日差しは冷たい夜空へと変わりつつあった。


「アルメラに来てから日が沈むまで出歩くことはなかったが…………」

「何かこう、昼と夜が変わるって実感できるね」


沈む西日の暑さは徐々に失われ、昇る月に伴い冷たい夜風が体を包み、太陽光から体を守るためのマントは冷風から体温を保つためにとその役割を一転させた。


「砂漠は昼は暑くて夜は冷え込むって言うけど、荒野もそうだったとはな…………」

「そろそろメラオラに着きたいね。そうじゃないと風邪引きそう」


レンはそう言って身を竦めてマントを全身に巻くように纏う。その瞬間、俺達の腹から高い音が鳴った。


「あう……………………」

「そうだよな。朝は軽めで昼は食ってねぇ、そりゃあ腹減るよな」


腹の音が鳴ったことに俺は咳払いをし、レンは腹を押さえて赤くなる。

そのまま何も言わずとも俺達は早足で歩き出し、しばらくして遠目に明かりを見つけた。


「セカイ!あれ!」

「今まで来た道の位置からして、あそこがメラオラだな」

「本当!?なら急ごう!!」


レンが明かりを指差す横で、地図を見て明かりの場所がメラオラだと確かめる。

そしてあの光のあるところがメラオラだと言うと、レンは俺の手を引いてメラオラへと走り出した。


「すみませーん!!入れてくださーい!!」


メラオラ前までたどり着くと、村の入口を守る憲兵に村に入れてくれるよう頼み込む。


「通ってよし…………完全閉門までギリギリだったな」


俺達の身なりを見て、旅人だと理解した憲兵は村の門を開けて俺達が通れるようにしてくれた。

そしてメラオラへと入ると同時に門が閉じ、内側に居た憲兵が門に閂をかける。それを見て俺達はほっと一息つく。


「よかったぁ~~間に合った~~」

「ギリッギリだったなほんとに…………」


へなへなと座り込むレンに俺は閉められた門をみてそう呟く。

憲兵の口振りから察するに、完全に閉められたら俺達は外で野宿するしかなかっただろう。

よしんば憲兵の情けを受けて室内に入れたとしても、十中八九憲兵の詰所の可能性が大きかった。


「ほらレン、へたり込んでないで宿探すぞ」

「っと、そうだった。空いてる宿あるかな…………」


レンを立たせると俺達はどこか宿がないかを探す。地図上では小さな村だったからすぐ見つかるかと思ったが、なかなか見つからない。

宿を探して村の奥へと歩いていくと、どこから女性の声が聞こえてきた。


「やめてください!」

「へっへっへっ!いいじゃねぇか嬢ちゃん。俺達と愉しいことしようぜぇ?」


抵抗する女性の声と下卑た笑い声をあげる男達の声、それが俺達の隣にある路地の向こうから聞こえてくる。

何で昼間に男女のあれこれに関するものを見せつけられた後に、こんなことに巻き込まれるのかねぇ…………。そう思ってため息をつく俺に、レンは裾を引いてきた。


「セカイ…………」

「分かってるって、行くぞ」


同じ女として見過ごせない顔をしていたレンを見て、俺もここで見逃すのは後味悪いと思って共に路地裏へと入る。

路地を進むにつれ話し声は大きくなり、俺達は互いに顔を見合わせてそれぞれ武器を準備する。そして路地裏を出ると同時に声の方へと武器を突きつけた。


「そこまでだ!!」


レンがそう叫び、そこに居た男女の視線が集まる。女性は全身を外套で包みフードを深めに被って顔はいまいち見えにくいが、僅かに見える口元から相当な美人だと推測できる。

男達は大柄な男に2人の取り巻き…………って、こいつら見たことあるぞ。


「またかよお前ら…………」

「げえっ!?お前達は!?」


ため息をつく俺に、男達──ウド達も俺達が何者なのか気づいたらしく汚い驚きの声をあげた。


「憲兵に連れてかれたはずだよな?何でもう解放されてんだ?」

「う、うるせぇ!関係あるか!!」


そう俺達に怒鳴るもその腰は後ろに引けていて、ウドに至っては内股だ。俺が僅かに足を振りかぶるように下げると、揃いも揃って内股になる。


「ど……どうすんだよウド、もうこいつらとはやりあいたくねぇよ…………」

「お前みたいに玉潰されたくねぇんだよ!」

「ちぃ……こいつらが居るってことは、あの拳闘士も居るってことだろ…………流石に分が悪いな…………」


3人が俺達とやりあうかの相談をしているが、俺達と一緒に居たクリムのことを警戒して乗り気ではなさそうだ。そして3人組は俺達に背を向けて路地裏から逃げ出した。


「覚えてろよー!!」

「大丈夫ですか?」


そう捨て台詞を吐いて去って行くウド達を無視して、レンが女性に駆け寄る。

異にも介されない3人組に憐れみを感じながらも、俺も無視して女性の元へと近づいた。


「気をつけなって。夜遅くに出歩いちゃ、あんな輩に絡まれるんだから」

「すみません…………ですが、急ぎの用がありまして…………」


そう言って女性は俺達の元から去ろうとするが、レンがそれを呼び止める。


「セカイが言いましたけど、こんな夜に1人は危ないですよ。僕達も付き合います!」

「あの……お気持ちは嬉しいのですが…………」


足を止めた女性は俺達を見て何か悩み、そして意を決したように頷く。


