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お父様は心配症

今日三本目です。見に来ていただきありがとうございます!

 そんなことをやっていたある日。私溺愛のお父様が青天の霹靂的についにキレた。


「フィリス、お前を公爵家から追放する!」


 乳母フィリスに対する、突然のお父様からの追放宣言。どこかの悪役令嬢ものでは、定番の追放の台詞に、私は異議を唱えた。


「え?お父様間違えてません?私を追放するの間違いでは?」


 だって、断罪され追放されるのは、身分が高く高慢な悪役令嬢の役目のはずだ。


「アイリーテ、お前は私の可愛い娘なんだ。どうしてお前追放すると言う考えになるのか、理解に苦しむ。」


お父様が深い深いため息をつく。


「突然びっくりだけど、公爵閣下理由は何だい?」


公爵家の乳母とも思えない粗雑な口調で、雇い主たるお父様に話しかけるフィリス。ちなみに、フィリスの外見は銀髪に紫の瞳と、線の細い儚げな容姿なのに、心技体共に男らしく強い女性なので、口調が女性らしくないのも怒っているわけではなくデフォである。


「お父様、フィリスに追放されるような何の罪があると?」


そして、私も我慢しきれずにお父様に理由を聞く。


「それは、アイリーテに悪影響を与えた罪だ。最近アイリーテが自分に自信を無くしたりしているのは気になっていた。さらに、変な高笑いをするようになっただろう?そんな中フィリスがアイリーテに笑い方を指導しているのを、見ていた者がいたのだ。」

「まぁ、隠してませんでしたしね。皆見てるでしょうねえ。」


 フィリスは余裕綽綽で笑う、追放なんて気にしていないのだろう。


 さらに、続けて語るお父様の言葉に、私は公爵令嬢に高笑いは仕様だと思っていたが、お父様たるサリアス=バーシュタイン公爵はすごく問題視していたのがわかった。


 特に後ろ向きな考え方は、誰かに何か言われたのでは、陰でいじめられているのではと、危惧して犯人探しをしていたらしい。跡継ぎたる兄には厳しいが、娘に対しては甘い甘い親バカな部類のお父様。彼主導で私が知らないうちに、使用人を中心に聞き取りの名をした尋問が繰り広げられていたのだ、私の知らない間に。


 その結果、私の乳母のフィリスが、追放という結論になったようだ。


 ある意味二人でした高笑いの練習をその後何度も目撃されたので、その点では影響を与えた犯人である事は間違いない。黙っていれば銀髪で紫の瞳の超美人なのに、しゃべればかっこいいけど女性としては残念、剣を持たせれば無敵の乳母。

 だが、生まれてすぐ母を失った私には、フィリスは母も同然の人だった。厳しく叱ることはあるが、いつも可愛い可愛いと大絶賛だったし、沢山抱き締めてくれた。いじけたりしても一番フォローしてくれたのはフィリスだ。馬鹿な高笑いにも笑ってつきあってくれた。仕事だから当たり前とはいえ、常に自分の息子であるユーリウスより優先もしてきてくれたのは、大人の視点の入った今ならよくわかる。


 乳兄弟のユーリウス。母親ゆずりの銀髪でサラサラのストレートに紫の瞳、半年だけ年上の可憐で気弱で一人で寝られない乳兄弟。私に付き添うフィリスを探して、毎夜「怖いよぅ」と半泣きで私の寝室にやってくる。寝付くまで二人枕を並べて眠るのが習慣になっていた。大事な兄弟のような存在。


 フィリスか仕事を失うことは、私を大事な二人が路頭に迷い会えなくなるということ。シングルマザーのフィリスが無理して働いた結果、ユーリウスは暗い家で泣きながら母の帰りを待っている姿が、容易に想像できた。


「仕事を失うと食べて行くのは、本当に大変なのよ!」


お父様に抗議したが、私が六歳だから全然聞いてもらえない。


「お前は心配しなくていいんだよ、大人だからなんとかなるから。」

「お父様たちは大貴族だから、仕事を無くして生活に困ったことがないから、そんなこと言えるのよ!仕事を突然切られて、来月からの家賃や生活費に怯えながら、就職活動をする気持ちなんてわからないでしょう!」


前世私がどれだけ苦労したか!さらに、シングルマザーなんて言えば、さらに苦労があることは、同僚の話からもよく知っていた。ましてや、フィリスには実家の助けもない。しかし、


