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事後処理2

すみません、やっと更新できました!

 晩餐の席には席が四つ、私とマティアス様、お父様、そしてもう一つの席には既に人が座っていた。壮年の少し白髪が混じったような紳士、年の頃は40前後だろうか?白い服の服からして神官だと思われた。まぁ、私は出会った時に失礼のないように、一般常識的な本や遠くから見た程度で、神殿やその支部たる教会に足を運んだことはないから、断言はできないが。


 お父様が立ちあがり彼を紹介する。


「こちら近くの教会を預かる神官、ラス様です。マティアス様、アイリーテ、今日の晩餐は、色々難しい話もあるのでルチアには遠慮してもらうことになりました。」


 ラス様も立ちあがり子供の私たちに挨拶と、丁寧な報告をして下さった。


「いつも公爵閣下にはお世話になっております。マティアス様、姫様、先程ハイマートと呼ばれる騎士の方を診させていただきました。意識はありませんが、命に別状はないかと思います。話の経緯からまだ何とも言えないので、拘束は継続中です。」

「ご丁寧にありがとうございます。」


 社会人的な口調で私は反射的にお礼を言ったが、マティアス様は真摯な口調でラス様やお父様にお礼を述べた。


「バーシュタイン公爵、ラス殿、あらためてハイマートを助けていただきありがとうございます。」


 ハイマートを助けてもらったというのは初耳な気がする。


「マティアス様が助けてほしいとおっしゃったので、アイリーテも怪我がなかっただけに、考慮させていただいたまでです。」


 お父様、卒のない臣下としての返答と笑顔を返した。しかし、私に顔を向けたお父様は、ちょっとタガの外れた親バカ状態に入る。


「状況は聞いたかい?とりあえず、怪我が無くて何よりだった。アイリーテ。私としてはアイリーテに害なす者、その管理を怠った者は全て即処分したいところなんだが、宮仕えの悲しさから何もできなかったよ。許しておくれ。」

「お父様、隣にその『管理を怠った者』がいるのですが、それ言っちゃっていいんですの?」


 王族相手に目の前で当てこするような嫌みとは、相当怒っているとみたがいいのだろうか?


「いいさ、私に道理を曲げてまで無用な寛容を求めたんだ、軽口くらいで怒ったりはなさらないさ。」


 マティアス様はハイマートを助けることはいいことだと、そこまでは思っていたのだろう。確かにルチアのことと言い、彼は感情で動き過ぎていて、結果をあまり考えていないと思う。


「ハイマートは・・・・子供がまだ二歳で、奥方もまた次の子がお腹にいるのです・・・・。」


 感情の全てが悪い訳ではない、その気持ちは共感できる部分もある。多分、私も自分の身内であれば同様に庇ったらだろう。


「マティアス様、私も人の親なのです。子供を亡くすことになるかもしれなかった。親を失えば子はつらい、しかしその逆も然りです。また、今回は両家痛み分けで利害が一致したから穏便に済ませましたが。王になるのであれば私情は禁物です。貴方は私に大きな借りを作ったのです。」


 だが、お父様は私のために怒っているのだ・・・・。


「貴方に甘いことを言って取り入ろうとする人なんて沢山いる、都合のいい嘘をつく人もね。法に沿うか、国としての利害で動くかのどちらかでなければ、甘いだけの人間は利用され捨てられるだけです。感情論を実現したいなら、それをどう国の利益に結びつけるかを方策を考える頭をお持ちください。ただ優しい(・・・・・)だけの王は国に害になります。」


 マティアス様は素直にお父様に頭を下げた、どこか苦い酒を飲むように言われた言葉を噛み締めながら。


「公爵、ご忠告肝に命じます。」


 ラス様が話の方向を変えてくれた。


「公爵閣下、とりあえず食事をした後、姫様と例の壺を見に行きたいのですが。」

「そうだったな。壺はまだ未だに動いているらしいし、うちの治療師も腕が悪いわけではないが、確認すらできなかったらしいので、アイリーテがいた方がいいだろう。怪しの者も娘のことは避けるらしい。」

「アイリーテ姫様は相手に避けられるだけでなく、光の技で怪しの者を封じたと聞きます。さすが、リリアーヌ様の血を引かれているだけある。お力を見せて頂けるのが楽しみです。」


 黒い影に避けて欲しいが、怪しの者に避けられると言われるとなんだか、危険物のようで複雑な乙女心。しかし、誉められて悪い気はしない。


「ほーっほっほっほっ、あんなことたいしたことはありませんわー!」


 自分でも天狗の鼻高々になる。話が変わってホッとしたのか、そんな私をマティアス様は褒め称える。


「アイリーテ嬢には本当に助けられました。本当にすごい令嬢ですね。腕力で勝る大人を一撃で沈めるあの強さはすごい!深窓の公爵令嬢とはとても思えませんでした。」


 褒めて・・・・くれたのよね?