「…………分かりました、それではよろしくお願いします」


そう頭を下げた女性に俺達は頷き、女性の後に続いて歩き出した。






「…………ここです」


メラオラの中央から外れ、周りの建物が少なくなった場所にある小さな小屋の前で女性が立ち止まる。

その小屋の前には、小さな村には似つかわしくない装備を身につけた兵士の男2人が扉の前に立っていた。兵士達は女性が来たのを見るとすぐさま駆け寄り、俺達を目にして女性の耳元へと顔を近づける。

俺達には聞こえない大きさで何かを話していると、女性が首を振ってこう言った。


「彼らは怪しいものではありません。彼らも入れさせてください」


女性の言葉を聞いて兵士達は困惑の表情を浮かべるも、女性の命令を聞いて扉の前を空ける。


「一緒に入ってください」

「いや、ちょっと待ってくれ」

「兵士に何か話してましたけど、ここって…………それ以前に、兵士にそう指示を出せる貴女は一体誰なんですか!?」


女性の命令を聞いた兵士達の態度を見て、何者なのかを聞いてしまう。すると女性は被っていたフードを取り素顔を明らかにした。


「私はマーニ。マーニ・カーマ・アルメラ、この国の第1王女です」


ルビーの様に煌めく瞳に、同じように輝く赤髪を持った女性──マーニさんは自分のことをそう名乗った──って、第1王女だと!?


「え、ええ「まずい!!」もがっ!?」


驚きの声を強引に飲み込んで、隣で絶叫しそうになっていたレンの口を抑えて黙らせる。

モガモガと息を詰まらせながらも俺の腕を叩いてくる。手を離すと吸えなかった息を深く吸い、俺の胸ぐらを掴んできた。


「何すんのセ「静かに……!」カイ…………って、何を…………」


大声を出して俺に詰め寄るレンに、俺は指をたてて静かにするよう言う。レンも俺のその行動で静かになり、どうしてそんなことをしたのか聞いてくる。


「国の第1王女が、外套被って名を明かさずに来てたんだぞ。お忍びに決まっている」

「む、そうか…………ごめん、大声出しそうになって…………」

「気にすんな、俺だって強引に飲み込んだんだから」


そうお互いに謝っていると、兵士達が俺達の肩を掴んでくる。振り返ると兵士達はマーニさんが待っている扉に目をやった。

王女を待たせていたことに顔を青くして、兵士達に頭を下げてマーニさんの元へと向かう。


「えっと…………すみません、見苦しい真似を見せて…………」

「ごめんなさい…………貴女のことに気づかずに…………」


2人揃ってマーニさんに頭を下げる。するとマーニさんはおかしそうに笑っていた。


「いえ、別に気にしてませんよ。それよりも、むしろ安心しました。変な打算をもって私を助けた訳ではなかったのですからね」


そう笑いながら言うマーニさんに俺達は目を逸らす。話を戻すために俺は咳払いをして話を切り出した。


「こほん…………それで、この小屋は一体……?」

「…………この事は内密にお願いします、詳しくは中で…………」


笑みを浮かべていた顔を収め真剣な表情でそう言うと、マーニさんは扉を開けて小屋の中へと入って行く。

俺達もその後に続いて小屋の中へと入ると同時に、老人の咳き込む音が聞こえてきた。


「げほっごほっ…………ぬぅ…………」

「先生、ミランさんのご様態は…………?」

「…………申し訳ありません。進行は止まってはいますものの、快復の見込みは…………」

「そうですか…………」


部屋に入るとそこに居たのは、床に伏せる老人とそれに寄り添う1人の医者だった。マーニさんは部屋に入ると医者に老人の様態を聞くも、返ってきた暗い報告に顔を伏せる。


「あの、この人は…………」


状況の分からない俺はおずおずと手を挙げてどういう状況なのかを聞くと、俺達の方に振り返ったマーニさんは老人へと視線を向けながら説明し始めた。


「…………そこに横になっている方はミランさん。この国で名うての鏡職人です」

「鏡職人…………」


マーニさんの紹介を受けた老人──ミランさんへとレンが視線を向ける。横になりながら咳き込む姿は、明らかに健康体とは言えず、医者の言葉からしても何かしらの病気を患っているのだろう。

けれど、どうしても引っ掛かることがあるんだよな…………。


「セカイさんの言いたいことも分かります。何故一介の鏡職人にこれ程までに手厚い介護がなされているのかでしょう?」


マーニさんの言葉に俺は頷く。入口を守る兵士達に付きっきりの医者、そしてお忍びで面会に来る王女と明らかにただ事ではない。


「今からその理由をお答えします。あれを見てください」


そう言ってマーニさんは部屋の奥を指差す。そこには布がかけられた俺達が抱えて持ち運べるほどの大きさの鏡が立て掛けられており、マーニさんは鏡の横に移動するとかけられた布を外し、その鏡を俺達に見せてきた。


「鏡か?けれど…………」

「割れてるね…………」


布の下にあった鏡は、表面全部にひび割れが走り俺達の姿を写しはしない。鏡職人にこういう修復の依頼が来るのは分かるけど、これがあれほど国からの介護を受ける理由なのか?


