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揺れる影

すごく地道だけど嬉しいことに

ネット小説大賞 (なろうコン)様の感想がいただけたようです!

読んでいただけたんだなぁと思ったらジーンと来てしまいました。

が、がんばらねば!


また、ブックマークや評価ありがとうございます!

励みになります!

「みつかっちゃったぁ?」


 間延びするいつもより高い声に、私は反射的に太腿に巻いたサックから、ナイフを抜きそのまま腕を振る。


 キンッ


 投げたナイフは簡単にはじかれる。さっきのゴロツキ相手では脅しに一本使っただけで、あとは身体強化でパワーを上げた蹴りや手刀で沈めたが。さすが、ぐねぐね動きは変だが、さすが騎士なのか動きが違う。


「ずっとずっとみえなかったのに、くっきりみえるわぁ。へんなひかりにはんのうしてよばれちゃったけど、でもなんだかちからがはいらないのよねえ。」


 首が力無く傾いたまま笑っている。話し方もねっとりとした話し方でカマっぽく、普段のハイマートとは全く違う。気持ち悪い。


「ハイマートなのに、話し方気持ち悪くて笑えないわよ!」


 ストレートに気持ちを伝え、すぐ次の攻撃に移る、ここらでためらわないのは、フィリスのスパルタ教育を二年受けた成果だ。袖口に隠してあったナイフを、腕を振る動作と同時に投げた。


キンキンッ、ビュッ、キンッ


 ハイマートの全身がユラユラしながら、剣をふるう。私の投げた渾身のナイフが弾かれる。体勢は変なのに膂力や反応は無茶苦茶いい。


 右袖は意表をつくため、二本一度に出るようにしてあった。ナサニエルに師事した時に見せてもらい、忍者のようで面白くてものすごく練習したものだ。スムーズに出るよう練習し、袖口の中に入れるサックもかなり工夫した。さらに、三本目は左に隠してタイミングをずらしたものだ。


 全く自分の学んだことが通じない。今のは確実に腕に刺すつもりで投げたつもりだった。私はさらに後ろに飛んで、距離をとった。


 投げナイフにこだわるのは、好きだからだけではない。


 いくら鍛えても、壮年の職業騎士と八歳の令嬢では腕や足のリーチの差が大きすぎる。さらに元の騎士ハイマートはかなり強い。だから、投げナイフで隙でも誘発しないと、下手に間合いに入れないのだ。また骨格の太さも違うので、肉弾戦は危険が伴う。ガチムチの筋肉鎧の持ち主と、ヒョロガリが同じレベルの身体強化を使えば、元の肉体の強度差のせいで、蹴った足が折れることもあるのだ。


 まぁ、何よりハイマートの体にまとわりつく、グネグネした影に触りたくないのよ・・・。


 そうなると一番いいのは逃げることだ。しかし、ハイマートの影に触れたくないせいて、逃げるより前にどんどん奥に追い詰められる。影は建物の屋根近くまで壁をつたって伸びていて、上方も塞がれているように感じる。


「ずうっと、さがしてたのよぅ。いままでいるはずなのにみえなかったのは、はずかしかったのかしら。やだわ、ほんとこのひかりまぶしくてうごきにくいわ。」


 ずっと探してた?今日突然の話じゃなくて?ハイマートなら二年前から知っているし、この一週間は毎日顔を合わしていたはず、ついでにさっきまで一緒だったのにと私は混乱する。


 ハイマートの目は開いているけれども、虚ろなそこにいつもの優しい意思の光はない。体は力まかせにブンブン腕や剣をふるう。まるでゴーレムのように、細かい作業はできない感じ。彼から発するような影はユラユラグネグネ何もないところを這い回り、影が手から投げた魔法?で屋根の上の灯りが消された。


 途端、ユラユラグネグネは見えなくなった。異界感は消え見た目は壮年の騎士が、侍女姿の子供を襲っているだけの構図になる。ハイマートの首は持ち上がり、動きは普段より鈍いながらも、幾分シャープになり避けにくくなった。


『聖属性があるから、極々弱い魔物とかは避けるかもしれない。あと、聖なる力の前では動物も大人しくなったり殺傷を避けたりするから、野良犬とか蚊も避けてくれるかもしれないな。』


 そう、昔ライノールが言ったように、私の灯りには確かに蚊が寄って来なくなった。弱い魔物に効果は確認したことはないが、同様に効果はあるのだろう。なら、逆を返すと、私や大抵の人にはただの灯りにしか見えないが、野生の生き物や弱い魔物には違うものに感じるのだ。

 つまり、裏を返すと強い魔物のような存在にも、私の灯りは忌避すべきものと認識される。同時に避ける以外の反応もあるということだ。


 一緒にハイマートと行動していたさっきまでと違う条件は、私が生み出した『灯り』の魔法。そして、何かを誘発させたのかもしれない灯りが消えても、ハイマートは正気に返らない。


 ならば、うつ手は一つ。


「誰か知らないけど、お返しよ!」


 大きな灯りを両の手の中に生み、ハイマートの顔にめがけて時間差で飛ばす。動きが鈍り、その灯りを排除するのに剣や腕をふりまわす。ぶつかるのは嫌ならしい。

 その灯りが潰される間に集中して作業をする。それを潰したハイマートが吠えた。私は内職で育てた腕前で、路地に細かい小さな灯りを、大量に蛍のようにバラまいていたからだ。簡単に消せないように、さらに追加で生み出し続ける。これは夜会で蛍の夜みたいなのを演出する技として、大枚を稼ぐつもりで練習していたものだ。ちなみに花火みたいなのも練習中だ。


 光の粒たちは路地の空間だけでなく、屋根の高さを越え、ふわふわと大量に光る。


「いまいましい、いまいましい、いまいましい、いまいましい」


 全方向からの灯りに影が、グネグネ足元から放射状に広がる。ハイマートが甲高い声で発狂したように叫ぶ。灯りの光でグネグネしているのは、苦しんでいるのかもしれない。

 こんな状態のハイマートを通りに出すわけにはいかない、このまま暴れたら大惨事になる。もうすぐ、ユーリや公爵家の騎士が来てくれるはず。

 だが、余程苦しかったのだろう、私に向けて剣が激しく無軌道に振り回される。壁際に追い込まれ大きな男が振りかぶる長剣を、身につけていた小さな短剣で受けるしかなくなった。身体強化をかけても、押しきられそうな勢いだ。

 切られる、そう覚悟し、短剣は構えたものの目をつぶりそうになる。細い視界に影が映り視界を塞ぐ。


 私とハイマートの間に、屋根から人が落ちてきて、金属音をたてて剣を受け止めたのだ。


「ユーリ?」


 目を見開いて見えたのは髪は流れる銀ではなく、暗い色の短髪で私たちより少し大きな体格の少年の背中。


「えっ?ナサニエル師匠?どうして?」

「護衛ナサニエル、我が主人の命により推参!」


 しっかりした造りの子供用長剣で、ナサニエルはハイマートの長剣を受け止めていた。

なんか緊張して、かなり見直ししてしまいました(^^;

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