「六歳の公爵令嬢のお前にもわからないと思うが」


私の必死の訴えは、お父様に真顔で返され、言葉に詰まる私。そういえば、私は六歳の公爵令嬢でした。


「いえ、私には本で読んだ知識があるようなないような。とりあえず、仕事を無くすのは大変なんです!」


 参考は前世の失職経験なんて言ったら、返って医師か魔術師が呼ばれかねないから言えなかったが、必死に訴える。


「アイリーテ様、ありがとうございます。私は手に職もございますから、ご心配されなくても大丈夫です。」

「嫌よ、私が嫌なのよ。お父様のバカのせいで、フィリスやユーリが居なくなるなんて。」

「お父様のバカって・・・・アイリーテ前から聞きたかったんだが、私とフィリスとどっちを大事に思ってるんだ?」

「今そういう問題じゃないでしょ。元凶のお父様は今ややこしいからだまってて。」


 売り言葉に買い言葉で「フィリスに決まってるでしょ」と、言っても良かった。しかし、お父様は私が大好きで、そんなことを言ったらめり込みすぎて、さらにややこしい事態になりそうなので、とりあえず黙らせる。


「ややこしい・・・・」


 娘にややこしいと言われたお父様は、それでもやっぱり落ち込んだのか一人ぶつぶつ言いながら落ち込んでいる。


 自分を取り巻く騒ぎも他人事のように、にこやかに聞いているフィリス。彼女はしぶとそうだからどこでも生きていけるのは私にも分かる。だが、下手な美少女より可憐なユーリウスは違う。気弱な超天使な美少年が、一人で留守番してた結果変な人に襲われたり、さらわれたらどうするんだ!自分の高笑いや後ろ向き加減でそんなことになったら、罪悪感で死んでしまう。


 ちなみに、前世の私は線の細い儚げな美少年系の絵が好きだった。ユーリウスは天使のような麗しい容姿をしている、私の好みドンピシャなのだ。


 フィリスは優しい目と口調で、私に心配ないと諭してくる。


「可愛いアイリーテ様、私にはもう少しユーリウスが大きくなれば、職を辞して行かねばならないところがあるのです。それが少し早くなっただけのこと。」


 何かっこつけてるのよ!シングルマザーは大変なのよ!なんだか、私の言う事を聞いてくれないお父様にも、綺麗事で身をひこうとするフィリスにもブチッとくるくらい腹が立った。


「ほーっほっほっほっ、なら、フィリスは行けばいいわ。それはそれで都合が良くってよ。」


 それならそれでと私は開き直る。ぐるぐるっっと巻いた赤い髪をブンッとふり、超本気の高笑いをあげた。


 突然の豹変に戸惑うお父様とフィリス。私は言葉を続けた。


「フィリスがいないなら、止める人もいないし。私はやりたい放題やってやるわ。毎食お菓子を食べて、歯を磨かない。ベッドでもチョコレートを食べるし、いっぱい食べてブクブクに太って、虫歯だらけになってやる。どんなドレスも入らない小豚になってみせる。レディとしての礼儀作法も勉強も一切しないわ。お父様がよく言う幸せな結婚が出来ないコブタちゃんになってみせるわ!」

「アイリーテ、お父様はお前が可愛いからそんなことはさせない。使用人に命じて過度な菓子は出させないし、食事もダイエットメニューにしてもらう。また、公爵令嬢としてあるまじき、自堕落な生活を送るようなら、礼儀見習いにしばらく修道院に留学してもらおう。」


 お父様の眼が暗く光る、さすが腐っても海千山千の宮廷を渡る公爵、言葉は丁寧なのに迫力が半端ない。


 それは留学とは言わない気がするのですが、お父様!油っけも甘味もないダイエットメニューも、粗末な修道院の食事もどちらも嫌に決まってる、食べることは至上の楽しみなのに。私はここでひいてはフィリスたちを守れないと、破れかぶれに高笑った。


「ほーっほっほっほっ、お父様そんな脅しで私が屈すると思って!」


六歳にして、高笑いの手の角度は完璧に決まる。もうやぶれかぶれだ。


「修道院に閉じ込められるくらいなら、家だろうが修道院だろうが飛び出して、魔王の国にでも行って魔王の妻にでもなってきますわ!ほーっほっほっほっ」


 昔前世で読んだ小説の話を思い出しつつ、お父様を脅す。お父様の目が何か意味のある厳しい視線を、フィリスに投げ掛ける。フィリスは私は何も言っていないとばかりに、違う違うと首を横に振っている。


「わかった。アイリーテ、少し考えさせてくれ。それまでフィリスの処遇は保留で。」


何か考えるところがあったらしい、お父様は眉間に皺を寄せたまま、フィリスを連れて別の部屋に消えて行った。


明日も三回更新する予定になります。

また、見に来ていただけると、とても嬉しいです!


なんとなく気になったり、面白そうかな、応援しようかなと感じていただけたら、ブックマークや評価等していただけると、書く励みになります。

よろしくお願いいたします!

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