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逃げ出し準備は必須です

 一ヶ月はなんとか終わり、フィリスにルチア嬢を送らせという話で、約三週間の旅に出した。設定上の在住国サントカル国に行って来る羽目になったからだ。


 護衛をつけたいとしつこいマティアス様を黙らせるのに、ちゃんとフィリスが最後まで送ると明言したからだ。


 ちなみに、この事態になって最初の一週間後にお父様は、サントカル国の商店プラス両隣&向かいを居抜きで買い取るために人を送った。即席でずっと住んでいる設定で、フィリスの従姉妹家族とご近所さんも用意したそうだ。


 貿易等を扱う商家の設定で、隣と向かいは果物屋さん、庶民的な服屋さん、肉を焼く屋台みたいなお店らしい。四軒のお店を買ったと聞いた時は、そこまでするのかお父様とちょっと驚いたが。王族を騙すのは、それだけ大きな罪なのだろう。


 ルチアとフィリスを送り出すと、マティアス様は来なくなった。私はこれでもう大丈夫と、ちょっと寂しいが肩の荷がおりた。


 フィリスとルチア嬢が出発して数日後、お父様は一週間の地方視察に出た。戻りは報告のため王城に寄ってから、お父様が帰ってきた。私はお出迎えをしたが、お父様の顔がどこか暗い。


「アイリーテ、話がある。」

「偶然ですわね、お父様私もです。」

「先に聞こうか」

「いえ、お父様から先で大丈夫です。」


なんだか、話す順番を押し付け合う親子。しばらく、譲り合って二人はあきらめた。


「なら、同時に言おうか」

「仕方無いですわね。」


私も言いたくないが、お父様も気が進まない内容らしい。いっせーのーでで、同時に二人で言い、同時に二人の手が白く四角いものを出す。


「マティアス様から手紙を預かってきた。」

「マティアス様から、ルチア嬢宛に手紙が届きました。」


 四角いものは手紙だ、王家の印章で封がされた。


 はぁぁぁ、大きな二人のため息が重なった。内容は見ないでも分かる気がしたのだろう。ルチア嬢宛ての手紙は、公爵家を介してもらうように言ってある。


「お父様。私、なんとなく家族揃って王都脱出の可能性が捨てきれないので、フィリスから護身術だけでなく、サバイバル訓練をしてもらいたいのですが、いかがでしょう?」

「六歳の公爵令嬢に必要なスキルとは思えないが、もうそれしかないかもしれないな。私からも頼んでおこう。」


 お父様は遠い目で答えた、公爵家断絶も考えているのだろう。ルチア嬢が男だとバレた時を考えて、生き残る術を身につけねば。


「ほーっほっほっほっ、わたくし何をしてでも、生き抜いてみせますわ!」

「アイリーテ、高笑いだけでなく台詞まで、悪役みたいだよ。」

「大丈夫、正義の悪役ですわ。清く正しく生き残り、お父様やお兄様を助けてみせますわ。」

「既に女装男子で、王太子ご一家を騙しているんだが」

「ユーリは清く可愛いから、何をしても正義ですの。」

「まぁ、ほんとにユーリウスは清らかな美少女もとい美少年だが。ユーリウスがほんとに見た目通りの女の子だったらなぁ。」


 お父様は神様が決めた性別なんて、どうしようもないよなと嘆息した。


「わたくしもユーリが女の子だったら、ドレスやお嫁入り道具は飛びっきりのものを用意して送り出してあげるんですけどね。私そうなったら、侍女としてついていきますわ!」

「公爵令嬢が侍女って無茶な話だけど、アイリーテは本当にユーリには過保護だなぁ。」


 お父様はいつものことと、生暖かく私のユーリ溺愛言動を見守っている。


「だって、あんなに美人で気弱だといじめられそうですから、私が守ってあげなければいけないと思いますの。」


 ユーリが王子様に嫁ぐことになれば公爵家に養子にして出せばいい。でも、それなら本当に心配だから、私は侍女としてついて行ってもいいかもしれない。そうすれば、一生そばにいてやれる。


 でも、ユーリは男の子なんだよねえ。


 子離れできない母親のようなことを私は夢想し、現実の壁にやっぱりため息をつくのだった。


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