「これは『原初の鏡』。炎闘祭にて使われる祭具です」

「「!!」」


鏡の名前と使用用途を聞いて俺達は目を見開く。炎闘祭で使うものだって!?


「つまりこれだけの介護の理由は…………」

「この人にあの鏡を修復して貰いたいってわけか」

「はい」


そう言うマーニさんだが、俺は新しい疑問が出てくる。


「あの、他の人に修復を頼むことは出来なかったんすか?」


俺の問いにマーニさんは首を振る。この人でなければいけない理由があるのだろうか。


「この鏡は、鏡面の素材にプリミア鉱石という特別な鉱石を使用しているのです。そして、その鉱石を加工できるのはミランさんしか居ないのです」


そう言って再びミランさんの方を見る、この人にしか修復できないのか。それなら介護の理由に納得はいくも、今度は別の疑問が出てきた。


「炎闘祭の祭具って言いましたよね?それがどうしてこんなことに…………」


そう言いながら原初の鏡を見る。年に1度の祭りの祭具というのなら、管理は国がやっているはずだ。それなのに何でこうなってるんだ?


「…………ことの切っ掛けは1年前、前回の炎闘祭が終了した後でした…………」


そう言ってマーニさんは原初の鏡がこうなったのかを話し始めた。





──1年前の炎闘祭、それが終わり原初の鏡は祭具殿に仕舞われていました。

しかし、月1の大規模清掃にて祭具殿が開かれると、その中より原初の鏡な紛失していたのです。

もちろんそれは国の一大事として、兵士の大半を用いて捜索し紛失した原初の鏡は発見されました。

ですが、その際に発見された原初の鏡は、表面が無残にも破壊されていたのです──





「つまり、何者かが祭具殿に侵入して鏡を持ち出して、その鏡を破壊したってこと?」


マーニさんの話を聞いたレンがそう聞くと、マーニさんは小さく頷く。


「その後即座に修復をミランさんに依頼して、素材となるプリミア鉱石も確保しました。ですが…………」

「いざ加工を始める段階で、ミランさんが病に倒れた、と…………」


俺の言葉にマーニさんが頷く。もうすぐ炎闘祭が開催されるというのに、修復の目処が立っていないというわけか…………。


「…………はん、最初っから直す気のないのによく言うわい」

「「「「!!」」」」


突如として老人の声が割り込んできて、俺達は声の方を向く。そこにはミランさんが肘をついて上体を起こして、胡乱げな表情を浮かべてマーニさんと医者を見ていた。


「起きたんですか!」

「喧しい話をされちゃ、おちおち寝れんよ」


心配して駆け寄るマーニさんに対して、ミランさんはそう吐き捨てる。いや、それよりも気になることがあるんだが?


「あの、直す気がないって…………?」

「儂に修復を頼んで早々、差し入れとして贈られてきた菓子。それを食ってからこうなったんじゃ!」


俺の問いにミランさんはそう答える。いや、それだけだとただの食あたりとしか思えないんだけど…………。


「その後に食中りに効く薬も渡されたが、それを飲んでも一向に治らん。それどころかむしろ悪化する始末じゃ」


そうマーニさんと医者の2人を睨み付けながら言う。俺はその視線を向けられた2人に聞いた。


「あの、ちゃんとした薬を渡したんですよね?」

「渡しましたよ!国の一大事ですもの!!」

「わかった、わかりましたから離れて……!」


そう詰め寄ってくるマーニさんに、俺は引きなが手で抑える。正気に戻ったマーニさんは、咳払いをして元居た場所へと下がっていき、俺は改めて医者に聞く。


「もう1度聞きますけど、薬はちゃんとしたものを渡したんですよね?」

「ええ、私自ら調合した薬です」


2人から自分達はちゃんとした薬を出したと聞いて、俺はミランさんの方へと振り返った。


「ミランさん、2人はちゃんとした薬を出したって言ってますけど…………」

「信用ならんわ。特にそこの医者!ちゃんとした効果が出ないのは、お主の腕がへっぽこなのが理由か!!」

「な!!私は国王直々に病院を任されるほどの腕前です!!取り消していただきたい!!」

「落ち着きなさい!!ミランさんも煽るようなことを言わないで!!」


ミランさんの皮肉に医者がキレて掴みかかる。マーニさんが間に入り止めようとするも、ミランさんはさらに煽るように言う。


「町医者からやり直せい!ゼノンの薬の方がよっぽど聞くわい!!」

「「!?」」


ミランさんの口から放たれた知り合いの名前に、俺達は身を強張らせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