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公爵令嬢は試したい

予想外に早い、1ヶ月で累計2万PVありがとうございました!

ユニークも累計3600を越えました。

人気の方々の数とは比べものになりませんが、のんびりペースの話に、

これだけ沢山読みに来ていただけたのは、本当に嬉しい限りです。

ありがとうございました!


 劇場では護衛の先導で、ルチアが続いて、さらにその後を控えるように侍従と侍女の姿をした私とマティアス様が続く。ボックス席への扉は、走って前に出た侍従姿のマティアス様が開いた。私はルチアのショールとか、何かあった時に髪や化粧を整える鞄を持っている。


 今日の護衛であるハイマート、ニックス、ギロウデルは困った顔をしつつ、私とマティアス様そしてルチアを守るよう動いていた。


 私が今の人生で初めて見る劇は、使用人の席のためルチアの少し後ろからになった。そのため、幾分見にくかったが、歌ったり踊ったり、男女がくっついたり離れたりする恋愛ものは、キラキラしていて意外と面白かった。まぁ、今朝マティアス様をからかう方が、もっと面白かったが。


 私の隣からマティアス様が囁いた。


「アイリーテ嬢、面白いか?」

「ええ、面白いですわ。」


 マティアス様に使用人の格好をさせて、不満顔で侍従の仕事をさせるのは胸がすっとした。


「そうか。」


 マティアス様は何故か少し嬉しそうに笑い、舞台に目を戻した。何か喜ぶような話をしただろうか?

 その疑問を持ったその瞬間、全身が跳ね上がるような感覚。前方よりゾクッとするような気配が押し寄せた。だが、前にいるのはルチア(ユーリ)一人だ。だが、その向こうにはバルコニー越しに客席が広がっている。


「アイリーテ様、どうかされました?」


 立上がりかけた私の方を肩越しに振り返り、ルチアが問いかける。マティアス様も不思議そうに見ている。怖い気配は雲散霧消していた。


「いえ、何でもないです。」


 私は椅子に座り直した。

 今のは殺気?護身術の授業で危機の察知を早めにするために、フィリスに何回も殺気をぶつけられたことがある。攻撃が来るのに、気づけないと簡単に殺されてしまうからだ。


 ユーリも気づいたから振り返ったのだろうか?

 

 劇の終わりは早めに退出を促した。人に会わないことを意識して動いたので、結果誰にもマティアス様と気づかれずに劇場を出ることができた。


 しかしそのせいで、客席からバルコニー席が見えていたのだろう。劇後のロビーでは、VIP席にいた妖精のような美少女は誰だったのか?という話や、その少女を探す貴族たちもいて、物議を醸したというのは私たちの知らない話であった。







 王家のお忍び用馬車の中に、私たち三人が乗り、馬車の外の席前と後ろに目立たない服装の騎士が三人乗って警護していた。馬車の中では私とルチアが隣り合い、マティアス様は向かい側に座っている。


 私はルチア(ユーリ)の耳に囁いた。


「ねえ、ユ・・・いえ・・・ルチア、さっき劇場で何か気づいた?」

「何をですか?アイリーテ様」


 ルチアはおっとりと不思議そうな顔をする。私は少し考えた、さっきは護衛の騎士たち三人はバルコニー席の扉の外で、見張りをしていた。気づいたのは私だけだったのだ。私は意を決した。


「馬車を止めてください。」


 公爵家から程近いところで、私は馬車を止めた。そして、私はできるだけ優しげな笑みを浮かべて、向かい側に座っているマティアス様に話しかけた。マティアス様がビクッと怯えたような顔になったのは気のせいだろう。


「マティアス様、ちょっと私お使いに行ってきて宜しいでしょうか?買いたいものがあるのです。」

「アイリーテ嬢、いきなり何を?というか、何を企んでいるのだ、これを着せた時と同じで笑顔が怖いぞ!一人でか?」

「ほほほ。乙女の笑顔が怖いなんて、間違って本音を言う人はモテませんわよ。ここはあと少し歩けば公爵家があるのですが、露店商も多く、美味しいお菓子屋さんもある通りですの。私の今のこの服装なら目立たず歩けますから、私一人でも大丈夫です。」