「うちのアイリーテに惚れても簡単にやらないぞ!」

「お父様!」


 お父様その方向性の発想は要りません!強いから惚れたら、それはそれで趣味が変ですから!


「公爵ご安心を、それはありませんから。」


マティアス様は素で返し、微笑んで地雷畑を歩き出した。


「アイリーテ嬢は美人ではありますが。私は楚々として大人しく、守りたくなるような可憐で可愛い女性が好きなので、アイリーテ嬢は対象外です。だから、ご安心下さい。」

「ほー、マティアス様はうちの娘が可憐で可愛くないと?」

「いや、アイリーテ嬢は美人でとてもお強いですし、私には心に決めた可憐で儚げなルチア嬢が」


もじもじするマティアス様に、お父様は不機嫌そうに、馬鹿にしたように言い捨てる。


「マティアス様の目は可哀想なくらい曇っているようですな。」


ちなみに、根本的な問題でルチアは可憐で可愛いが、魔法がすごく使えて超強い少年(・・)である。


「ハイマート殿の処遇も考え直さねばならないな。元々何かに操られていたとはいえ、王族であるマティアス様、そしてうちの娘を襲った訳ですし。事情だけ聞いたら、速攻死罪にしましょう、死罪。」

「お父様、それは・・・・。」


 大人げない、と私が言葉を挟もうとすると、マティアス様が必死に叫ぶ。


「申し訳ありません!公爵、私が間違っていました。」


 お父様は得意気に謝罪を受け入れる。


「分かればいい。で、うちの娘は世界一美人で可愛いんだが?」

「・・・・・はい。」

「素直だがちょっと足りないな。ハイマートの命を救うには貴方には覚悟が足りない。」

「では、私はどうしたら?」

「そうですね、ならばハイマートの命を救うことで、貴方は私に大きな借りができる。その借りを一つの約束でチャラにしてあげましょう。なぁに貴方が一人で決断できる簡単なことです。」

「アイリーテ嬢を妻にとかだと、父上やお祖父様、陛下の許可が・・・。」

「アイリーテは嫁にやらん!」

「それなら、良かったです。」

「アイリーテは貴方にやる気はないが、その態度が気に入らない!」

「申し訳ない。」

「さっき、言った借りを、これから行動で示して、返して貰いましょう。臣下に下手に借りはない方が、陛下や王太子殿下も安心されるはずです。」

「どのような事をすればいいのでしょうか?」

「これから、マティアス様貴方がアイリーテについて感想を求められたら『世界一美人で可愛い』と必ずつけて言うことです。」

「え?そんな罰ゲームを?」

「罰?そうですか、ハイマートの命は要らないと。」

「いえ、是非これからは言わせていただきます。だから、ハイマートのことは・・・・」

「分かってくれれば宜しい。」

「お父様、マティアス様・・・・・それ聞かされる私にとって、一番の罰ゲームな気がします・・・。」

「アイリーテは美人で可愛いさ、照れなくていいぞ。」


 私の心底の拒否を照れと流したお父様は満足そうだ。そして苦しそうなマティアス様から、どうしてか心底哀れんだような目で見られた。


「これからハイマートは貴方の騎士から、公爵家預りの者となります。彼の家族も私が庇護しましょう。だから夢々お約束をお忘れなく。」


 約束を破れば(・・・・・・)どうなるか?と含みを持たせたお父様。ハイマートの家族共々人質の身の安全は保証しないと言われたようなものだ。


「では口約束は信用できませんから、練習をしましょうか?「アイリーテ嬢は世界一美しく可愛い!」」

「アイリーテ嬢はせ、世界一、うう・・・美しく可愛い・・・?」

「最後が疑問形になっている。マティアス様、スムーズに言えるようになりましょう。はい、もう一度。」


 お父様は私のために・・・・うれ・・・・しくないよね。うん、私その愛は要らなかったよ。そんな練習聞かされる方が恥ずかしいし、強制して賛辞を言わせるなんて情けないだけだし。


 ラス様は目の前の騒ぎは無かったように、黙々とパンのお代わりをされている。私もそれに習い、黙々と食べ続ける。彼が居なければ私は席を立ち、自室に帰っていただろう。


 とはいえ、ハイマートの命がかかっている約束。それから、マティアス様は少しの間様々な場で、私についてコメントを求められた時には顔を歪めて頑張ることになる。約束どおり「アイリーテ嬢は世界一美しく可愛い」と、必ず枕言葉につけて話し続けたのだ、棒読み方だが。


 この後私はマティアス様に強制された、罰ゲーム的枕言葉を止めさせるために苦労することになる。


 そして、お父様の嫌がる私とマティアス様熱愛説と、私とマティアス様婚約説が、さらに信憑性を帯びて語られるようになるのだった。

次は明日か明後日か、できるだけ早く更新できるようにしますm(__)m


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