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一章3話 白髪の少女

ふと誰か手を握られている感じがした。

目が覚めたきっかけはそれだった。


目を開けると、見たことの無い天井、

そして、小鳥のさえずりが聞こえてきた。


「夢……じゃなかったのか」


さすがに夢と思いたかった痛みも、和らいではいるがまだ痛い。

体を起こそうとしても、痛みで力がうまく入らなかった。


「起きたか……リンドウ君」


それは聞き覚えのある声で、手が握られている方から聞こえてくる。

動ける範囲で首を動かすと、声の先には部屋着のユルレイが椅子に座り、こちらを眺めていた。


「まだ動くなよ? 傷が完全には塞げ切れていないからさ」


その声は気を失うまでのユルレイの声とは程遠く、

林道には、とても暗い声に聞こえてきた。

そんなユルレイに向かって、林道が笑いかけると、

ユルレイは目を見開き、その目からは涙が流れてきた。


「ゆ、ユルレイさん!?」


林道が声を荒げる。

さっきまであんなに凛々しい姿をしていたユルレイが、

今、林道の目の前では子供のように顔をクシャクシャにして泣いているのだ。


「なんであんな無茶をしたんだ! 君が死んでたら……私は」


涙声で震えながらも、凛々しいユルレイの声が林道にぶつかる。

静けさの中で、その声だけが部屋中に響き渡り、林道は圧倒された。


しかし、すぐにユルレイの声と表情は柔らかくなり、

涙を拭いた後に林道に向かって抱き着いた。


「でも……ありがとう。 初対面の私を助けてくれて……

君は私の命の恩人だ! ありがとう……ありがとう」


涙を流しながら何度もお礼を言うユルレイの胸は、林道の体に押し付けられる。


そんなユルレイのいい匂いと柔らかい感触に、

理性という理性が欲望を抑えるために仕事を始めた。

そんな事が5分くらい続いた後、ユルレイはようやく泣き止んだのであった。


「ユルレイさん、そろそろいいですかね?」


林道がユルレイに話しかけるが、反応がない。

不思議に思った林道が、顔を近づけると、小さい寝息が聞こえてきた。


起こすのも悪いので、ユルレイをベッドに寝かせて、

ベッドから立ち上がろうとした瞬間、部屋の扉の方から声が聞こえてくる。


「お客様、この家の当主とイチャイチャするのは終わりましたか?」


扉から出てきたのは長い耳が特徴的な白髪の美少女で、

心情が読み取れないすました顔が、クールキャラを強調していた。


「クーデレ白髪エルフロリッ娘……だと?」


林道の思いは一つであった。

――何なんだこの漫画だと人気キャラになりそうな完璧なルックスは!

エルフのロリは、誰でも愛せる最強装備である。

そこにクールという性格のスパイスを加えることで、この子はいつデレてくれるんだろうか?

と、期待に胸が膨らむのである。


そんな激レア存在に出会ってしまった林道は、

嬉しさのあまり心で思ったことがすぐに口に出てしまう。

それを聞いたエルフっ娘は、眉をひそめた。


「その意味の分からない用語は、このカウランに向かって言っているのですか?

それだったら、とても不愉快です。 今すぐ訂正してください。

カウランは今年で483歳の年を迎えます。 あなたよりずっと年上なのです。

それなのにロリっ娘などと呼ばれるとは、心外です」


この世界にも、ロリというワードがあるらしい。

この世界を林道は、どこか日本に似ていると言うか、地球に似ている気がしてならなかった。


「悪い悪い、ロリっ娘は訂正しよう」


「分かればいいんです。 カウランはもう大人。 

もう人間だとおばあさんをはるかに超えているのです。

おばあ、さんを……はぁ」


自分で自分自身の地雷を踏んだようだ。


そのカウランと名乗る少女? は、見た感じ魔法使いである。

杖を持ちローブを着ている、典型的なやつである。


「お客様、ここの机にある本は何ですか?」


テンションがガタ落ちして、ぶつぶつとつぶやいていたカウランが、

机の上にある、何冊かの本に興味を示し普通の喋り方に戻った。


表情には気持ちが現れないかわりに他のことでの意思表示はすごいように見える。


そして、カウランが興味を示した本だが、

林道が面白そうな小説を本屋で片っ端から集めたものである。

その合計は、18冊でなかなかの重量であった。


見た感じだと雨に濡れたせいか、しわしわになっている。

しかし、これは他の異世界の奴と仲良くなるチャンスかもしれない。


そう思った林道はカウランと話すことに決めて、カウランの目を見つめた。



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