「笑い声も怖い・・・・」

「この王孫、失礼で面倒だから、もう降りますわ。」

「待て待て、一人はダメだろう?!」

「私それなりに腕も立ちますし、この街は初めてではありませんの。」

「リーチェ様!危ないから駄目です、私も行きます!」


マティアス様が焦る。ルチア(ユーリ)の素が出て、いつもの呼び方になっている。


「ルチアは無理でしょ?そのお金持ちの貴族の令嬢ですって言ってるような、ビラビラキラキラのドレスで町を歩くのは。襲ってください、さらってください、って言っているようなものよ。マティアス様はちょっと私責任持てませんし。」

「アイリーテ様、一人で歩くのは許可できません。」


ルチア(ユーリ)が珍しく怒っている。確かに私は一人では外は歩いたことはない、ちょっと冒険を考えても、必ずユーリに見つかるからだ。そういう意味でドレス姿のユーリは、初めて置いていける好機だと思っている。


「私は貴女の許可はいらないのよ、ルチア。」


私はルチアに勝ち誇ったように笑う。


「待て待て、私も一人で歩くのは許可できないぞ。私は腐っても王族だ、アイリーテ嬢を止めるくらいの権限はある。」

「ちっ」

「本気で舌打ちをするな。あくまで一人でだ。ここでルチア嬢と馬車は公爵家に行かせる、さらに護衛が必要かもだから知らせる意味も込めてな。御者も護衛できる腕はあるし、公爵家にはすぐに着く。だから、私と護衛三人はアイリーテ嬢と街を歩くのだ。どうだ?」


ドヤ顔でキラキラしているマティアス様、なんだかとても楽しそうだ。


「マティアス様、もしかして街を歩くの初めてですか?そして、私を口実に歩きたい?」

「・・・・何故分かる?買ってすぐ食べないといけない、露店の果物とクリームを挟んだ焼菓子が目当てとかじゃないからな!?」


 昔そんな話しましたね。語るに落ちてますよ、マティアス様。まぁ、最後はそれを買ってお土産にしようとは思っていたのだ、すぐ公爵家に持っていけばギリギリ食べられるだろうから。

 それは公爵家に近い辺り、壁に張り付くような構造の、小さな露店で売っているお菓子だ。この世界では冷蔵庫が無く果物から水が出たり、クリームが溶けてベタベタになるため、マティアス様に出したことがなかったのだ。氷魔法で冷やし保存する、と挟んでいる焼き菓子とクリームが固くなりやはり美味しくない。頼めば家の厨房で再現できるかもなのだが、街で即食べるのが美味しいのであえてお忍びで出た時にだけ食べている代物だった。

 まぁ、手は二本、即食べるための薄紙に挟んでくれるだけで数持てないので、手があった方がいいのかもしれない。

 

「ほーっほっほっほっ、仕方ないから、マティアス様も連れて行って差し上げてよ!」

「仕方なくついて行ってやるのは私の方だろうが、アイリーテ嬢は相変わらず変過ぎるな。」

「アイリーテ様、もう、止めても無駄なんでしょうね。とりあえず、無茶しないでください。御者さん公爵家まで全力疾走でお願いいたします!」


 いつもかぼそい声しか出さないルチアが、決然とした態度で馬車を出させる。公爵家から歩いてくれば15分程度の場所なので、沢山いる人を避けながら、早ければ5分徐行運転でも10分もすれば馬車なら着くはずだ。


 公爵家から馬に乗った迎えが急いで出るだろうから、少しだけの自由時間となる。


「では、参りましょうか、マティアス様。護衛の方々からはぐれないようにしてくださいね。」


 さて、どうなるかしら?私は笑った。私はフィリスのトレーニングを受けて約二年、その成果を見せる時がやってきたのだ。最近は実践に近い、戦闘訓練を受けていると思う、屋敷の警備騎士とかにはほぼ勝てる。

 そんな私は自分の力を過信して、気づかぬうちに調子に乗っていたのかもしれない。いや、確実に乗っていたと、後で知ることになる。

お読み頂きありがとうございました!

ブックマークも励みになっております。


明日24日(月)は予定通りお休みさせていただきます。

頑張って書かねば(^^;


また、25日(火)に遊びに来ていただけると嬉しいです。

引き続きよろしくお願いいたしますm(._.)m

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