マティアス様の告白?
すみません、随分更新が遅れてしまいました。
昨夜も中途半端なのをあげて、慌てて取り消したので混乱された方申し訳ないです。
夕方、マティアス様が帰られる際に、私にお礼を言いに来た。非常に殊勝で珍しいことのため、ちょっと私は驚いた。
「アイリーテ嬢、約束通り二人きりにしてくれてありがとう。無事に用事は済んだ。」
「こちらこそ、良いご本をありがとうこざいます、面白かったです。そう、シェーラ妃殿下にお伝えくださいませ。あと、ルチアとは思う存分話ができましたの?」
ちょっと、答えに詰まったような顔をするマティアス様。
「一件は数年後に持越しとなった。だが、もう一件の話は無事に済んだ。」
こちらとしては数年後の分は打ち切りだな、打ち切り。次はない予定だし。マティアス様は私のそんな内心とは関係なく、真剣な様子で話を続けた。
「バーシュタイン家に話は通さないといけないだろうから、先に言うが、12歳になったら王立学園に通うように打診したのだ。あれだけの才を埋もれさせるのは惜しい。それに、他国に渡すのも国損になるからな。父上や陛下からバーシュタイン公爵にもこの話は通すことになっている。まぁ、まずは当人に了承をもらうのが筋なので、二人っきりで話をさせてもらったのだ。」
王族からの打診は命令に等しい。それが子供のマティアス様だけでなく、国王陛下や王太子殿下が了承したとは、これいかに。才能っていうのがよくわからないが、もう、ルチアとの婚約を前提に決まってしまったというのだろうか?
「何故そんな話に?」
「ルチア嬢に希有な魔法の才が見いだされたからだ。」
「え?そうなんですか?」
それは初耳だったので私は驚いた。いつ、ルチアが魔法を使ったんだろう?
「アイリーテ嬢は知らなかったのか。ルチア嬢から聞いていないのか?あの襲撃の日の話だが。」
私は血の気が引いていた。まさか、ルチア=ユーリがバレたのか?ユーリは確かにマティアス様の前で魔法を使った。
「あの日は忙しく動いておりましたから、夜もすぐ眠りましたので。」
あの日は帰って家中に灯りをつけて回り、晩餐に、影の封印に、夜通し女子会というかフィリスのお説教でくたくただった記憶しかない。
とりあえず、知らなかったアピールをして、マティアス様が説明してくれるのを待つ。
「ああ、そうだったな。アイリーテ嬢がかの者に襲われた日。御者からあとで報告があったのだ。馬車が人ごみと、荷馬車の多さに立ち往生した時、ルチア嬢が馬車から降り飛んだとな。」
「え・・・・・?飛んだとは?」
「文字通り飛んだのだ。風の魔法でドレスをはためかせてふわりと舞い上がり、公爵家の方に消えていったらしい。」
私は血の気がひいた、ユーリが心配してくれていることはわかっていた。私はその気持ちを甘く見積りすぎていた。彼は後先考えず早く帰る方法をとったのだ。
「それはまさに、空を舞う妖精か女神のようだったと。ドレスの内側はあまりに早くて見えていないのでご安心をと、御者のジョシュが言っていた。一応街の人に裏をとってあるが、皆あまりに速すぎてドレスの内側なんて見えなかったらしい。」
「何の裏をとるのに、街の人に聞いて回ってるんですか?」
つい、視線がゴミを見るような目になってしまう。声の冷たさに焦ったのか、マティアス様が慌てて言い訳をする。
「そ、そりゃ、一人だけの話を鵜呑みにする訳にはいかないからな。も、もちろん空を飛んだ話に決まっているだろう、他に何もないさ!まぁ、それだけ魔法の才能がある者を野に置くものじゃない。早くから教育をすべきなのだが、外国にご両親がおられる状態では保護も出来ない。だから、王立学園への留学枠を用意するので、十二才になったら来て欲しいことを伝えたのだ。」
なんだか、話がすごく大きくなっている気がする。もう、毒を食らわば皿までというのもあるし、プロポーズとかも想定していたから、なんとなくマシな気がする・・・多分。
「ルチアは何と?」
