悪役令嬢は高笑いが仕様です
はじめましての皆様
見に来ていただきありがとうございます!
連載を始めました、よろしくお願いいたします。
今日は三回更新予定です。
この回は序章的なので、高笑うだけです。
「ほーっほっほっほっ」
私、アイリーテがこんな感じの。初めて高笑いをしたのは、五歳も半ばの頃だった。一体何を見て私は笑ったのか?
自分の顔や姿を改めて、鏡で見たからである。
「誰、この映ってる意地悪そうな子は?」
私は真剣に突っ込んだ。そこから、それが鏡であり、毎日見ていたはずの自分の姿だと気づいた。
鏡に映っていたのは、真っ赤な髪が縦ロールで顔の横でグリングリンと巻いた、金色の瞳の少女だった。綺麗だけどどこかトンがって見えるのは、自己主張の激しい真紅の髪色で感情が薄く見える瞳色のせいだろうか。それとも、目元がいくらかつり上がっているせいだろうか。なんだか悪役っぽい顔だ。
加えて言えば、ハイヒールで下僕を踏みつけて、高笑うのが似合いそうな顔だった、まだ五歳なのに。
ただその顔にどこかで違和感を感じる。鏡で何度も顔を見たことがあるはずなのに、まるで他人の顔のような感想になるのはそのせいだ。
自分のセルフイメージではもっと年をとっていて、黒いくせ毛の髪を無理矢理縛ってひと纏めにした。ジーンズ中心の地味な服を着た、良く言えば人が良さそう、悪くいえば地味でちょっと抜けたような、小太りした眼鏡の女性。
と、考えて私は首を傾げた。私はまだ子供の五歳で、全身は細身だし、眼鏡なんてかけたこともないはずだ。ついでに公爵令嬢だから、綺麗でヒラヒラしたドレスばかり着ている。たまに宝石もつけてもらう。服も髪も自分で着たことも、結ったこともないが地味とは対極のものしか身につけたことはない。
自分の存在が二重写しのような、夢を見ているような違和感は気持ち悪い。だが、理由もわからないので、気持ちを切り替えた。
とりあえず、そんな高いハイヒールの靴も踏んづける下僕もいないが、高笑ってみよう、ちょっと試しに。思いっきり笑って大声を出せば、この目も醒めるかもしれない。
「ほーっほっほっほっ」
大声は行儀が悪いと言われていて、思い切りが悪かったせいで声も小さいし、なんだか気弱な高笑いになった。そのせいかイメージのように、悪役っぽさが出ない。
ポーズが悪いのかもしれない。ちょっとふんぞり反ってみる。
「ほーっほっほっほっ」
見た目はマシにはなったが、発声をもう少しお腹から出してみるか。
なんだか、よくわからない高笑いの練習を試行錯誤で繰り返していたら、乳母のフィリス見つかった。フィリスは怪訝な顔をして後、少し微笑んで私に注意した。
「アイリーテ様もリリアーヌ様の娘ですわね。懐かしくなってしまいました。」
お母様が高笑い?私が生まれてすぐ亡くなったために、肖像画と父やみんなの話でしか知らないお母様は、まるで聖女のような人だった。だけど、そんな高笑いを冗談でするお母様、抱いていた聖母的イメージに少し欠けが生じる。
「お母様の娘?それはどういう意味?」
「リリアーヌ様も高笑いが妙にはまってましたから。それこそ、冗談なのに、雰囲気だけは女帝ばりに。そんなリリアーヌ様を見てきたからこそ、言えることがあります。」
「なぁに?」
「高笑いには手の位置が大事になります、ほらこう『ほーっほっほっほっ』」
フィリスは手刀を顎のあたりに当てて、背を反らした。それだけで、普段綺麗で優しい乳母がすっごく偉そうに見える。私は負けじと真似をしてポーズをとり高笑う。
「あら、本当に悪役っぽく見えるわね。ほーっほっほっほっ」
「手の角度が悪い!こうですわ!」
フィリスから熱血コーチばりに指導が入る。
「はいっ!コーチ!ほーっほっほっほっ」
「腹筋に力を入れて、声を響かせて!私こそ最強と信じて笑いなさい!」
「はいっ!ほーっほっほっほっ」
私もついつい悪のりして受け答えする、なんだか楽しくなり正当な高笑いを頑張ってしまう。
『ほーっほっほっほっ』
二人の全力の高笑いは館にこだまする。メイドからの連絡を受けた、執事が制止するまで、高笑いの練習は延々続けられることになった。
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