成人病三冠王、俺☆
本日2話目投稿です。
ストックはあまりありませんが、できる限り毎日更新したいです!
「お前は阿呆か」
気づいたら俺は暗がりのなかで正座をしていた。夢からむりやり醒めるように声の聞こえた方に意識を集中させると、目の前には洋風美人が呆れたようにこちらを見ている。
金髪碧眼、ボンキュッボンは、昔資料集で見たニケ像みたいな恰好をしている。零れそうなおっぱ……乳房。正直、ちょっと趣味じゃない。俺は髪の毛黒髪ストレートで色白で小柄で、ニーソが似合ってちょっとつり目で貧乳がいい。
洋モノ美女は軽蔑を湛えた目で俺を見ている。ちなみに俺にこういう趣味はない。
「萩原律、16歳だったな」
「あ、はい」
「なんで死んだか分かるか?」
あ、やっぱ死んだんだ。確かに俺は自分が死んでいく瞬間を感じていたからなのか、それとも変な夢を見ているからなのかは分からないが。
というか、なんで俺尋問されてるの? 夢ならいい夢見させてくれよ。
「え、あは、寿命スかね……?」
ヘラりと笑うと、美女は思い切り顔を顰めた。
「糖尿病、高血圧、痛風を元に脳梗塞と心不全だ。昼食のカップヌードルチャーシューマシマシは美味かったか? 清涼飲料水で流し込むように飲んでいたようだが?」
ヒュ、と喉が鳴った。
え、俺、もしかして、DTなのに成人病三冠王になって死んだのか。でも体重は確かにちょっと平均よりはあったかもしれないけどメタボではなかった! そう太ってはいなかったというのに! 確かに腹はぷにっていた! でも、デブではなかったのだ!
「で、デブってなかったし……」
「でも死んだ」
「若いから奇跡的に生き返るなどと言うことは?」
美女は鼻で笑った。
「まぁ? これから先透析で療養食しか食べられなくても良いというのなら元の場所に戻してやってもいいが? どの道長くないが?」
そんな状態で生き返りたくないな。
「あと、お前の兄が従兄に死因を聞かれて『レスバ惨敗で憤死ですぞwww』と報告しているせいで、そういうことになっている。直接原因は心不全なので、まぁ、全部嘘かと言われると……」
絶対に生き返りたくなくなった。親族と顔を合わせたくない。
厳しい親父に拳骨されているまさにその瞬間が見られるなら、ちょっといい気もするが。
「闘病しに戻るというのなら止めないが、一つ提案がある」
美女は今までの軽蔑の表情をガラリと変えて微笑んだ。
「私の管理する世界で、旅をしてみないか?」
「旅?」
「そうだ。剣と魔法の世界で、魔王を倒すべく旅に出る! 魔王を倒せば富や名声が手に入るぞ! もちろんこちらからの依頼だ、病気は治しておいてやる」
キツそう……。
「しかも今ならお前に、全てを切り裂く剣と全てを防ぐ盾の使用権をやる!」
俺この問題古典の教科書で見たことあるぞ。鼻息荒い美女を横目に冷ややかな気持ちだ。
「その盾を剣で切ったらどうなるんだよ」
「お前が両方装備するから関係ない」
「おい説明しろよ」
「黙秘する」
それが人の死後の進路を決定するヤツの台詞か!?
俺は美女から目を反らして断固拒否の姿勢だ。予習をしてきていない、頼む先生当てないでくださいの姿勢。
「頼む」
「いやだ」
「お前と仲間は魔王を倒すまで決して死なないぞ?」
「富と名声とかいらん。普通に楽して生きていきたい」
「ほーぉ? 学業も仕事も励まないお前が? 普通に? 片腹痛いわッ」
それでも嫌なものは嫌だ!
俺は首を左右にブンブン振った。しんどいことは大嫌い、楽して生きたい高校生なのだ。かといって死にたくない。
「嫌だっ! 黒髪貧乳ロリに飼われるポメラニアンになりたい!! 痛い思いはしたくないっ!」
断固拒否の姿勢を示す俺に、女神(悪魔)は囁いた。
「あっちの世界には風俗があるぞ。ちゃーんとしたヤツだ。同い年の子もいるぞ?」
「えっ、行きたい」
流石の俺も反省したさ。顔の見えない連中相手に、反射的にレスバしすぎだった、って。行きたいと言ったな? あれは嘘だ。
だが恐ろしいかな、行きたいと言ってしまった。顔を上げた瞬間の女神の顔と言ったら、やっぱり俺の迎えは、死神でも天使でもなく悪魔だったんだな、悪いことって本当にするもんじゃないな、と反省させられる程度には悪人面だった。
魔王なんて知るか! 俺が夜の魔王として君臨してやる!!
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