「お受けしたいが、まずは国元の親に聞いてみたいと。だから、明日サントカルに帰ることになった。」
ルチアの滞在予定が三日ほど短縮された、さすがにユーリもこの話が出て長居するのはまずいと思ったのだろう。
「ですが、ちょっと意外でした。」
まぁ、予想外の話を聞かされたので驚きはしたが、なんとなく疑問に思っていたことを聞いてみた。
「二人で話したいと言われたので、てっきりプロポーズでもされるのかと思ってました。」
「ごほっ、何故バレている?」
焦るマティアス様、どうやら予想は合っていたらしい。
「逆に、何故バレないと思ったのかが疑問です。」
「私が一人で完結してるんじゃないかと思ったからだ。ストーカーとやらのように。」
ふて腐れたようにマティアス様が語る。
「ルチア嬢は優しい。しかし、アイリーテ嬢に言われてから考えてしまったんだ。それが王族に対しての遠慮で、私には何も言えないんじゃないかと思ったからだ。」
「学習能力あったんですね。」
そこは心底感心した。
「ひどい言い方だ。私は今のようなお膳立てした状況ではなく。ルチア嬢には学園に入ってから自由に過ごしてもらい、彼女の意思で私を見てくれる時間が欲しかったんだ。あと、これで私がストーカーとやらではなく、相手の意見を待てる良識ある人間だと、アイリーテ嬢もわかってもらえるかと思う。」
「いいえ、マティアス様はやっぱり自己完結されるストーカー気質なのは間違いありません。」
私は金髪碧眼の少年に言い切る。
「街の人や御者のジョシュが、万が一ドレスの中を見ていたらどうするつもりでしたか?」
「城に連行して、彼女の名誉のために然るべき、記憶を消す等しかるべき処置をだな。」
やはり、話がすごく大変なことになっている。
かなり、広範囲に街の人に聞いて回ってそうだ。その程度で記憶を消すか・・・・。変に面白おかしく吹聴する者がいたら、命まで消しそうな危うさを感じる。王族の権力って怖い。
「マティアス様、お考え下さい。ルチアは私を助けようと公爵家に急ぎ帰ったのでしょう?そんな優しいルチアが、街の人を連行するような真似を望むでしょうか?」
まぁ、記憶から消して欲しい黒歴史でも、普通は良識があればいちいち街の人を連行してまで実行しない。自分が空飛んだせいで、下着を目撃した人が殺されたらどんな人でも罪悪感半端ないと思う。
「・・・・・・・・確かに、先走りすぎたようだ。」
その言葉が、すぐマティアス様から出たのは意外だった。
マティアス様が素直に人の意見を聴けるなんて!?そんな気持ちが言葉になって転がりでる。
「マティアス様人の話聞けるようになったのは進歩ですよ!今ちょっと大人になりましたね!いつかマティアス様も中身でモテるかもしれません!」
「アイリーテ嬢は相変わらず、口のきき方がすごく偉そうだぞ!そのままだと・・・・・まぁ、そのままでいいか。」
「私の口のきき方がどうされましたか?」
「そのままの方がアイリーテ嬢らしいし、そのまま傍若無人なままだったら、公爵家の令嬢とはいえ皆逃げていくからな。その方がいい。」
「??モテない同志が欲しいと?」
「一緒にするな!アイリーテ嬢の言う通り、身分だけかもしれないが私はすごくモテているぞ!令嬢たちに言い寄られまくりだ!怖くて逃げたいくらいにな。アイリーテ嬢から皆が逃げて欲しいのは何故だろうな。なんとなく、言ってしまっただけで意味はない。強いて言えば、悪の首魁アイリーテ嬢には今の口調がぴったりだからかな。」
「ほーっほっほっほっ、お誉めいただき光栄ですわ。大丈夫、マティアス様は身分だけじゃないです。外見もいいですから。」
私の言葉にマティアス様が首を傾げる。
「なんだろうな、誉められているはずなのに、やっぱり全然誉められている気がしないのは。」
「それはお互い様ですわ、マティアス様。」
私はにっこりマティアス様に笑ってみせた。
更新遅れで申し訳ない限りなのですが、年度の境目でリアルがバタバタしております。
更新が不安定になりますが、また宜しければ見に来てくださいませm(_ _)m




