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バーシュタイン公爵の焼きもち(第三者視点)

ブックマークありがとうございます!

ドキドキしながら公開したので、すごいモチベーション上がります!

ありがとうございます(^^)


今日も三本更新予定です!

  別室に来たサリアス=バーシュタイン公爵。自分でも娘に弱いと自認する父親サリアスは、ついさっきまで追放しようとしていた娘の乳母フィリスに愚痴る。


「なんだか、アイリーテはまだ六歳なのに、本当に魔王の国まで行って、押し掛けプロポーズしてしまいそうな勢いなんだが。まぁ、まだ子供だから受け入れられるとも思えないが。」


 ちなみに、六歳児のプロポーズを受け入れる魔王がいたら、別の意味でも大問題である。


「フィリス、貴女には長く乳母として、アイリーテの護衛と養育をお願いしてきたが、公爵令嬢としては間違った方向に育ってしまったようだ。そして・・・・本当に何も言ってないんだね?」

「私が一緒にやったのは、息抜きの高笑いだけよ。アイリーテは大人しくていい子すぎて、色々押さえてるものがあるのでしょう。お母様がいない分だけ、ね。だから、思いっきり大声を出して笑うのも大事」


 公爵と二人っきりのフィリスは、主従というより友達のノリ、自然とため口になっている。そして、公爵はフィリスのその態度を許していた。フィリスを追放するの台詞があったにも関わらず、その関係にわだかまりのようなものはない。長い時を共にした戦友のような信頼関係。


「そこから完全に違うじゃないか。どうしてもっと可愛い笑いを教えなかったんだ!!可憐な乙女のアイリーテが、変な高笑い女王様になっちゃったじゃないか!」

「私に可憐な言動が出来ないのに、さらに人に教えるなんてできると思う?」


 フィリスの正論に公爵は頭を抱えてしくしく泣いた。亡くなった妻によく似た娘、暗殺者に殺された妻リリアーヌの二の舞にならないように、ほとんど外にも出さず大切に育ててきたつもりだ。


「フィリスが居なくなったら、アイリーテは本当に飛び出したりするかな?子供だし、出ないように気をつければ大丈夫じゃないかな?」

「なんだか、アイリーテは賢いのか、子供らしくないからね。計画立てて、警備の穴とか探して、上手に外に出たりしそうな気がする。」


 まさか、そんなとサリアスが呻く、フィリスは心配そうに続けた。


「ただ、身体能力はただの六歳の子供だから、外に出て無事って意味じゃないのよね。武器も魔法も使えないしね。」

「それって死ぬために出るようなものじゃないか。」


 公爵の妻、アイリーテの母リリアーヌはきつめの顔はしていたが、内面は本当に可憐で優しかった。冗談ではたまに高笑いを会話に織り交ぜたりもしたが。意地悪い雰囲気でリリアーヌが高笑う姿なんて見たことがない。娘が見た目はキツくても、公平で優しい彼女のようになることが、公爵の夢だったのだ。


 だが、それは娘の無事と安全があってのことだ。


「あー、止めだ止めだ。解雇は止めだ!フィリスはもう少し契約続行!」

「あら?サリアス。別に良かったんだけど、私もそろそろ行くところがあったし。」

「君はともかく、六歳のユーリウスにはまだ旅は早いよ。目的地までは楽な旅じゃないしね。一応安全安心な仕事先も紹介するはずだったさ。だけど、アイリーテがあまりにフィリス、フィリス。高笑いもそうだけど、フィリスが言うことが絶対一番で、お父様の言うことなんて聞いてくれないからさ。」


 どうせ、心の狭い男の焼きもちさ、と公爵の本音が自嘲的な響きに込められている。


「契約続行の条件は今まで通り、アイリーテを守ること。そして、さらに追加するのはアイリーテに身を守る術を教えること。報酬は増額するし、魔法系の師が必要なら別に家庭教師を雇ってもいい。」

「いいの?サリアス。私が護身術なんて教えたら、か弱いお嬢様からまた遠ざかって行くけど。」

「ぐはっ」


 あらためて、ショックを受けた公爵サリアスは額に皺を寄せ、苦い笑いをして答える。


「それは嫌なんだけど、アイリーテが傷つくのも、アイリーテが泣くのも、令嬢としてのか弱さを求めた結果、簡単に殺されるのも見たくはないんだよね。でも、高笑い女王様は今はかわいくとも、将来的に縁談に差し支えるというか、特殊嗜好の人がひっかかりそうというか。うーん。」

「強くなりすぎても縁談に差し支えると思うけど」


 フィリスのつぶやきをスルーしつつ、サリアスは真剣な顔で腕を組んでしばらく考える。フィリスはそんなサリアスを静かに見守った。パッとサリアスの顔が明るく輝いた。


「そうだ!フィリスの残留に一つ条件を出すことにしよう。捨て身のアイリーテなら、できるかもしれない。そうすることで必然的に立派な淑女になるはずだ。」


 とりあえず、サリアスはフィリスに護身術の家庭教師をさせる話は、条件のイベントが終わるまでの口止めをした。クリアしなければ乳母には会えないと思わせ、アイリーテに本気で条件クリアを目指させるためだ。


 あー、でもまだ、娘のそういう話は考えたくもないし、想定するだけでも腹がたつ!公爵サリアスはジレンマに悶えつつ、ため息をついた。

読んでいただきありがとうございました!


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